11 すれちがう心 2
俺は、麻子に肝心なことを何もしてやれなかった。なのに、アイツは……
真司は、家に帰ってからも、このことが頭から離れない。
麻子は鈴木が好きなんだ……
あの公園で、麻子が翔に言っていたことを思い出す。でも、何かの間違いだと思いたい。真司は、今一度、麻子の行動をふり返る。
① 「友だちよ、真司とは……」
体育の授業の時にいっていた麻子の言葉
②中間テスト以降、やたらと、江波と俺を2人っきりにしようとした妙な行動
②は、クラスの女子たちが、友だち同士お互いの恋に協力しているのと同じだ。
恋に協力するということは、その人を恋の対象にしていないということ。
それに、最後に、あの公園で、翔にいっていたあの言葉……。
どれを取ってみても、麻子は真司のことを友だちのようにしか思っていないという結論に達した。
いつもの冷静な真司なら、それが自分の勘違いだと気づけるものだが、翔と出会った時、瞬間的に何かを感じ、恋愛感情にどっぷり支配されている今の真司の心では、真実を見抜くことができなかった。
麻子は、俺を友だちとしてしか見ていない。
そう認識しようとすると、勝ち気な真司は、また、イライラするのだった。
そんな不機嫌な真っ只中にいる最中、
「真ちゃん、電話よ!」
母親の声がした。
「だれー?」
めんどくさそうに真司が2階からいうと、
「あら、そんな顔してていいの? 真ちゃんの恋人の二宮さんよ」
真司の母親の中で、麻子はいつの間にか、真司の恋人にされている。真司はそれでますます不機嫌になった。
麻子はやっとのことで、受話器を置かず、電話を通じさせることができた。
今日こそ、今までの誤解を解こう! そして、自分の本当の気持ちを伝えよう。
そう勇気を振り絞ったのだが、真司の第一声は、出鼻をくじかれるものだった。
「何だ、麻子か、何か用?」
「あの、わたしと、翔君……」
「何だよー、ごていねいに、愛の報告か……?」
この言葉に麻子は、「誤解よ」といおうとしたのだが、虫の居所が悪かった真司がまた早とちりして、ケンカ腰になった。
「何いってるのよ真司、わたしは……」
そこで、麻子は「真司が好き」といおうとするのだが、中々言葉にならず、黙ってしまった。
「そんなのわざわざ俺にいうことないだろう?……それとも何かー、『わたしにはもう翔君がいるから、今までありがとう』とでもいいたいのか……」
「酷い、そんな…わたし…わたし……真司なんか、大嫌い!」
「ああ、そうですかー、そんなことをいうために、わざわざかけてきたのか? それから、おまえ、性悪っていわれても仕方ないなー」
ガチャン!
電話が切れた。最後の言葉は本気ではなかった。売り言葉に買い言葉というやつだ。
真司は受話器を置くと、自分の部屋に上がり、窓を開け、夜風に頭を冷やした。真司は星を見つめた。
麻子のヤツ、何で電話してきたんだ? それにしても俺、またやっちゃったよ。性悪だなんて、麻子がいちばん傷つく言葉だ。なのに俺……
性悪だなんて、真司ったら、酷すぎる。真司が勝手に誤解しているだけじゃない。だけど、わたしが悪いんだ。臆病で本当の気持ちを伝えられないこの心が……どうしよう……
麻子もまた自分の部屋から、真司と同じ星空を見つめていた。
その頃、もう1人、同じ星空をながめている者がいた。はるかだった。
はるかの麻子への怒りはだんだん治まってきていた。その代わりに、麻子のやさしさばかり浮かんできた。
あんなふうに疑われたのは嫌だったけど、麻子が人を中々信じられないのも分かるような気がする。
みんなにいじめを受けて孤立させられて、あずみたちに出会うまで、わたしも人なんて信用できなかった。ああいう経験をしたら、人をすぐ疑うくせがついてしまう。わたしもそういう経験をして、分かっているはずだったのに……。
あの時、麻子は追いかけてきてくれたのに、わたし、許すことができなくって……。
それに、麻子は自分だって仁川君が好きなくせに、わたしの気持ちを知って協力しようとしてくれた。中間テストで、わたしの成績が下がったのを知って、どれだけ悩んだのか、分かっていたみたい。
麻子って、やさしい。それに、仁川君だって、本当は麻子が好きなんだ。それなのにわたしったら……
はるかは、天空に大きく散りばめられたひしゃく型の北斗七星を見つめ、ある決心をした。




