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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第五章 ガインの町

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第83話 メイの横顔

 私の名前はメイ。メイ・ウル・ガインよ。おじい様の(おこ)した貴族家、ガイン家の娘として生まれたの。

 私は自他ともに認める、重度のブラコンとして有名になってしまっているわ。

 もちろん、それは本当の事なのだけれども、私の初恋(はつこい)の相手は別にいるの。おじい様よ。

 私は物心(ものごころ)がついたときには、もうおじい様が大好きだった。

 (やわ)らかい物腰(ものごし)で、いつも優しく微笑(ほほえ)んでいて、私が甘えに行くととても(よろこ)んでくれたわ。本当に愛されていると今でも感じているの。

 そして、何より、物知りなおじい様が私の自慢(じまん)だったの。

 私はいろんなところで吹聴(ふいちょう)して回っていたわ。私のおじい様は何でも知っているの、だから、質問してみてちょうだいってね。

 私がこう言うと、おじい様はいつも少し(こま)った顔になって、こう言っていたわね。

「さすがに、何でもは知りませんよ?」

 でも、その後に質問された内容で、おじい様が答えられなかったものがなかったのも事実なのよね。

 もちろん、私もおじい様にいろいろと質問したわ。そうすると、(おさな)かった私にも分かりやすくなるように、とてもかみ(くだ)いていつも丁寧(ていねい)に教えてくれたの。

 そんなおじい様が大好きだった私は、ある時、この(やかた)でメイドとして働いてくれている(ばあ)やのカルラに力説(りきせつ)していたの。

「私、大きくなったらおじい様のお(よめ)さんになりたいの!」

 そうすると、(ばあ)やはにっこりと笑って、思いもよらなかった事を教えてくれたの。

「あらあら。でも、お(じょう)(さま)とヒデオ様は孫と祖父の関係ではありますが、血は(つな)がっていませんからね。お(じょう)(さま)頑張(がんば)次第(しだい)では、実現するかもしれませんよ?」

 私はとても(おどろ)いたわ。そして、血が(つな)がっていないという事実は、私にとって、とても(よろこ)ばしい事に思えたの。

 それから、私はこの決意を誰かに聞いて欲しくなってしまって、ちょうど応接室(おうせつしつ)休憩(きゅうけい)していたお父様とお母様に宣言(せんげん)したの。

「私、大きくなったら、絶対におじい様のお(よめ)さんになるの!!」

 そんな私の決意(けつい)表明(ひょうめい)を聞いた両親は、なんだか(こま)ったような様子(ようす)になって顔を見合(みあ)わせていたわ。

 どうしたのだろうと首を(かし)げていると、お母様がとても悲しそうな顔になって、こう言ったの。

「やっぱり、あなたも私の娘なのね。でも、それは止めておきなさい」

 それから教えてくれた内容は、私にとって、とても衝撃的(しょうげきてき)なものだったわ。

 若い(ころ)、お母様とおじい様は、お互いに思いあっていたのですって。

 でも、おじい様は年を取る事ができないので、お母様を不幸にしてしまうからと言って、(みずか)ら身を引いていたみたいなの。

 それからもいろいろと教えてくれたのだけれども、まだ(おさな)かった私には、ほとんど理解できなかったわ。

 でも、最後に優しく言い(ふく)められて、この内容だけは、なぜだかとても良く理解できたの。

「いい? メイ。もし、あなたがその目標をおじい様に言ってしまうと、おじい様はとても(くる)しんでしまうの。そして、もしかしたら、自分がメイに悪い影響(えいきょう)を与えてしまっていると考えて、この家を出て行ってしまうかもしれないの」

 それから、私の目をじっと見つめて、こう言ったの。

「これから先もおじい様と一緒(いっしょ)()らしたかったら、その思いは、絶対に伝えてはだめよ?」

 こうして、私の初恋(はつこい)は、あっという間に失恋(しつれん)へと変わってしまったの。

 もちろん、私は泣き出したわ。ギャン泣きよ。そして、泣き(つか)れて()てしまうまで、ずっとお母様にしがみついていたわね。

 でも、おじい様と会えなくなるのだけは絶対に(いや)だったので、言いつけを守って、この思いだけは伝えなかったわ。

 そして、この(ころ)だったわね。私が魔道具を良く(さわ)っていたのは。

 それを見たおじい様は、私が魔道具に興味(きょうみ)を持っていると思ってしまったようで、いろいろと魔道具について教えてくれるようになったわ。

 でも、残念ながら、私は魔道具に興味(きょうみ)があったわけじゃないの。

 おじい様が工房長として魔道具を開発していると知ったから、おじい様の作った魔道具を私も使ってみたくなって、いろいろと(なが)めていただけなの。

 そんな私がお兄様に(こころ)()かれてしまったのも、しょうがない事だったと思うの。

 だって、そうでしょう?

 お兄様は、おじい様が作った学校を優秀(ゆうしゅう)な成績で卒業すると、おじい様にお願いしてもっと高度な内容を勉強していたわ。

 物知りなおじい様の知識(ちしき)を、誰よりも一番多く継承(けいしょう)しているはずなのよ。そして、おじい様の影響(えいきょう)を強く受けていたの。

 とても物静(ものしず)かで、物腰(ものごし)(やわ)らかい、ものすごく頭のいい男の子になっていったの。

 私には、小さなおじい様に見えてしまったわ。そう認識(にんしき)してしまうと、恋せずにはいられなかったの。

 小さな(ころ)は、誰も問題にしなかったのよ。

 お兄様にべったりとまとわりついても、優しいお兄様本人はもちろん、周りのみんなもニコニコとしていて、微笑(ほほえ)ましいものだと思ってくれていたわ。

 でも、大きくなるにつれて、だんだんと(まゆ)(ひそ)められるようになっていったの。

 そこで、私は考えたの。どうやったら、おじい様のような異性(いせい)に、家族以外で出会えるのかってね。

 そうすると、勉強していたお兄様の姿が頭に浮かんだの。これだわ、と思ったわね。

 おじい様に(きび)しく教育してもらえれば、おじい様のような物知りな男性に成長するに(ちが)いないと思えたのよ。

 それからの私は、私のために必死に勉強してくれそうな男性を探したわ。

 一番条件に合ったのが、ゴランだったの。

 実際、おじい様の教育を(わず)か二年で修了(しゅうりょう)して見せた時には、とても見直(みなお)したわ。もしかしたら、この人なら、愛せるのかもしれないと思えたの。

 でもね。今になって(なや)んでしまっているの。

 みんなはお兄様への未練(みれん)があるからだと思っているのだけれども、本当は(ちが)うの。

 私が結婚してしまうと、この家を出て独立しないといけなくなるわ。そうすると、今までのように気軽(きがる)におじい様に甘えられなくなるのよ。

 私にとっては、それが一番、(さみ)しいのよ。

 でも、このままでは、みんなを(こま)らせてしまう。

 そこで、最近はちょくちょくと、相談(そうだん)があるからとおじい様の部屋を(たず)ねて、お酒を飲みながらいろいろと聞いてみたわ。

 その中で、何か結婚を後押しするような知恵(ちえ)はないですかって、聞いてみたの。

 そうすると、おじい様はこう答えてくれたわ。

「私の故郷では、自分が好きになった人と結婚するよりも、自分を好きになってくれた人と結婚する方が、より幸せになれると言われていましたね」

 おじい様によると、自分を好きになってくれた人と一緒(いっしょ)になると、ずっと大事にしてもらえるので、夫婦(ふうふ)円満(えんまん)で幸せに()らしていけるのですって。

 言われてみると、なるほどねと思えてしまったわ。

 それに、子供好きのおじい様の事だから、私に子供ができれば、私たちの家へと頻繁(ひんぱん)に通ってくれるようになるのは間違(まちが)いないわね。

 そう考えてみたら、そろそろ、ゴランと結婚してみるのも悪くないわね。


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