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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第五章 ガインの町

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第71話 壮大な野望

 最優先で行っていた植林の研究も順調に進んでいて、もう少し時間をかければ、ワシの生産のための原料の調達も、持続可能な範囲に収まるだろうというのが私の予想だ。

 また、この頃になると、ようやく印刷用のインクの開発が、専用の魔道具の開発と共にほぼ完了していた。

 この魔道具は、こねる機械を短縮してこね機とし、「コネキ」の魔道具と命名している。

 これから領民を(つの)り、専門のインク技術者を育てる予定である。自作したコネキの魔道具を無償(むしょう)で提供し、インクの生産と研究を(まか)せるつもりだ。

 そのまま、カラーインクの開発もお願いしようと考えている。

 カラーインクは、(すす)の代わりに酸化鉄などの色のついた鉱石や土くれなどを細かく(くだ)いて混ぜ込むだけになるので、私でなくても開発できるだろう。

 また、(すす)を生産するための炭焼き(がま)も用意している。

 ただ、曖昧(あいまい)な知識で建設しているため前世と比較する事ができず、どのくらいの効率になっているのかが不明だ。

 この(かま)の改良もインク技術者に丸投げするつもりだ。

 現時点だとカラー印刷はまだ無理だが、ガリ版印刷を開発すれば可能になるはずだ。

 かなり手間はかかるが、色分けしてガリ切りすればいいはずだ。

(次は、いよいよ、活版印刷技術の研究です。頑張(がんば)りましょう)

 私は決意を(あら)たにする。

 私は、各種の印刷技術が確立できた時点で、現在の算数と国語の教科書を(もと)に解説ページを増やし、参考書を編集、印刷して、一般販売する予定である。

 いずれは高等数学などの参考書や専門書も印刷し、この国では貴族たちが独占している知識を、広く平民に普及(ふきゅう)させるつもりだ。

 そうする事によって、強力な権力(けんりょく)基盤(きばん)を築いている現在の貴族の力の源泉(げんせん)を弱め、平民の力を増大させる事を(ねら)っている。

 最初から考えていたわけではないが、これまでのさんざんな仕打ちから、私はガイン家以外のお貴族様たちが、大嫌いだ。

 私は別に、専制(せんせい)(くん)主制(しゅせい)が絶対の悪だとは考えていない。

 行政を効率良く行うという意味で考えれば、一部の専門家からなる特権(とっけん)階級(かいきゅう)に政治を(まか)せてしまうのは、理にかなってもいるのだろう。

 しかし、これは民主主義国家でも(おちい)りがちな(わな)になるのだが、有能だからという理由で長期にわたって特定の個人に権力を(にぎ)らせ続けてしまうと、どうしても腐敗(ふはい)してしまいやすくなる。

 最初は国家国民の事を考え、有能だった権力者がやがて独裁者(どくさいしゃ)となり、自分の特権を守るためであれば国民をないがしろにし始める例は、歴史を紐解(ひもと)けば枚挙(まいきょ)にいとまがない。

 ましてや、権力を世襲(せしゅう)によって継承(けいしょう)し続ける貴族制を採用した国家であれば、その危険性の高さが分かるだろう。

 前世の日本の近くには、親子三代にわたって権力を世襲(せしゅう)している共和国という、存在自体が冗談(じょうだん)としか思えない稀有(けう)な国もあった。

 共和国というのは王様のいない国という意味になるのだが、あの国の支配者層たちは辞書を引いて言葉の意味を調べる事もできないほど教養(きょうよう)がないのだろうか。

 あの国であっても、少なくとも初代が建国した頃なら、いろいろと理想に燃えていたはずなのだ。

 私の個人的な主義主張や考え方なのは分かっているのだが、この国でも民主主義を確立したい。

 そして、前世でも、活版印刷技術の普及(ふきゅう)により知識が広く安価に提供されるようになり、それらの知識を得た市民たちがだんだんと力を(たくわ)え、やがてはフランス革命のような市民革命へと(つなが)り、民主主義が定着したはずだ。

 ただ、民主主義が定着するほど市民に広く知識が行き渡るためには、グーテンベルクの登場から、少なくとも、数百年の時が必要になったはずだ。

 それでも、私の無限の寿命(じゅみょう)であれば、いつかは可能であると考えている。

 ただ、その時、エルクとルースの子孫たちが大きな不利益を(こうむ)ってしまわないように、私が代々教育を(ほどこ)し、今のような、平民との距離が極めて近い貴族家を維持(いじ)する事も、(すで)に決意している。

(この地に、いつか必ず共和国を建国して見せましょう)

 壮大(そうだい)な野望を胸に()め、日々、研究と領地の開発を進める。


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