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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第五章 ガインの町

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第82話 里を少し便利に

 家族四人で床下の増強工事をした後、祭司長とエストとローズさんは、仲良く狩りに出かけていた。

 私は少し別の用事があるからと同行を断り、今は里の子供たちを集めて、ある事を教えている。

 順番に子供たちに教えていると、祭司長が様子(ようす)を見に来た。

「祭司よ、これは何を教えておるのじゃ? 伝統にはない、新しい魔法に見えるのじゃが」

 祭司長は眉間(みけん)(しわ)()せていて、かなり不機嫌(ふきげん)様子(ようす)に見える。私はさも当然という態度(たいど)を見せる事を心掛けながら、説明を始めた。

「祭司長様、これは火種の魔法です。外では生活魔法と呼ばれている、ごく基本的な魔法になります」

「それでは、この里の伝統が」

 私は祭司長の前に(てのひら)(かか)げ、その主張を(さえぎ)って説得を(こころ)みる。

「祭司長様も、がすこんろの魔道具を使っていますよね? あれは便利だとは思いませんか?」

 私のあからさまな話題(わだい)転換(てんかん)に、祭司長は少し怪訝(けげん)な表情を見せていたが、どうやら話は聞いてくれるらしい。

「あれは確かに便利じゃな」

「私もがすこんろを、里のみんなに使って欲しいとは思っていません。ただ、火種の魔法が使えるようになると、(かまど)に火を()けるのが少しだけ便利になります。里の伝統からは少し外れるかもしれませんが、これくらいであれば、見逃(みのが)してもらえませんか?」

 祭司長は腕組(うでぐ)みをして、(うな)り声をあげながら考え込んでいる。

「ううむ……」

 私はこの(すき)に、少し譲歩(じょうほ)する姿勢(しせい)を見せる事で説得を続け、(たた)みかける。

「それに、私は、火魔法の攻撃魔法などは教えるつもりがありません。そこまで伝統を(くず)したくはないですし、何より、森の中で大きな火を扱うのは危険ですから。火種の魔法だけ、黙認(もくにん)してもらえませんか?」

 祭司長は目を閉じ、しばらく黙考(もっこう)を続けている。私も(だま)ってそれを見つめていると、やがて祭司長は目を開け、結論を語ってくれる。

「まあ、この程度(ていど)であれば、わしは見なかった事にするぞ」

 私は笑顔(えがお)になり、祭司長にお礼を述べる。

「ありがとうございます。祭司長様」

 超保守的なこの里とはいえ、やはり子供は好奇心(こうきしん)旺盛(おうせい)なようで、他にも何か便利な魔法はないかとせがまれたため、祭司長が見ていない間ならと(ことわ)りを入れてから、他の初級魔法も教える事にする。

 そこで、私は、便利な防御魔法として(ひかり)(だて)の魔法を教え、次に光の魔道具に使われている魔法である光球(こうきゅう)の魔法も教えた。

 子供たちはとても(よろこ)んでくれたので、つい調子(ちょうし)に乗ってしまい、「うぉーたーかったー」の魔法も教えてみたのだが、子供の魔力では連発(れんぱつ)ができなかったようだ。

(この子たちが成長した(あかつき)には、ウォーターカッターの魔法も連発(れんぱつ)できるようになるでしょう。そうなれば、もう(おの)はレアアイテムではなくなるはずです)

 私は、里の生活が少しだけ便利になった事に満足し、今回の里帰りの予定を終えた。


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