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青いガーネットの奇跡  作者: 村松希美


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2 意外な仲間 1

 翌日は朝から雨がしとしと降っていた。昨日の晴天がうそのように……。

 麻子は、港町中学校前のバス停でバスを降り、真っ青なジャンプ傘を広げた。バス停は校庭にそって校門から100mほど離れている。せっかく満開になった桜の花びらも、1枚、2枚、3枚……と雨に打たれて散っていた。それは、昨日までの幸せに満たされた気持ちの中から、何かが少しずつ消えていっている今の麻子の心境にも似ていた。


 今日は始業式で、クラス替えの日だ。


 この不安な気持ちは何なんだろう? わたしには真司がいるじゃない。誰と同じクラスになってもいいはずなのに、どうして、こんなにビクビクするんだろう?


 麻子は自分の気持ちを分析していた。


 ひとりぼっちの時は、一人でいいから誰か、心が通じる友だちが欲しかった。そんな友だちがいれば、もう不安になることはないと思っていた。そして、真司と友だちになった。それなのに、どうして……。何が怖いんだろう? そうか、わたしは女の子の友だちがいない。クラスで浮いてしまうのが、やっぱり、まだ怖いんだ。


 校門に近づくにつれ、麻子の足は震えて身体が硬くなってきた。


 校門をくぐると、校舎にたどりつく前に、チューリップとパンジーが咲いているちょっとした花壇がある前庭が広がっている。晴れの日だと、学年別にここで、クラス替えの表を掲示しているのだけど、今日は雨なので、体育館まで行かなければならなかった。


 親しい友だちが大勢いたら、運動場を越えて、体育館までわざわざ足を運ばなくても、途中で会った誰かが教えてくれるのだが……。麻子には、真司以外、そういう友だちはいない。真司はもう学校に来ているのだろうか?

 自分のクラスを確認して、教室に向かう生徒たちと何人もすれちがった。麻子は、体育館へ急いだ。


 体育館に入ると、一緒のクラスになれたのか、キャーキャー喜んで、手をつないで踊り回る女子生徒たちや何だかよく分からないけど、走り回っている男子生徒たちで、ごった返していた。全校生徒は600人近くいる。麻子は、人垣をより分け、二年生のクラス表が掲示されている南側の黒板の下に来た。


 麻子はまず、自分の名前を探した。……。「二年B組」だ。次に目を閉じて、心の中で祈った。


 神様、どうか、真司と同じクラスにしてください。


 目を開くと、真司の名前を探した。二年A組……、二年B組……。


 仁川真司、仁川真司、あった!

 同じクラスだ!


 真司も二年B組だ。


 神様、ありがとうございました。


 麻子はホッと一息ついて、自分のクラスの表をじっくりと見た。


 立花公平、同じクラスね……、井上みどり、上野さつき……、井上さんと上野さんも同じクラスか。何だか顔を合わせづらいな。


 麻子は、元々仲が良くなかった子より、親しくしていたのに途中から仲が悪くなった子と一緒になる方が、何だか辛かった。


 しかし、桜小路綾乃、西野利香という名前を見た時は、絶望的だと思った。また、ひとりぼっちになってしまう。綾乃はまた目の敵にするだろう。女の子の友だちなんて作れない。麻子は肩を落とし、その場に立ちすくんだ。


 その横で、

「はるか、わたしたち別れちゃったね。あんた、おまけに一人だよ。どうするの?」

 と、話している三人の女子生徒たちがいた。彼女たちの声が大きかったので、麻子は我に返り、その子たちの様子を伺った。みんな、肩くらいまで伸びた髪を校則に従って、二つにくくっていたが、はるかと呼ばれた女の子は、耳を出し、ショートカットにして、活発そうな感じだった。


「大丈夫よ、わたしには二宮さんがいるもん」

 はるかと呼ばれた女の子は、麻子の腕をつかんだ。

「えっ?」

 麻子はいきなり腕をつかまれて面食らった。


「あなた、二宮麻子さんでしょ? わたし、元一年B組の江波はるか。よろしくね」

「えっ、ええ、よろしく」

「ほら、あずみ、もう友だちができたでしょ」

 はるかは、麻子と腕を組んだまま、友だちに話しかけている。

「二宮さんなら安心ね、はるか」

 はるかの友だちは口々にそういった。麻子は何のことだか、さっぱり分からなかった。

「二宮さん、はるかを頼むわね」

 はるかの友だちはそういうと、体育館を出て行こうとした。

「あら、もう行っちゃうの? クラスが別れたと思ったら、わたしを置いて……冷たいわね」

「ちがうわよ。はるかの自立を手助けしているのよ。あんたは二宮さんと親交を深めるべき! わたしたちは、あんたとは違うクラスになったのだから、あてにならないでしょ」

「いいわよ。あずみたちは、行った行った~。わたしは二宮さんと仲良くするからね~、二宮さん」

 はるかは、麻子に相づちを求めた。

「ええ」

 麻子は、こんな口調で友だちと話ができるはるかが少しうらやましかった。麻子がこんなやり取りをできるのは真司だけだ。でも、とりあえず、はるかと友だちになれるような気がして、張りつめていたものが少し緩んだ。


「え~、全校生徒の諸君、すみやかに教室に入りなさい……」

 校内放送が流れた。


「行こう、わたしたちも教室に」

 はるかは麻子の手を取って、出口に向かった。



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