表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第二章 魔道具職人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/157

第36話 親方の後継者

 がすこんろの発売から数年の月日が流れた頃。

 私は四十二歳になっていた。

 里を初めて出たのが成人直後の三十歳の時だった。あれから十二年の年月は、本当にあっという間に過ぎ去っていった。

 十二年前と比較すると親方もだいぶん()けて見えるようになっていたが、まだまだ元気に仕事をしていて、今なお魔道具作りに邁進(まいしん)し続けている。

 急成長した我らがルツ工房は、もうすでに国一番の規模の工房と呼ばれているのに、親方は経営よりも魔道具の自作や研究を優先してしまう、根っからの技術者だった。

 全く()けない私は周囲から少し不審がられる事もあったが、里のものでもこれくらいの年であれば、まだまだ若造(わかぞう)と呼ばれてしまう年齢だ。

 そのため、周囲には次のように説明していた。

「森アルク族は寿命が長いですからね」

 また、この頃になると、工房の弟子(でし)たちの中にはチラホラと独立するものも(あらわ)れていた。

 しかし、親方の秘伝の塗料が手に入らなかったため、他の工房と同程度のものしか作れず、かなり苦戦しているようだ。

 そんな事情で、弟子(でし)たちの多くは、一人前になっても我が工房の従業員として引き続き働いてくれている。

 親方はそろそろ後継者を育てたいらしく、私を見かけると、しばしば次のように口にするようになっていた。

「ヒデオ、お前がわしの後を継いでくれ」

 何度も頼まれたのだが、私はその期待に(こた)えることができなかった。

 私は年を取ることができない。そのため、私が親方になってしまうと、半永久的に地位を独占してしまう危険性がどうしても排除できない。

 私がいわゆる「上位アルク」である事を知っている親方には、これ以上隠し事をしても無駄(むだ)だと判断し、私がほぼ無限の寿命を持つことを打ち明けた。

 そして、次のように説得を続けていた。

「いつまでたっても変化しないのは、停滞を呼んでしまいます。技術力や開発力で飯を食う、ルツ工房の理念に反してしまいますよね?」

 そのかいもあって、やがて親方は高弟(こうてい)の一人を後継者に指名していた。

 その彼はとても優秀な技術者だった。しかし、典型的な技術者の多くがそうであるように、彼もまた、(かね)勘定(かんじょう)については全くの無頓着(むとんちゃく)だった。

 経営に関して興味を示さなかったので、今は親方と二人でいろいろと教育している最中である。

 がすブランドの商品は私の予想を超えて売れ続けており、同業者の(うら)みをこれ以上買わないために、私は新製品の開発を(ひか)えるようになっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ