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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第五章 ガインの町

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第81話 くーらーの運搬

 ()けて翌日。

 私とエストが同じ小屋に(とま)っていて、祭司長とローズさんが同じ小屋に(とま)っていた。今は祭司長の小屋に家族四人で集合していて、祭司長とローズさんが仲良く朝食を作っている。

 そんな中、ローズさんががすこんろを見ながら質問を口にした。

「なんだか、この家に魔道具がたくさんあるのが不思議(ふしぎ)なのですが、他の家もこのような感じなのでしょうか?」

 それを聞いたエストが、クスクスと笑いながら否定する。

「そんなはずはありませんよ。これは、おじい様がご自分の母上に、せっせと貢物(みつぎもの)(けん)(じょう)した結果です」

 そのあまりにもな表現に、私も苦笑(にがわら)いしながら同意する。

貢物(みつぎもの)って、もう少しマシな表現はなかったのですか?」

 そんな私にエストは微笑(ほほえ)みを返し、続けてローズさんに顔を向けて同意を求める。

「私は、おじい様の故郷や母上に対する愛情が、少し暴走しているように感じる事があるのです。ローズ、あなたもそう思いませんか?」

 ローズさんはそのまま(うなず)きそうになっていたが、その時に私と目が合ってしまい、(あわ)てて否定してくれる。

「私はお母様思いの、素敵(すてき)な息子さんだと思いますよ」

 そんな私たちの様子(ようす)を見たエストは、少し()みを深くし、祭司長に新しい提案(ていあん)を始めた。

「ところで、ひいおばあ様。おじい様がまた新しい魔道具を作ったのですが、欲しくはありませんか?」

「何じゃと。それは、いったいどのようなものじゃ?」

 新しい文明の利器を欲しがる祭司長を見て、私はしみじみと次のように考えてしまう。

(祭司長様もずいぶんと、私に毒されてしまいましたね)

 そんな私の様子(ようす)に気づいた風もなく、エストは新作魔道具の説明を始める。

「レイゾウコというのですが、いつでも()えたお酒が飲めるようになりますよ?」

 祭司長は料理の手を止めて上を向き、少し考えてから返答する。

「ううむ。酒は(いわ)いの時の儀式の一つじゃからのう。そこまでして飲みたいとは思わぬな」

「では、くーらーの魔道具はいかがです? (つめ)たい風が()きつけるので、夏場は快適(かいてき)ですよ?」

 それを聞いた祭司長はエストの方に向き直り、少し食いつき気味(ぎみ)に返答する。手に持ったままの包丁(ほうちょう)が少し(こわ)い。

「そ、そのような便利(べんり)なものが……。それは、ぜひとも、欲しいものじゃな」

 私は祭司長の希望を(かな)えるべく、頭の中で素早(すばや)く問題点を洗い出す。しかし、どう考えても無理そうだった。

「祭司長様、あれはとても重たいものなので、馬車はともかくとして、荷車(にぐるま)で運ぶのはおそらく不可能だと思います」

「そうか……。運べぬのであれば、いたしかたないのう」

 しょんぼりとしてしまっている祭司長を見て、私はなんだか罪悪感(ざいあくかん)()き上がってきてしまったので、必死に頭を回転させて解決策がないかと考えを(めぐ)らせる。

「そうですね……。では、こうしましょう。この小屋に使う程度(ていど)であれば、あそこまでの出力は必要ありませんから、私が改造して小型化します。そうすれば、運べるかもしれません」

「おお、そうか! 祭司はいい子じゃな」

「祭司長様、私もとっくに成人しているのですから、いつまでも子供扱いは止めて欲しいです」

 祭司長にいい子と言われたのが、なぜか無性(むしょう)(いや)だった。私は、この時、その理由に全く気が付いていなかった。

 そんな私たち親子の会話を聞いていたエストは、ウンウンと(うなず)いていて、賛意(さんい)(しめ)してくれる。

「それはいい考えだと思います。おじい様、私も半分お金を出すので、ぜひとも小型のくーらーを作って運搬(うんぱん)しましょう」

 そんなエストを見ていると、私は(あら)たな問題点に気づいてしまい、その指摘(してき)を始める。

「ただ、もう一つ問題があります」

 私は粗末(そまつ)な床を見ながら説明を加える。

「この床にくーらーを置いてしまうと、おそらく床が()けてしまいます」

 思わずといった様子(ようす)で家族四人が視線(しせん)を下に向け、少し笑いあってから、協力しあって床下の増強工事を行う事にした。

 朝食後に全員で床板の一部を取り払い、私と祭司長の親子二人で土魔法を駆使(くし)して土をできるだけ固め、その上に全員で(たい)らな石を()()めてから、床板を元に戻していった。

 そうやって、楽しい時間は、(またた)く間に()()っていった。


 これは、それから一年後の話である。

 私は、約束通りに開発を進め、小型化に成功したくーらーを行商人のアルトさんに運搬(うんぱん)してもらった。

 馬車で運ぶのは問題なかったのだが、荷車(にぐるま)を使って人力で引いていくのはかなり大変だった。

 私も後ろから押して手伝っていたのだが、無理な依頼(いらい)をしてしまったと反省(はんせい)し、ガインの町に帰った後に、アルトさんに追加(ついか)報酬(ほうしゅう)を支払った。

 一年前に行った床下の増強工事もちゃんとできていたようで、特に問題なく、くーらーの設置ができた。

 早速(さっそく)スイッチを入れて、冷風を顔に受け始めた祭司長だった。

「う? うおおおおおおおお?」

 そんな、奇妙(きみょう)雄叫(おたけ)びのようなものを上げて、とても(よろこ)んでくれていた。

 その様子(ようす)を見ながら、同時にいろいろと目に入って来るこの部屋の魔道具を見て、私はしみじみと感じていた。

(やはり、この小屋だけ、家電製品で(あふ)れてしまいましたね)


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