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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第二章 魔道具職人

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第38話 空は飛べません

 新商品の開発を(ひか)えるようになった私は、その分だけ時間が余るようになっていた。その時間を利用し、私はかつて里にいた時のように、また魔法の開発を進めている。

 最初に手を付けたのは、幼少時に開発を断念していた『フライ』の魔法だ。

 里では魔法の改良をする事も許されていなかったため、人目を気にして断念したが、ここなら特に気にする必要もなく実験を()り返せる。

 そして、(あし)(しげ)く森に通い、目指せ夢のアイ・キャン・フライ。

 腹ばいに地面に横たわり、体をまさぐり続ける不審者再誕。

 かなり頑張(がんば)って試行(しこう)錯誤(さくご)を繰り返したのだが、結論から言えば大失敗だった。

 少し浮く程度ならできなくもなかった。ただ、姿勢(しせい)制御(せいぎょ)があまりにも難しすぎた。

 空中でふらふらするならまだましな方で、少しでも気を抜いてしまうと、簡単に明後日(あさって)の方向に吹っ飛んでしまう。最悪、きりもみ回転しながら吹っ飛んだ事も。

(これは、体に直接風の反動を当てている以上、どうやっても無理でしょうね)

 そのように結論付ける以外になかった。

 生身がだめなら、何か他のものに受けさせたらとも考えてみた。

 真っ先に浮かんだのはハンググライダーだったが、さすがに流体力学までは理解していない。一人で開発するのは無理だろうと(あきら)めざるを得なかった。

 一瞬、魔道具で代用とも考えた。

 VTOL(ブイトール)機と呼ばれる垂直離着陸ができるような航空機ができたら最高だが、やはり流体力学が分からない上に、電卓を作ろうとして、うっかり巨大国家プロジェクトを提案しそうになった私だ。これがどれだけ巨額の資金が必要か、すぐに理解した。

 熱気球や飛行船のような安定して空中に留まれるものを開発して、それの動力として魔法を使うしかないと結論づけた。

 最初に目指していた、魔法で空を飛ぶという思想からはだいぶんズレてしまっていたが、かなり大真面目(おおまじめ)に検討していた。

 飛行船については、何らかの軽い機体を大量に用意しなければならない。

 一番いいのはヘリウムだ。不活性ガスと呼ばれる種類に含まれるこの気体は、なんと言っても安定性(あんていせい)抜群(ばつぐん)だ。適当に(あつか)っても燃え上がるような事がない。

 だが、ヘリウムが大量に抽出できるようになったのは、地球でもかなり後の時代になってからのはずだ。私の知識の中にも、そのあたりの事についてのものはない。

 飛行船の初期から使われていた、水素の利用も考えてみた。

 水素は簡単に燃え上がってしまうため(あつか)いが難しいのだが、入手自体は比較的簡単にできる。

(水さえあれば、電気分解でいくらでも作れるはずです。電気については、電気モーターを回せば作れるでしょう。その回転力には、例のモーターの魔道具を利用すればいいはずです。)

 そのように考えを進め、学校の授業の一環として手作りした経験のある、二極式(にきょくしき)と呼ばれるモーターの構造を思い出す。

(永久磁石を(まわ)りに配置して、その内側に二つのコイルを作るはずです。そして、軸の部分に接触部を用意しておき、半回転した時にプラスとマイナスが入れ替わるようにすればいいはずです)

 ここまで思い出した時、この方法の致命的(ちめいてき)な問題点にも気が付いた。

(飛行船に利用できるほどの大量の水素を用意しようとすると、恐ろしく大量の電力が必要になってしまいます。これは、とてもではありませんが、無理でしょうね)

 では、熱気球ならどうだろうか。構造と原理自体はとても単純だ。

 気球内部の空気を加熱するための火が周囲に燃え移らないように、研究開発する必要があるだろうが、時間さえかければできなくもないような気がする。

 しかし、空飛ぶ乗り物の開発で事故は多発するはずだ。少なくとも、パラシュートぐらいの安全装置を作らなければ、いくらなんでも危険すぎて作れない。

 長々と検討してどれも(ぼつ)。空飛ぶ夢は頓挫(とんざ)した。


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