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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第三章 傭兵時代

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第45話 私の自宅にて

 それから一か月ほどが経過した頃。

 昨日ガルムの都市に帰還していて、無事に護衛の仕事を終えていた。

 そして、今、約束通りにエルクとルースを自宅に(まね)いている。私の案内で家を見物して回った二人は、それぞれ感想を述べ始めた。

「ヒデオって、本当に金持ちだったんだな。思っていたよりは小さな家だったけど、全部の部屋に魔道具があるって、いったいどこのお貴族様だよ……」

「自分ちにお風呂があるなんてズルイ。今度着替えを持ってくるから入らせてよ」

 私は危険な発言をしているルースを止める。

「独身男性の家に未婚女性がお風呂に入りに来たりしたら、いろいろとマズイでしょう。おかしな(うわさ)が広がってしまったらどうするのですか?」

 私の懸念(けねん)にも関わらず、ルースはなんでもない事のようにキョトンとして返答する。

「私は気にしないから入らせてよ」

「何と言われてもダメですよ」

 他愛(たあい)もない会話を(はず)ませながらとても楽しい時間を過ごし、手料理をふるまった後、お茶を飲みながらくつろいでいた。

 そうすると、ルースが少し真面目(まじめ)な顔をこちらに向けてきて、この日の本題をお願いしてきた。

「ヒデオ、そろそろ魔力制御の訓練方法を教えてくれない?」

 エルクは後ろを振り返りながら、席を外すと言ってくれる。

「じゃあ、俺はもうちょっとこの家を探検してくるよ」

 エルクが部屋を出て探検に向かったので、椅子(いす)とテーブルを(わき)()せ、床にルースと向かい合って座る。

 ちなみに、私の家は土足禁止になっている。玄関(げんかん)部屋(へや)()き用のスリッパのような(くつ)()き替えてもらっている。

 これから教える魔力制御の訓練は、椅子(いす)に座って行っても問題ないのだが、元日本人なせいなのか、床に胡坐(あぐら)をかいて座った方がより集中できるような気がして、私はいつもこうやっている。

「それほど難しいものではありません。まずはこうやって、(たま)の形の水球を作ります。そして、その形を維持したまま動かします」

 魔法のトリガーとなる『水球』を(とな)えると、私の顔の前に野球ボールぐらいの正確な(たま)が浮かび上がる。それが、私を中心としてくるくると回り始める。

「この時のコツは、できるだけ小さくて正確な(たま)の形を維持する事です。この時の魔法は何でもいいのですが、室内でやる時は、水が一番扱いやすいですね。『火球』とかですと、火事になったらいけませんので」

 私は説明を終えると、この部屋に常備してあるバケツに向かって水球を動かし、そこで魔法を解除して水に戻した。

 ルースにやってみるように(てのひら)を向けて(うなが)すと、真剣な表情になって水球の魔法を発動し、ぬぬぬっ、と、かわいらしい()け声を出しながら、徐々に正確な球形を形作っていく。

 ボーリングの玉よりも若干(じゃっかん)大きくなっているが、初めてやって、この大きさと正確さは素晴(すば)らしい。

(すご)いですね。流石(さすが)はルースです」

 私が賞賛(しょうさん)を送ると、ルースは眉間(みけん)(しわ)()せながら、真剣な表情で魔法を維持したまま反論を口にする。

「ヒデオに言われても()められている気がしないよ。ヒデオだったらどのくらいできるのか、見せてくれない?」

 私はそれに一つ(うなず)きを返して了承(りょうしょう)の意を示し、お手本を見せるべく、多重水球の魔法を発動させた。

「こんなところでしょうか」

 拳大(こぶしだい)の正確な(たま)や円柱、立方体や(さん)角錐(かくすい)の形をした水球が、部屋の中をランダムに飛び()ねている。

 その様子(ようす)を見たルースは、(あき)れ顔になって指摘した。

「これって、私には絶対に無理じゃない?」

 私はそれに微笑(ほほえみ)を返し、大丈夫(だいじょうぶ)だと太鼓判(たいこばん)を押す。

「ルースほど才能のある若者なら、いつかできるようになると思いますよ」

 ルースは少し不思議(ふしぎ)そうな顔になり、こう口にした。

「ヒデオだって若いじゃん。時々、おじいちゃんみたいな事を言うよね」

 私はそれに苦笑を返しながら誤魔化(ごまか)した。

(おじいちゃんですか。もう五十二歳ですから、あながち間違いだとは言えませんよ?)

 想像していたような殺伐(さつばつ)とした雰囲気(ふんいき)もなく、私の傭兵としての日常は、このように順調に過ぎていった。


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