8 それぞれの想い 2
中間テストを無事に終えた少し暑いくらいの陽気の昼休み。麻子とはるかは、グラウンドの葉桜の木陰のベンチに座っていた。男子たちが、野球やサッカーをやっている様子を眺めながら、いつものように、昨日見たTVドラマの話や、最近流行っている音楽の話など、たわいもないこと話していた。
麻子が、手前のグラウンドにちらっと目をやると、今日は、真司がサッカーをしている。
いつもなら、図書室や屋上で、マンガや推理小説を読んでいるのに……どうしたんだろう?
ゴールに向かって、ボールを一生懸命ドリブルしている。真司は足が速いので、ほとんどの者が追いつけない。しかし、真司にピッタリ着いてきて、ボールを奪う隙をうかがっている者がいた。頭ひとつ分真司より背が高い。よく見ると、翔だった。
麻子は、2人が一緒に遊ぶなんてめずらしいなと思った。翔は真司に普通に話しかけるが、翔と話をする時の真司の顔は、何だかふくれっ面をしている。
真司は翔君が嫌いなのかな? あんなに心のことを分かっている真司なのにどうして……?
そういう真司を見ていると、麻子は、なぜだか頭がこんがらがってくるのだった。
真司が蹴ったボールは、ゴールの少し手前で翔に奪われる。翔が味方にパスしようとしたところを、すぐさま駆け寄ってきた真司が阻止する。ボールがラインから外にはみ出る。翔が、やるなーという表情で真司を見る。真司のふくれっ面は相変わらずだ。
どうしたの、真司……? 真司らしくない。
話がうわの空になっている麻子に気づいたはるかは、麻子の視線を辿ってみた。
仁川君!
はるかの心が大きく揺れた。
そうだ、話さなきゃ……
「麻子……」
はるかが、麻子に声をかける。はるかの声に、我に返った麻子が向き直る。
いわなきゃ……
はるかは、頭が締めつけられるような思いがした。
「麻子、……わたしね、謎の少年が誰だか分かったんだ」
「えっ?」
いきなりいわれて、麻子がきょとんとする。しかし、麻子も、はるかの心を占めている謎の少年に興味があったので、おなじみの言葉を口にした。
「誰なの?」
はるかが少しさみしそいうな笑顔を向ける。
「仁川君……」
麻子の目の前が、一瞬真っ暗になった。
「どうして……どうして、そうなるの……?」
麻子は声を振り絞って、やっとのことで、それだけいった。
はるかが、謎の少年が真司だと分かった過程を話し出す。
「分かった………」
麻子は、重い頭を傾ける。
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう……
麻子の心の中はパニック状態だ。
「でも、麻子も、仁川君が好きなんだよね?」
麻子が頭を上げる。あの気のしっかりしたはるかが今にも泣きそうだ。
「ううん、真司はわたしに同情しているだけなんだと思う。わたしと真司はただの友だちよ」
麻子は思わず出た言葉に驚いた。
わたし、自分の気持ちに嘘を吐いた。でも、でも………
はるかはそれ以上何もいわずに、真司たちの方に目を向ける。そして、しばらくしてポツンといった。
「でも、わたしたち、いい友だちでいたいね……」




