7 保育園にて 5
「さあ、みんな、遊ぶのやめて集まって!」
来栖先生が、園児たちを呼び集める。中々遊びをやめない子もいるけど、ほとんどの子どもたちが、真司たちの前に集まった。来栖先生が、ブロック遊びに夢中になっている男の子たちに注意して連れてくると、真司たちを紹介した。
「今日から、5日間、みんなと一緒に遊んでくれる、仁川真司先生と江波はるか先生です。分かりましたかー」
「はーい!」
ほとんどの子どもたちが元気な声で一斉に返事をしたが、体格のいいやんちゃそうな男の子が不満そうな顔をしていった。
「オレ、しってるぜ。こいつら、せんせいじゃないやーい。このにいちゃんたちは、ちゅうがくせいっていうんだぜ。だって、オレのにいちゃん、ちゅうがくせいだもん」
「ちゅうがくせい?」
みんなが一斉にその男の子の方を向く。男の子がみんなの注目を浴びて、嬉しそうにしている。
「ゴウくん、仁川君たちは、港町中学校の生徒だけど、みんなの先生よ。分かった?」
来栖先生が、ゴウの頭をクシャクシャなでる。ゴウがしぶしぶうなづく。
「じゃあ、ちゅうがくせんせいね」
誰かがおどけていう。
「なんか、こんちゅうみたい」
みんながゲラゲラ笑い出す。
こいつら、何でこんなくだらない会話で大笑いするんだ? でも、先生から、虫を連想するなんて、おもしろい。
真司は、自分の頬がいつの間にか緩んでいたことに気がつかなかった。
真司の笑顔を見たはるかは、またドキドキした。
何なの? これって、まただわ。でも、仁川君って、こんな表情するんだ。でも、この目、そうだ、麻子を見る時の目に似ている。仁川君は、いつも、麻子のことをからかってばかりだから分からないけど、目は幸せそう。こんな風に……。いけない、いけない、今日のわたし、何か変。
はるかは、今感じたものを振り払おうとした。
来栖先生の話が終わると、子どもたちは、まためいめいに遊び出した。5歳くらいになると、歌を歌ったり、英語を習ったりと、みんなで1つのことをする時間もあるが、今日は、自由遊びの日だ。ままごと遊びをしたり、絵本を読んだり、ブロックで遊んだり、格闘ごっこをしたり、テレビアニメのキャラになりきって遊んだりと、本当に様々な遊び方をしている。
「さあ、君たちも、遊んであげて」
という来栖先生の声を聞いて、
「はるかせんせい、こっち、こっち~」
と、ショートカットの女の子がはるかを呼びに来た。はるかは、ままごと遊びをしている子どもたちのグループに引っ張られた。
女の子は、小さなもみじのような手ではるかの手のひらをぎゅっと握り、お店屋さんのお姉さんになってという。はるかは、子どもに関心があまりなかったが、この時、かわいいなと思った。