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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第四章 ガイン村

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第65話 日課の魔法

 そして翌日。起床した私は、いつもの日課の魔法を起動する。

『イベントハンドラ』

 その様子(ようす)を見ていたエストは、不思議(ふしぎ)そうな顔をして質問してきた。

「おじい様、旅の途中でも、毎朝それを(とな)えていましたよね? 何かの魔法を起動しているように見えるのですが、何が起こっているのでしょうか?」

 イベントハンドラの魔法は、理論上の話なら二十四時間起動していても問題ない。しかし、寝ている間の暴発(ぼうはつ)が怖いので、寝る前にはいつも解除するようにしている。

「これは『イベントハンドラ』という、私が独自に開発したオリジナル魔法です。これを起動しておくと、ごく小さい動作で事前に登録しておいた魔法が瞬時に起動できるようになります。見ていてください」

 そのように断りを入れて、私は右手の親指と薬指の先、そして左手の親指と薬指の先をくっつける。

 片手では起動しないようにしているのは、やはり、暴発(ぼうはつ)させないためである。

 そうすると、瞬時に光盾の魔法が起動する。

 この魔法、昔にガルムの都市で魔術師から購入したものなのだが、かなり安くてお買い得だった。

 ヒム族の魔術師の場合、魔法式を詠唱(えいしょう)しないとこの盾が起動できない。そのため、戦闘中に扱う事ができなかったようで、移動途中の保険としてしか使えないと考えられていたようだ。

 イベントハンドラと組み合わせて一瞬で起動できるようになった私にとっては、とても便利に使える防御魔法になっている。

 この盾は、魔力制御力が上がるほど自由に動かす事ができるようになり、さらに、私が独自の改良を加える事によって、使用する魔力は増えたが防御力は上がっている。

 初期状態では、魔物からの攻撃をせいぜい一発か二発程度しか防御できなかったのだが、私の改良によって、ちょっとやそっとではこの防御を抜けなくなっている。

 ちなみに、この魔法、なぜか光魔法にカテゴライズされている。

(光でどうやって防御できるのか、意味が分かりません。そこは、物理魔法ですよね?)

 というツッコミは、(すで)に済ませている。

 また、この盾は、展開しているだけならぼんやりと光っているだけなのだが、攻撃を受けると強い光を(はな)ち、大きな衝突音(しょうとつおん)も発生する。

 いろいろと検証(けんしょう)してみた結果、攻撃を受けると光や音を発するようになるのは、おそらく、その運動エネルギーを光と音のエネルギーに変換して発散(はっさん)させていると考えられる。

 これまでに収集した魔法を使ってみた感覚では、この世界の魔法はある程度物理法則に(しば)られるのではないかと思われる。

 もちろん、魔法らしくというか、ある程度は無視しているようにも見える。だが、極端に物理法則から外れるような事もないのだろう。

 そのような感触(かんしょく)から、この世界の魔法と物理との関係性を、いつかはゆっくりと研究してみたいと考えている。

 私は脇道(わきみち)にそれてしまった思考を正すため、少し頭を振ってイベントハンドラの魔法の説明を続ける。

「この魔法のいいところは、登録している魔法を何度でも、瞬時に起動できる点です」

 そう言って、解除した光盾の魔法を、再び起動して見せる。

「ただ、この魔法にも欠点はあります。非常に長い魔法式になっているので、頭の中で構築するだけも大変です。エストの場合ですと、かなり頑張(がんば)って詠唱(えいしょう)しないといけないでしょうね」

 私は続けて、この魔法の一番の問題点の説明を加える。

「さらに、この魔法はずっと待機状態が維持されてしまうので、ヒム族の場合、この魔法を起動している間は他の魔法が使えないはずです」

 説明が長くなってきたので、少しエストの様子をうかがう。なんだか、とてもキラキラした目をしていて、尊敬(そんけい)の表情に見える。

 私は少し()れくさくなってきて、(ほお)を人差し指でポリポリとかきながら、この説明を()めくくる事にした。

「この里のみんなであれば、複数の魔法式を同時に構築する事もできるので、あまり問題にはなりません。ですが、あなたのお母様ほどの魔導師でもそれはできなかったので、おそらく、ヒム族では、同時に一種類しか構築できないのでしょうね」

 私の長い説明を聞き終えたエストは、興奮(こうふん)した様子で語り始めた。

(すご)いです! おじい様!! さすがは私のおじい様です!! そんな素晴(すば)らしい魔法を自分で作り上げたなんて!」

 ここで、エストは少し上目遣(うわめづか)いになり、おねだりするような雰囲気(ふんいき)でお願いを口にする。

「おじい様、その魔法を教えていただくわけにはまいりませんか?」

 その表情が、なんだかエストの幼い頃を思い出させたので、私は優しく微笑(ほほえ)みながら肯定する。

「もちろん、教えますよ。ただ、とても長い魔法式になっていますので、ガイン村の私たちの(やかた)に帰ってから、ワシに魔法式を書いて渡しますね。この里には、紙もインクもありませんから」

 そのような約束を交わし、祭司長と朝食をとるために、彼女の小屋へと連れ立って歩いた。


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