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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第三章 傭兵時代

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第49話 魔物の氾濫

 エルクとルースの結婚式から、二年ほどが経過した頃。

 二人は結婚直後に新居を購入していて、幸せな新婚生活を送っていた。ただ、子宝(こだから)(めぐ)まれなかった事だけが心配だったようだ。

 そして、今。二人の家を(たず)ねた私の前には、幸せの絶頂(ぜっちょう)のような表情をしている二人がいた。

 最近になって、ルースがようやく懐妊(かいにん)したのだ。

 まだそれほど目立たないルースのお腹を、エルクが優しく()でながら語り掛ける。

「男の子かな? 女の子かな? やっぱり、ルースの子供だから、魔法が得意なのかな? もし、男の子が生まれたら、俺、剣を教えるんだ」

「もー、気が早いわよ、エルク。それに、何度も同じ事を言わないでよ。まだ生まれてもいないんだから」

 二人はとても優しい表情をしながら、幸せですと全身で表現していて、それを見ていた私も幸せな気持ちになる。

 そんな親友たちとの会話を楽しんで、数日が経過した頃。

 私と傭兵団長の元に、ある不吉な知らせが届けられた。

「魔物の氾濫(はんらん)予兆(よちょう)だと?」

 団長が(まゆ)()せる。私も思わず顔を(しか)めてしまう。

 最近、近くの魔物の領域の森で、不穏(ふおん)な空気があるというのだ。

 魔物の様子が全体的にどこかおかしく、さらに、ごく浅い地域にはいないような魔物が、都市の周辺地域で確認されているらしい。

「団長、判断するにしても情報が不足しています。至急(しきゅう)、調査団を編成して派遣しましょう。私も出て、直接指揮を()ります。それから、この事を騎士団の詰所(つめしょ)と、残りの傭兵団に連絡をお願いします」

 それから、(あわ)ただしく決められたのは、各傭兵団で精鋭(せいえい)からなる調査団を派遣する事と、魔物の氾濫(はんらん)に備えて医療物資等の備蓄(びちく)を始める事、森への立ち入りをしばらく禁止とする事等であった。

 翌日には編成された調査団を私が取りまとめ、魔物の領域の奥深くまで(もぐ)る事になった。私たちの調査団は、担当地域である南東方向に向けて移動を開始した。

 それから三日後。

 私たち調査団の目の前に、一番、見たくなかった光景が広がっていた。

「副団長、こりゃあ、いろいろとマズイですぜ……」

 調査団の中でも一番のベテランである、エトが絶句しながらそう述べた。

 目の前には、雑多(ざった)な魔物たちが、あたり一帯に広がって移動を続けていた。

一旦(いったん)、安全な場所まで下がって距離を取りましょう。そこから木に登って、どの程度まで魔物が広がっているのか確認します」

 そうやって確認してみると、見える範囲一杯に魔物が広がっていた。

 その他の場所の何か所かで同じような調査をしてみたが、どこでも結果は同じだった。

 私たちは地図を広げ、現在の位置と魔物の進行方向、そしてガルムの都市の方角を確認した後、帰還準備を始めた。

 それからさらに二日後。

 予定を切り上げて調査から帰還した私たちは、最悪の結果を団長に報告する。

「ほぼ間違いなく、魔物の氾濫(はんらん)が起こります。到着予想時刻は二日後。南南東の方角です。記録にあるものと比較した結果、かなり大規模な魔物の氾濫(はんらん)が予想されます。大至急、領主様に連絡をお願いします」

 その報告を(だま)って聞いていた団長は、目をぎゅっと(つむ)り、大きく息を吐き出した。

 その直後には、もう迷いのない、決然(けつぜん)とした顔になっていた。それから、各所に連絡すべく、いろいろと指示を出し続けていた。

 領主様にも事の重大さを理解していただけたようで、その日のうちに迎撃(げいげき)準備(じゅんび)を行う御触(おふ)れが多数出された。


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