表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第五章 ガインの町

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/159

第78話 ガリバンインサツ

 くーらーの販売開始から、一年ほどが経過した(ころ)

 ようやく、ガリ版印刷技術の開発が完了していた。

 工房長の仕事でかなり(いそが)しかったのだが、なんとか時間を作って、少しずつではあるが研究を継続(けいぞく)していた。

 事前にアナウンスしていた通り、この新しいインサツ技術は、ガリバンインサツであると発表した。

 この技術を伝授(でんじゅ)されたインサツ工房の技術者によると、ガリバンインサツは、出版されている物語本の挿絵(さしえ)として、まずは利用されるのだそうだ。その後には、楽譜(がくふ)等にも応用される予定らしい。

 また、この(ころ)には、インク技術者によってカラーインクの開発も進んでいた。そのため、私はそのままカラー印刷の手順も教えた。

 色のついた絵が量産(りょうさん)できると知ったインサツ技術者たちは、とても(おどろ)いた顔をしていた。

 何度か会議を繰り返し、相談(そうだん)した結果、まずは料理のレシピ本をカラーインサツして出版してみると決まった。

(やっと、印刷技術の開発目標が達成(たっせい)できましたね。次は、高等学校の先生たちの教育を完了(かんりょう)すれば、平民の知識レベルを高める事ができます)

 私の野望が少しずつではあるが順調に達成(たっせい)されていく様子(ようす)に、そっと心の中でほくそ()んでいた。

 また、この(ころ)、私はある人物にずっと疑問(ぎもん)に感じていた事を質問(しつもん)してみた。

 あの金色の粉を直接買い付けに来ていた三代目ルツ工房長に、なぜコピー商品を作らないのかと質問(しつもん)をぶつけてみたのだ。

 三代目ルツ工房長はワイズさんという名前で、私がルツ工房で働いていた時には、まだ就職していなかった人だ。

「ワイズさん。私は、ルツ工房であれば、くーらー等のコピー商品を作れるはずだと、ずっと思っていたのです。レイゾウコの時も、ルツ工房では最初からコピー商品開発をしていなかったようですし、もしよければ、その理由を聞かせてはもらえませんか?」

 ワイズさんは、微笑(ほほえ)みながら真相(しんそう)を語ってくれる。

「ヒデオ様、簡単な話ですよ? 我々、ルツ工房の作る商品には、あなた様の作る秘伝(ひでん)の粉が必須(ひっす)だからです」

 そして、ワイズさんは少し真面目(まじめ)な顔になり、じっと私の目を見ながら続きを語る。

「もちろん、工房長に代々伝わる話から、あなた様であれば、その程度で取引を停止するとは考えていません。しかし、それでも、私たちの工房の命綱(いのちづな)(にぎ)っているあなた様を、わざわざ挑発(ちょうはつ)するような真似(まね)はしたくなかっただけなのです」

 この後に、正直(しょうじき)に打ち明けてくれたワイズさんと私は固い握手(あくしゅ)()わし、これからも変わらぬ取引を続ける事を約束した。

 ちなみに、この国には握手(あくしゅ)習慣(しゅうかん)がなかった。(みぎ)(こぶし)(にぎ)り込み、その背の部分を軽く打ち合わせるのが、この国本来のやり方だ。

 しかし、私がつい前世の(くせ)挨拶(あいさつ)代わりに使用していて、そのたびに正しい挨拶(あいさつ)をやり直していたのだが、ルツ工房やガインの町では、いつの間にか広まってしまっていたようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ