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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第四章 ガイン村

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第59話 ワシとダイズと蜂蜜と

 手すき和紙の研究を始めてから、二年ほどの歳月が流れた頃。

 私は、今、手すき和紙を量産するための工房の建設現場を視察(しさつ)している。

 手すき和紙の研究自体は、一年ほどでほぼ完了していた。それから領民を(つの)って作業手順を教え、今ではそれなりに量産できている。

 私の作った新しい紙、「ワシ」は好評で、羊皮紙(ようひし)よりも安価な紙としてよく売れている。

 この国の紙は非常に高価であるため、ワシもなかなかの高価格で取引されており、ガイン村の税収もかなり増えた。

 市場調査をしてみた結果、もっと安価な紙も欲しいという声が多数寄せられたため、わら半紙(ばんし)と呼ばれる低品質な紙も開発して販売している。

 わら半紙(ばんし)の作り方は、原料の部分以外であればワシと変わらない。

 原料として、麦の収穫後の藁束(わらたば)や材木屋等から出た廃材、回収した古紙を利用して生産している。

 ワシと比べるとかなり濃い灰色をしており、手触(てざわ)りもざらついているのだが、価格を半額程度に(おさ)えているため、こちらも飛ぶように売れている。

 その結果、試験的に作った小型の道具で生産していたのではとても需要(じゅよう)(まかな)えなくなり、記憶にある大型の各種道具を発注していて、今はそのための大規模な工房を建設中だ。

 開発資金が大幅に増えたため、領主のエルクと相談しながら、さらに発展させるための領地の開発を積極的に行っている。

 もはや、実験農場とは呼べないほど輪作の農地も広がり、大規模な「ミソ」蔵も建設中だ。

 「エダマメ」も新しい食材として想像していた以上に人気が出てきており、ミソと含めて大豆(だいず)と関連商品も、ガイン村の特産品として徐々(じょじょ)認知(にんち)されるようになってきている。

 ちなみに、この国での大豆(だいず)はカルクと呼ばれているのだが、私がついつい、ダイズ、ダイズと口に出していたところ、それがいつの間にか領民の間で広まってしまっていた。

 その結果、「ダイズ」はガイン村で作られるカルクの高級ブランドの名称(めいしょう)のような(あつか)いになっていた。

 日本の果物(くだもの)で例えると、シャインマスカットや清水(しみず)白桃(はくとう)のようなものと言えばイメージしやすいだろうか。

 ダイズと同じく、輪作の一環として取り組んできた野花の栽培を利用した養蜂(ようほう)も、かなり順調に推移(すいい)している。

 この国では砂糖が高級品になっているため、蜂蜜(はちみつ)もかなり高価に取引されている。

 蜂の巣から効率的に蜂蜜(はちみつ)を採取できるようにと、遠心力を利用した分離機の魔道具を私が開発して貸し出していたのも、生産性の向上に役立っていると思いたい。

 エルクの許可のもと、開墾用(かいこんよう)の農具等を無料で貸し出し、当面の生活費を保証した上で移住者を広く募集した結果、この村の人口もかなり増加していた。

 ただ、(うれ)しい悲鳴(ひめい)ではあるのだが、領主館で開いている学校では、子供が増えすぎて入りきらなくなっており、今は交代制でなんとか授業を回している。

 そのため、ワシ工房が完成してさらなる開発資金を得た時点で、専用の学校を建設する予定をエルクに提案している。

 ヒデオ工房の弟子たちも、順調に下積(したづ)み仕事に(はげ)んでくれている。

 まだ一人前として工房を(まか)せられるほどではないが、後二年ぐらいすれば、少なくとも職人としては一人前になれるだろうというのが、私の予想になっている。

 ガイン村の発展に確かな手ごたえを感じながら、私は(いそが)しくとも充実した日々を送っていた。


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