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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第二章 魔道具職人

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第21話 傭兵と冒険者

 私は街道を歩きながら、前方に(そび)え立っているガルムの都市の街壁をぼんやりと(なが)めている。

 あの壁を越えたらリスティン王国の領土となり、私の小さな冒険のプロローグが終わり、ようやく本編が始まるのだ。

 ここまでの旅路で、私は周囲を質問攻めにしていた。私のあまりにもな世間知らずっぷりに、周囲は(あき)れかえってしまっていた。

「だからこそ、常識のギャップを埋めたいのです」

 そのような私の説明にみんな納得してくれて、いろいろと丁寧(ていねい)に教えてくれていた。

(傭兵ってもっと怖いイメージがありましたけれども、みなさんとてもいい人たちでほっこりします)

 前世のラノベの知識から、私は王国に到着したらいわゆる冒険者になろうと思っていた。だが、ここでもかなりの常識のズレを見せていた。

 この世界で冒険者と言えば、古代魔法文明時代の遺跡を探したり、発掘作業をしたりする人たちの事だった。

 これは、ただの考古学上の学術的興味というだけでなく、実益(じつえき)もあるのだとか。

 遺跡では、古代魔法文明時代の魔道具がまれに発見される。これは、この時代だと再現できないロストテクノロジーになっていて、仮に再現できたとしても、かなり巨大なものになるらしい。

 鉄板等に魔法式を刻み込み、魔力を通しやすい金属で配線し、魔石の魔力を使って動作するという基本構造自体は同じものになっている。

 古代魔法文明のものを再現する上で一番の問題になってくるのが、魔法式のプレートの部分だ。

 このプレートに刻まれている文字が、人力ではとても削り出せないほどの細かすぎる微細(びさい)加工(かこう)になっており、これが現代で作ると巨大化する主な原因だそうだ。

 それでも、目を皿のようにして刻まれている魔法式を書き出せば、現代では失われてしまっている魔法式が数多く見つかるため、古代魔法文明時代の魔道具は、ガラクタでも恐ろしく高値(たかね)で王家が買い取ってくれるのだとか。

 一攫千金(いっかくせんきん)を夢見る人の仕事のようだ。

 このプレートに刻まれている魔法文字は、時代が後になるほどどんどん小さくなっていき、後期古代魔法文明時代のものになると、どんなに目を()らしても見えないそうだ。

 それでも、後期古代魔法文明時代のものの方が明らかに複雑なので、いつか解析できたら大きく発展できると期待されていて、王家がやはり、高値(たかね)で引き取ってくれるらしい。

 これらの事を興奮した様子(ようす)で、やや早口になりながら説明してくれたのは、護衛の傭兵さんたちの中で一番ガタイのいいドルトさんだった。

 発掘資金を稼ぐため、今は傭兵稼業で貯蓄しているのだとか。

 ガタイが良すぎて考古学者にはとても見えないのだが、学者はだいたいにおいて変人ぞろいなので気にしない。

 私の考えていた冒険者に一番近いのは、傭兵になるらしい。

 この時代の傭兵は、人間同士で戦争しない。自由国境地帯が間にあるため、そもそも国同士での戦争が起こらない。軍隊が隊列を組んで魔物の領域を突破するのは、ほぼ不可能だろう。

 そのため、現代の傭兵は領主や国王に(やと)われて、定期的に騎士団と協力して魔物の間引きを行うのが主な業務になる。

 貴族の軍隊である騎士団は数が少ないため、騎士たちは傭兵集団の指揮官として配置される。

 傭兵は基本的に強いほど出世しやすくなるため、仕事がない時は、魔物の領域のできるだけ深いところに(もぐ)り、腕を磨くついでに魔石や希少な素材を売って日銭を稼ぐ。

 強い魔物ほど大きな魔石が取れるため、高く売れる。

 魔石は基本的にバッテリー扱いだが、里のものみたいに、魔力をわざわざ込めるような事はあまりしていなくて、最初から魔石に含まれている魔力を利用している。

 これは、魔物肉が安く提供されているのと同じ理由による。つまり、魔物が大量に狩られているため、基本的に供給(きょうきゅう)過剰(かじょう)になっているからのようだ。

 大きな魔石は含まれている魔力も多く、設置スペースをあまり考えなくてもいい、大型の貴族用の魔道具向けとして人気が高い。そのため、こちらはある程度高額で取引されているのだとか。

 それに対し、里から産出される魔石が高値で取引されているのは、小さい魔石であるにもかかわらず含有魔(がんゆうま)力量(りょくりょう)が非常に多く、省スペースの小型の魔道具になるからのようだ。

 話に聞いた限りでは、いわゆる冒険者ギルドのような便利な互助(ごじょ)組織(そしき)は存在しない。

 ただ、傭兵団同士には横の(つな)がりがあるため、商人の護衛依頼等は、お互いに情報を交換しあって依頼を融通(ゆうずう)しあう慣例のようだ。


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