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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第三章 傭兵時代

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第41話 傭兵

 ガルムの都市の中では一番大きな傭兵団の一員となったのだが、これが思った以上に仕事が少なかった。

 この傭兵団にしたのは、周辺住民のウケが一番良かったからだ。傭兵にしては規律のしっかりとしたところという評判だった。

 傭兵の基本業務は魔物の間引きになっているが、全員が一度に出撃というわけでもなくて、交代制になっている。

「なぜ、これほどの人数がいるのですか?」

 このように周囲の同僚に質問してみると、魔物の氾濫(はんらん)に対処するためだと説明を受けた。

 魔物の氾濫(はんらん)というのは、魔物の領域でたまに起こる魔物の大移動が、たまたま人里(ひとざと)方向に向かった時に呼ばれる現象になっている。

 魔物の大移動というのは読んで字のごとく、魔物の領域の魔物が、突如(とつじょ)として集団で移動する現象の事である。

 森の奥深くにまで割って入るような傭兵たちがまれにみる現象で、これを見たらベテランの傭兵でも避難(ひなん)を開始する。

 ただ救いなのは、大群(たいぐん)が移動するのだが、我を忘れて走って移動というわけでもなく、普通に歩いて移動しているため、見かけてからでも余裕(よゆう)で逃げ切れる点だ。

 原因については諸説(しょせつ)ある。

「魔物の領域の奥深くで非常に強力な個体が発生し、それが周囲の魔物を押しのけたからだろう」

「蜂の巣分けのような現象だろう」

 このようにいろいろと言われているが、人跡(じんせき)未踏(みとう)の魔物の領域の奥深くでの事になるので、真相(しんそう)は誰にも分からない。

 きちんと魔物を間引いて管理していても()けられないのだとか。

 ちなみに、この魔物の氾濫(はんらん)が、人類の領域が縮小を続けている大きな原因になっているのだとか。

 この氾濫(はんらん)の対処に失敗すると、そのあたり一帯の町や村が魔物の領域に飲み込まれてしまう結果になる。

 そうやって、少しずつ人類の生存圏(せいぞんけん)を削り取られ続けてきた結果が、現在の広大な自由国境地帯になっている。

 そして、リスティン王国はこれ以上の国土を失うことを()とせず、辺境部の都市にはかなり強力な権限と財源を与えており、魔物の氾濫(はんらん)に対する備えとして、強大な軍事力を常備していて周辺地域を守護している。

 そんなわけで、人数の割に仕事の少ない傭兵たちは、雇われて警備兵のような仕事をしてみたり、移動する商人の護衛を引き受けたりするらしい。

 ちなみに、この警備兵、ルツ工房でも常時雇用している。

 最初の頃は私が悪質なクレーマーを追い返していたのだが、規模が拡大するにつれて、だんだんと目が行き届かなくなっていったため、警備兵を雇うようになっていた。

 傭兵(ようへい)稼業(かぎょう)(ひま)が多い自由業になっていて、思っていた以上に快適(かいてき)な職場だった。

 自由気ままに狩りをし、時に雇われて旅をする。

 そんな生活を二年ほど続けたある日。

 私は国境線にほど近い道を、北東部にあるマルトという都市に向けて移動中だ。

 私は祭司長の言いつけを守り、本当の実力を隠し続けていた。しかし、私が凄腕(すごうで)な魔導師である事は、この都市だとそれなりに知られているため、過剰(かじょう)に隠してもすぐにボロがでると判断していた。

(これくらいならば、問題ないですかね?)

 そのように思える程度には、実力を開示していた。

 それでも、周囲の同僚たちから見ると比べるべくもないほど強力な新人になっていて、私は次のように言われていた。

「遠距離から戦い始めたら、団長でも負ける」

 私はトップクラスの実力者として認識(にんしき)されていた。

 その団長による強い推薦(すいせん)で、私は(すで)に分隊長になっていた。いくら私が強いと言っても、これは異例の出世になっていたのだが、団長は次のように説明していた。

「こいつは後ろからいくらでも攻撃できる。前線から離れていても魔物の数を減らせるし、無詠唱(むえいしょう)だから指示を出しながら片手間(かたてま)でも攻撃できる。指揮官向きだ」

 そのような団長による(つる)の一声で、私は分隊長に就任(しゅうにん)したばかりだ。

 その団長は、次のようにいつも吹聴(ふいちょう)して回っていた。

「ヒデオは次期団長だ」

 高く評価してくれているのは(うれ)しいのだが、少し困ってもいた。

 ゴリマッチョの多いこの傭兵団の中で、私はかなり華奢(きゃしゃ)な体つきをしている。そんな私が強面(こわもて)のお兄さんたちのトップになるのは、できれば勘弁(かんべん)して欲しいところだ。


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