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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第六章 初代様

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第89話 三代目領主と初代様

 高等学校の開校から、二年ほどが経過した(ころ)

 五十六歳になっていたエルクは、ちょうど三十歳になったエストに家督(かとく)(ゆず)り、正式に引退した。

 このことからエルクが先代様と呼ばれるようになり、私は初代様と呼ばれるようになった。

 私も同席していた家督(かとく)(ゆず)る場でのエルクの言葉は、以下のようなものだった。

「エスト、これからはお前が領主だ。私ももう年なので、そろそろ、のんびりと余生(よせい)を過ごしたい」

 そのエルクの本心を(ふく)んだ言葉に、真摯(しんし)にエストは応じる。

「お父様、本当に長い間、お(つか)れ様でした。今後は私が領主として、このガインの町を発展させていきたいと思います」

 そんなエストの(たの)もしい様子(ようす)を見たエルクは少し目を細め、(うれ)しそうにしながら領主としての注意点の説明を始めた。

「いいか、エスト。ふんぞり返っているだけの他の貴族たちの話は聞かなくていいが、税金を(おさ)めてくれる領民たちの話には、良く耳を(かたむ)けるようにしなさい」

 エストは大きく(うなず)き、同意を示す。

「ええ、良く分かっています。おじい様の教えは、ちゃんと私にも受け()がれています。それに、なにか(こま)った事があれば、物知りのおじい様に相談しますので、そんなに心配しなくても大丈夫(だいじょうぶ)ですよ?」

 二人の引継ぎの会話が一段落(いちだんらく)したようなので、私はここで会話に加わり、笑顔(えがお)でエルクを(ねぎら)う。

「エルク、お疲れ様でした。今後はのんびりと、隠居(いんきょ)生活を送ってください。これからは、エルクとルースと私の三人で、あちこちに遊びに行きましょう。昔のようにね」

 エルクも微笑(ほほえ)み、二人で今後の余暇(よか)の過ごし方についての相談を続ける。

「それはいいな。それじゃあ、早速(さっそく)、仲良しトリオの復活といこうじゃないか」

 それからの私たちは、宣言(せんげん)通りに、あちこちに三人で遊びに行くようになった。

 目に入った町のレストランにふらりと入ってみたり、領民と一緒に北の川で釣りを楽しんでみたり、時には三人でそろって昔のように魔物狩りを楽しんだりした。

 私の無限の寿命(じゅみょう)では、いつかはこの二人とも別れなければならないと重々(じゅうじゅう)承知(しょうち)しているのだが、それでも、今だけはこのような楽しい日々がずっと続けばいいのになと、しみじみと感じている。

 そんなある日の日常の一コマである。今日も町に出ていた私たちを見ながら、エルクは会話を始めた。

「なんだか、昔に(もど)ったみたいだよな」

 ルースもうんうんと(うなず)きながら同意する。

「私もそう思う。エルクとヒデオの三人で遊ぶの楽しいね」

 私も微笑(ほほえ)みながら、そんな親友たちの会話に加わる。

「二人とも若返(わかがえ)っているようですね。口調(くちょう)がすっかり、昔と同じになっていますよ?」

 ルースとエルクの二人は顔を見合わせ、同時に破願(はがん)した。クスクスと笑いながら、ルースとエルクは会話を続ける。

「言われてみれば、その通りだね。自由な平民に(もど)ったみたいで、私はこっちの方が好きかも」

「そうだよなぁ。お貴族様に(あこが)れてはいたけど、俺も今の方が気楽(きらく)でいいや」

 そのような楽しい日々を()らしていたある日。メイが第二子を出産した。

 今回は比較的(ひかくてき)安産(あんざん)であったのだが、それでもゴランさんは心配だったようで、私は再び、大地の神様への祝詞(のりと)(とな)え続けるはめになった。

 生まれた子供は今度も男の子で、後にリックと名付けられた。

 ゴランさん(ゆず)りの茶髪と、メイ(ゆず)りの青い(ひとみ)をした、とても元気よく泣く赤ちゃんである。

 涙もろいゴランさんは、またしても涙を流して感動していた。その様子(ようす)を、ガイン家の家族はみんな、微笑(ほほえ)みながら見ていた。

 隠居(いんきょ)したエルクは、それから、孫たちの様子(ようす)を見るために、度々(たびたび)メイの家を(おとず)れるようになっていた。

 もちろん、私も頻繁(ひんぱん)にメイの家を(たず)ねている。


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