7 保育園にて 1
5月に入り、庭のけやきの黄緑色の若葉が目に眩しい。ある日曜日の午後のひととき、真司はさっきまで書き続けていたホームズノートを放りだして、ベッドに寝転がった。
最近、ホームズノートを作る時、麻子を誘っていない。学校でも、麻子ははるかたちと友だちになったので、前ほど話しかけていない。麻子に友だちができて嬉しい反面、自分の役割がなくなったような気がして、真司は少しさみしかった。
それに……
「友だちよ、真司とは……」
真司の頭の中で、この言葉がまたぐるぐる回っている。この言葉を聞いてから、麻子を無理やりつき合わせているような気がして、誘うのをやめた。
麻子にとって、俺は友だちか……
真司はため息をついた。
まあ、俺の気持ちをはっきり伝えた訳じゃないし……。
また、真司がため息をつく。真司は、言葉で伝えなくても、何かが通じているような気がしていた。しかし、今となっては、自分が勘違いしていたように思える。
あいつ、好きなヤツいるのかな?……そういえば、鈴木とも仲がいいよな~。麻子のヤツ、俺にはいいたいこというけど、鈴木にはやさしい。背だって、鈴木の方がかなり高い。
「友だちよ、真司とは……」
また、この言葉が浮かんでくる。
そうか、麻子は、本当に好きなヤツには、やさしくするタイプなのかも知れない。ということは……。
真司は何だかおもしろくなかった。
そういや、明日から、保育園で、実習体験だったっけ?
シーサイドタウンの中学生たちは、社会で働く体験をするという試みがあった。図書館やスーパーマーケット、会社などに行って、大人たちが働いているように、自分たちも働いてみるのだ。
麻子と鈴木、それに江波も一緒だったな。
真司は、くじ引きで、この3人と一緒に、保育園に行くことになっているが、あまり、気乗りがしなかった。
麻子と翔と1週間ずっと一緒に過ごす。真実がはっきり見えてくるような気がして、真司は何だか嫌だった。
えーい、こんなくだらないことばかり考えるのはよそう。
真司は、自分の頭をポカポカ殴ると、また、ホームズノートを開いた。