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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第二章 魔道具職人

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第22話 初めての都市

 これまでに判明したこの世界の常識を思い返しながらゆっくりと歩いていくと、やがて私たち一行は門にたどり着いた。前世のラノベの知識から想像していたものとは違っていて、門は小さめの質素(しっそ)なものがついているだけで、誰も並んでいる様子(ようす)がない。

 その事をアレンさんに指摘してみると、次のように答えてくれた。

「こちらの方角は自由国境地帯で、森に狩りに行くものぐらいしか出入りしないからな。西側の王都へ向かう街道沿いの門になると、かなり(にぎ)やかになるぜ」

 都市に入るための手続きが始まった。門番さんたちとアレンさんたちは顔見知りのようで、慣れた手つきで手続きが進んでいる。

「そこのアルク族は、森の隠れ里の魔石を持っています」

 アレンさんが、私の持ち物を自己申告する。

 入街(にゅうがい)(ぜい)は積み荷の一割と定められている。旅の必需品等は目こぼしされて無税になるそうだが、私の魔石のような高額商品は当然のように税金がかかる。

 私が素直(すなお)に手渡した袋を開き、中身を確認した門番さんは、なぜか目を見開き、しばらく固まった後で数を数えだした。

(数えるごとになぜか(ほほ)が引きつっていくのですけど、何かマズイものでも持ち込んだのでしょうか?)

 私は税金として十一個の魔石を収めた。どうやら端数(はすう)は切り捨てになるらしい。

 穀物等も袋やたる単位で確認されていき、必要個数を収めていく。おそらくは、手続きの簡略化のためだろう。重量単位で計算してきっちりと取り立てるような事はしないようだ。

 手続きが終わり、意気揚々(いきようよう)とリスティン王国へと足を踏み入れた私は、さっそくその洗礼を受ける。

 都市からむせ返るような悪臭が押し寄せてきて、たまらずに顔を(しか)める。

「話には聞いていましたけれども、これほどとは……」

 事前に聞いていたこの都市の平民のトイレ事情によると、壺などに用を足し、いっぱいになると、信じられないことにそのまま道に投げ捨てるのだとか。

 一応、マナーとして大通りの方向には捨てないようになっているそうだが、慣れないと上から降ってきた汚物をかぶってしまう事もあるらしい。

 都市中心部の内壁に囲まれている貴族街になると、下水道が整備されていて清潔なのだとか。ただ、平民が暮らす下町はどこもこんなものだそうだ。

 下水道を建設するためには微妙な角度等を測定する必要があり、測量するための高等数学も存在すると思われる。しかし、先端技術は全て貴族が管理していて、使い古されたものだけが下町に下賜(かし)されるらしい。

 先端技術を持つ技術者は、名誉貴族として貴族に準じた扱いを受ける。

 そのため、爵位を継承できない次男以下の貴族子弟たちは、必死に勉強して技術を習得して名誉貴族になるか、騎士団に入るらしい。

 私を馴染(なじ)みの宿屋まで案内してくれたアレンさんは、そのまま私の宿泊料も前払いで支払ってくれた。

「今の積み荷を売り払ったらしばらく自宅でゆっくりするから、後で魔石の換金場所なんかを教えてやるよ」

 あまりの悪臭から気分が悪くなっていた私は、それにお礼を言うこともできず、そのまま案内された自室のベッドに仰向(あおむ)けになって転がる。

 そんな私の様子(ようす)が心配になったのか、後ろをついてきてくれていたアレンさんが言う。

「こればかりは、慣れる以外に方法がないな」

 そう言って、苦笑いしながら、小遣いとして一枚の小銀貨を渡してくれる。

「これを持って、気分転換に観光でもして来いよ」

「何から何までお世話になります」

 私が絞り出すようにしながらもかろうじてお礼を言うと、アレンさんは気にするなと言いながら笑顔になる。

「坊主には、長い間、かなり(もう)けさせてもらったからな。これくらいは、サービスさせてくれ」

 アレンさんが神々(こうごう)しすぎて、(おが)みそうになる。


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