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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第十二章 進む近代化

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第220話 海運の父

 (あら)たな開発(かいはつ)目標(もくひょう)が決まった私は、早速(さっそく)、ダイガクに天然(てんねん)ゴムと(ふね)の研究室を開設(かいせつ)していた。

 そのように複数(ふくすう)の研究を同時(どうじ)進行(しんこう)して大丈夫(だいじょうぶ)かと思うかもしれないが、優秀(ゆうしゅう)な研究者が十分に(そだ)ってきているため、なんら問題(もんだい)はない。

 (わたし)自身(じしん)方向性(ほうこうせい)指示(しじ)進捗(しんちょく)のチェックだけを(おこな)っておけば、後はキョウジュたちが頑張(がんば)って進めてくれるのだ。

 天然(てんねん)ゴムの研究室では加硫(かりゅう)具体的(ぐたいてき)な手法を研究し、(ふね)の研究室では(こう)鉄製(てつせい)中型(ちゅうがた)(せん)開発(かいはつ)目指(めざ)すことにしていた。

鋼鉄(こうてつ)(ふね)が水に()くのですか?」

 担当(たんとう)のキョウジュに、そのような質問(しつもん)を受けていた。

 そこで、私は浮力(ふりょく)についての基礎的(きそてき)説明(せつめい)(おこな)うことにした。

 物体(ぶったい)を水に(しず)めると、本来(ほんらい)、そこにある水を()しのけることになる。そして、()しのけた水の分だけ(かる)くなる。

 これが浮力(ふりょく)原理(げんり)であり、アルキメデスの原理(げんり)とも()ばれる。

「つまり、重たい(こう)鉄製(てつせい)(ふね)であったとしても、中を空洞(くうどう)にして()しのける水の(りょう)を増やせば、十分に水に()くようになるのです」

 このように、私は説明(せつめい)をしていた。

 ただ、実際(じっさい)(ふね)を作るとなると、簡単(かんたん)転覆(てんぷく)しないように重心(じゅうしん)を下に持ってくるための重りが必要になってきたり、強度(きょうど)確保(かくほ)するための骨組(ほねぐ)みが必要だったりと、いろいろと試行(しこう)錯誤(さくご)予想(よそう)される。

 このあたりの構造(こうぞう)(かん)する部分(ぶぶん)については、現在(げんざい)木製(もくせい)(ふね)技術(ぎじゅつ)応用(おうよう)できるとは言え、(あたら)しい素材(そざい)で作る(ふね)にそのまま使えるとも思えないからだ。

 そして、ここで、担当(たんとう)のキョウジュが追加(ついか)質問(しつもん)をしてきた。

「それで水に()くのは分かりました。ですが、それだけ重たくなる(ふね)を、いったいどうやって動かすのですか?」

 それに対し、私は簡潔(かんけつ)に答えを()べる。

「『スクリュー』ですね」

「それはどのようなものですか?」

水道管(すいどうかん)圧力(あつりょく)(くわ)えるために使っている水を(いち)方向(ほうこう)(なが)(はね)があります。あれを応用(おうよう)して、(ふね)推力(すいりょく)とするのです」

 こうして、スクリューも(ふく)めた(あたら)しい(ふね)開発(かいはつ)も始まった。


 これは少し先の話になる。

 やがて完成(かんせい)した(ふね)は、私にとっては小型(こがた)(せん)に入る程度(ていど)の大きさであったのだが、(りょう)で使う小舟(こぶね)しか知らないこの時代の人々にとっては、十分に大型(おおがた)(せん)になったらしい。

 しかも、船体(せんたい)鋼鉄(こうてつ)でできていることを知ると、みんな一様(いちよう)(おどろ)いていた。

 さらに、それが、()ぎ手がいない状態(じょうたい)でスイスイと進んでいく様子(ようす)を見ると、度肝(どぎも)()かれたようになっていた。

 私は島の(さと)との交易(こうえき)だけを考えていたのだが、やがてこれを使って(みなと)同士(どうし)(つな)海運業(かいうんぎょう)が始まるようになっていくのである。

 その結果(けっか)、この(ふね)を最初に利用し始めたエルベ村は、海運業(かいうんぎょう)中心地(ちゅうしんち)として次第(しだい)発展(はってん)していくことになる。

 そして、私には「海運(かいうん)の父」という、大変(たいへん)名誉(めいよ)な二つ名が増えるのであった。


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