表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第四章 ガイン村

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/159

第61話 エストの成人祝い

 それからさらに数年の時が過ぎ去った頃。エストは十六歳になり、成人式を済ませた。

 エルクが剣を教え、ルースと私が魔法を教えた結果、エストはとても(たくま)しく成長していた。

 エストは無詠唱(むえいしょう)魔法(まほう)こそ使えなかったが、私から見てもかなり優秀な魔力制御力を持っていて、多彩(たさい)な魔法を使いこなす優秀な魔術師になっていた。

 ただ、ルースによく似ているためか、体つきは少し華奢(きゃしゃ)だ。

 父親のエルクのように、盾を持って真正面から魔物の突進(とっしん)を受け流すような事こそできなかったが、少し軽めの剣と魔物の素材でできた軽装(けいそう)(よろい)を装備し、剣の腕前(うでまえ)だけでも、いつでも優秀な傭兵になれるだけの実力を身に着けていた。

(もう少しエストの魔力が増えましたら、火柱のような上級範囲魔法も教えますか。それに、エストになら、私のオリジナル魔法も一部は解禁(かいきん)して教える事にしましょう)

 エストの魔法の才能に、私の(まなじり)は下がりっぱなしになっていた。

 そして、今、エストは成人の記念旅行の挨拶(あいさつ)を行っている。

 ガイン家の家族全員が、エルクの仕事部屋である領主の執務室へと集まっている。

 エストは子供の頃からの夢をかなえるため、成人の祝いとして、私の里への旅行を強く希望していた。

 しかし、大事な跡取(あとと)り息子を、魔物の領域を突っ切る街道に送り込む事になるエルクは、当初、かなりの難色(なんしょく)を示していた。

 それでもエストは(あきら)めず、根気(こんき)よく説得を続けていた。私も少しは力になれればと、エルクに何度も口添(くちぞ)えをしていた。

 そんなある日、エルクは次のように言った。

「おじい様と一緒で、さらに、森の隠れ里への行商人の護衛の傭兵たちと一緒であれば、許可しよう」

 ついにエルクが根負(こんま)けして折れた瞬間だった。私とエストは、ハイタッチをして喜びを分かち合った。

 (すで)にガルムの都市で、行商人には連絡を取っている。アレスさんという人で、私の年齢から計算すると、おそらくは、アレンさんのひ孫あたりだろうなと思っている。

 ちなみに、アレンさんは、とっくの昔に寿命で亡くなっている。

 家族を代表して、家長のエルクがエストに語り掛ける。

「エスト。お前は私が教えた剣の腕と、母さんとおじい様が教えた魔法の腕を持つ、優秀な戦士として成長してくれた。私の自慢(じまん)の息子だ」

 エルクもすっかりと貴族が板について、昔とは違う口調(くちょう)で話しかけていた。

 そのまま続けて、エルクは注意点を述べ始めた。

「しかし、それでも、魔物の領域は何が起こるか分からない。おじい様や周囲の傭兵さんたちの指示を、よく聞くようにしなさい」

 (うなず)きを返して返事をしたエストをじっと見つめ、エルクはこの話をまとめた。

「気を付けて行ってきなさい」

 続けてルースも息子を送り出す。

「もう、あなた。エストも、もう子供ではないのですから大丈夫(だいじょうぶ)ですよ。それに、おじい様の魔法の腕は、あなたも良く知っているでしょう? エスト、体に気を付けて行ってくるのですよ」

 最後はメイが語り掛ける。

「お兄様。いくらおじい様の里の女の子が、おじい様によく似た色白の美形ぞろいだとしても、変な女に引っかかったら、私、許しませんからね?」

 十一歳になったメイは、だんだんと美しく成長している。

 綺麗(きれい)な金髪を(こし)まで伸ばし、ルース譲りの顔で、私のひいき目なしに見ても、かなりの美少女になっていた。

 この子は、次のようにいつも公言していた。

「頭が良くて、強い人が理想のタイプです」

 それは別に(かま)わないのだが、その理想のタイプに兄のエストがドストライクなようで、ブラコンがこれ以上悪化しなければいいがと思っている。

 少し前のメイとの会話は、以下のようなものだ。

「おじい様。私、プライドだけしか取り()のない、他の貴族家には絶対に(とつ)ぎたくありませんよ?」

 私はそれに微笑(ほほえみ)を返し、そんなつもりはないと教える。

「我が家は自由(じゆう)恋愛(れんあい)家訓(かくん)なので、全く問題ありませんよ。あなたが好きになって選んだお婿(むこ)さんを、いつか紹介してくれるのを、私は楽しみにしているのですよ?」

 私がそう告げると、メイは少し安心したようになり、続きを語る。

「私も馬鹿(ばか)ではないので、お兄様と結婚できないのは良く理解しています。ただ、強い殿方(とのがた)はそれなりにいても、頭の良い殿方(とのがた)がなかなか見つからないのです」

 そして、メイはそのまま私に対しておねだりを始めた。

「もし、このお方ならと思える強い殿方(とのがた)がいましたら、おじい様、そのお方にお兄様と同じくらいの教育を(ほどこ)していただけませんか?」

 私はそれに大きく(うなず)き、了承(りょうしょう)の意を示す。

「もちろん、(かま)いませんよ。では、メイと私で、一緒に理想の殿方(とのがた)を育成しましょう」

 そんな回想をしていると、エストが出発の挨拶(あいさつ)を述べ始めた。

「それでは、お父様、お母様、メイ。行ってまいります」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ