表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第五章 ガインの町

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/161

第76話 くーらー

 それからさらに、半年ほどが経過した頃。

 ヒデオ工房の従業員を大幅に増員し、工房の引っ越し作業も完了していたため、レイゾウコの増産体制に一定の目途(めど)が立っていた。

 分解しようとしていた他の工房たちの予約キャンセルもあり、この頃には、なんとか積みあがった予約もかなり処理できていた。それでも、レイゾウコは(うわさ)(うわさ)を呼び、高額商品であるにもかかわらず、次々と売れている。

 そのため、我が工房の売り上げもうなぎ上りだ。

 生産体制に少し余裕(よゆう)のできた私は、さらに新しい家電製品の開発に取り掛かっている。

 次に作りたいものはとっくに決めていた。クーラーである。

 この国は一年を通じて温かく、日本で言えば九州南部から沖縄あたりの気候にあたるのではないかと考えられるため、夏はかなり暑くなる。そのためのクーラー開発だ。

 ものを冷やすという意味で原理は冷蔵庫と同じになるため、おそらく、簡単に開発できるのではないかと考えた事も理由の一つになっている

 そして、研究を始めてみると、やはり簡単にできた。温度調節機能で少し手こずった程度である。

 理想は自動温度調節機能のあるエアコンだが、さすがにそこまでは作れない。そのため、ボタン式で冷風の温度や風量を調整するように設計していた。

 二か月程度で開発が終わり、工房での増産が始まった。

 ただ、前世の記憶(きおく)にあるものと比較して、かなりな重量物になってしまっていた。これは、レイゾウコを少しだけ改造して作っていたため、室外機と室内機が一体になっていた事が主な原因である。

 そのため、前世の様に壁の中空に設置する事ができず、窓際(まどぎわ)の壁に穴を開け、床に(じか)()きするタイプになっていた。

 ちなみに、この国には大きなガラス板を製造する技術がないため、比較的小さな窓しかなく、その近くに設置している。貴族の(やかた)や教会にあるような広めの部屋では、木枠(きわく)で囲って四分割した窓をつなぎ合わせる等の工夫(くふう)採光性(さいこうせい)を上げている。

 また、レイゾウコよりも必要な魔力量が増加したため、魔石の交換(こうかん)間隔(かんかく)も短くなっており、ランニングコストも割と高めになっていた。

 ただ、この「くーらー」の魔道具は、レイゾウコほどには厳密(げんみつ)な断熱機能が必要ないため、私の予想では、ルツ工房であればコピーでほぼ同じ製品を作れるはずだと考えていた。

 しかし、私の謎の超技術の(うわさ)(すで)に業界に広く知られていたためなのだろう、誰も分解して研究しようとはしなかったようだ。

 ただ、(うれ)しい悲鳴ではあるのだが、我が工房はすぐにまた(いそが)しくなってしまっていた。

(このままでは、ウチの工房がブラック企業になってしまいます)

 そのような危惧(きぐ)をした私は、急遽(きゅうきょ)、再び広く職人を募集してさらに従業員を増やし、増産体制を整えなおしていた。

 ちなみに、この頃の私は、メイの結婚式はいつ頃になるだろうかと考えていた。

 メイも十九歳になっており、そろそろ彼氏であるゴランさんを、お婿(むこ)さんとして紹介してくれるのだろうなと思っていたのだ。

 素直(すなお)になり切れないメイは、ブツブツと文句(もんく)を言いながら自宅に呼びつけたゴランさんとデートに出かけていたが、私にはただの()(かく)しにしか見えなかった。

(ひ孫が増える日も近そうですね)

 そう思っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ