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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第十二章 進む近代化

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203/230

第203話 夢の摩天楼

 セリアの結婚式(けっこんしき)から、二年ほどの時が経過(けいか)していた(ころ)

 機関車(きかんしゃ)の研究も順調(じゅんちょう)(すい)()していて、現在では実物大の試作(しさく)一号機(いちごうき)を使い、問題の洗い出しと改良(かいりょう)が進められている。

 また、最近になって、セリアが出産(しゅっさん)していた。

 生まれた子供は男の子で、後にバートと名付(なづ)けられた。セリアに()(しず)かに()く赤ちゃんだ。

(両親のどちらに()ても、誠実(せいじつ)実直(じっちょく)な青年に成長しそうですね)

 私はそんな感想(かんそう)(いだ)いていた。

 そして、今日。ダイガクで定期(ていき)研究(けんきゅう)発表会(はっぴょうかい)が開かれている。

 そのうちの一つの研究(けんきゅう)発表(はっぴょう)が始まってすぐに、私はその内容(ないよう)釘付(くぎづ)けとなる。

「この新しい建材(けんざい)は、(おも)石灰石(せっかいせき)粘土(ねんど)から作られています。これは時間を置くと(かた)まる性質(せいしつ)がありますので、レンガの間に()りつけますと、しっかりと固定(こてい)されるようになり……」

 私はここまでの説明(せつめい)を聞いて、すぐにピンとくるものを思いつき、無意識(むいしき)のうちにガタリと音を立てて立ち上がってしまっていた。

名誉(めいよ)学長(がくちょう)? どうされたのですか?」

「す、素晴(すば)らしい……」

 感動(かんどう)に打ち(ふる)える私の姿(すがた)に、会場中(かいじょうじゅう)視線(しせん)が集まってしまっていたが、そんなことに気を回す余裕(よゆう)(まった)くなかった。

「これは素晴(すば)らしい発見(はっけん)ですよ!!」

 思わず大声で(さけ)んでしまった私の(いきお)いに()され、発表者(はっぴょうしゃ)のキョウジュはのけぞりながら確認(かくにん)を取る。

「ど、どのように素晴(すば)らしいのでしょうか?」

間違(まちが)いありません! これは『セメント』です! 建築(けんちく)歴史(れきし)が変わる大発見(だいはっけん)ですよ!!」

「せ、せめんとですか?」

 私はここでようやく、困惑(こんわく)している発表者(はっぴょうしゃ)様子(ようす)に気づくことができた。よくよく周囲(しゅうい)見渡(みわた)してみれば、みんな一様(いちよう)困惑(こんわく)(かく)しきれていない。

 私はここで一つ深呼吸(しんこきゅう)をして、自分を落ち着かせた。

「すいません……。あまりにも素晴(すば)らしい発見(はっけん)でしたので、興奮(こうふん)(おさ)えられませんでした」

「これの何がそんなに素晴(すば)らしいのでしょうか?」

「この技術(ぎじゅつ)発展(はってん)させていけば、天高く(そび)え立つような、巨大(きょだい)建造物(けんぞうぶつ)も作れるようになるのです」

 私は意識(いしき)して気分(きぶん)を落ち着かせ、なるべくまくし立てないように気を()けた。

 しかし、それでも興奮(こうふん)(かく)しきれない私の様子(ようす)に、若干(じゃっかん)、引き気味(ぎみ)になりながら発表者(はっぴょうしゃ)の彼が発言(はつげん)を続ける。

「これに、そこまでの強度(きょうど)はないと思うのですが……」

「ええ、ええ。これ単体(たんたい)ではそうでしょう。ですが、これを材料(ざいりょう)とした『コンクリート』を作れば、建築(けんちく)資材(しざい)として非常(ひじょう)優秀(ゆうしゅう)なものになります」

「は、はぁ?」

「あなたも言っていた通り、これ単体(たんたい)であれば、レンガなどの石材(せきざい)(つな)ぎにしか使えないでしょう。ですが、これに(すな)砂利(じゃり)()ぜると、それらを強固(きょうこ)(せつ)(ごう)するようになりますので、とても頑丈(がんじょう)(かべ)(かん)(たん)に作れるようになります」

 コンクリートさえ作れたら、様々(さまざま)なものの建築(けんちく)容易(ようい)になる。

 単純(たんじゅん)に使ったとしても、将来的(しょうらいてき)建設(けんせつ)必要(ひつよう)であると思われる第三街壁(だいさんがいへき)が、今よりもかなり素早(すばや)く低コストで作れるようになるだろう。

 下水道(げすいどう)施設(しせつ)なども、もっと簡単(かんたん)拡充(かくじゅう)ができるようになると考えられる。

 (ゆめ)が広がる研究(けんきゅう)内容(ないよう)だ。

「そして、その骨組(ほねぐ)みとして(てつ)内部(ないぶ)()()むようにすると、『鉄筋(てっきん)コンクリート』も作ることができるようになります。非常(ひじょう)頑丈(がんじょう)(かべ)(ゆか)容易(ようい)に作れるようになりますので、天に(とど)かんばかりの高層(こうそう)建築(けんちく)可能(かのう)になるはずです」

 鉄筋(てっきん)コンクリートがあれば、高層(こうそう)ビルもやがては作れるようになるだろう。

「ただ、『セメント』や『コンクリート』の研究は(おく)が深いのです。ほんの少し(しつ)が下がるだけでも強度(きょうど)に差が出てきてしまいます。ですので!!」

 私は思わずバンッと強く(つくえ)(たた)き、(いきお)いよく説明(せつめい)を続ける。

「私の持てる(かぎ)りの権限(けんげん)とコネを最大限(さいだいげん)活用(かつよう)し、巨額(きょがく)研究(けんきゅう)開発費(かいはつひ)用意(ようい)して見せましょう!! 最優先(さいゆうせん)研究(けんきゅう)課題(かだい)として、領主のイサミに、私が、直接(ちょくせつ)、ねじ()みますので、頑張(がんば)って研究を継続(けいぞく)してくださいね!!」

 話が、突然(とつぜん)、大きくなってしまったため、みんな(おどろ)いていたのだが、そんなことは些細(ささい)なことだろう。

「さあ、この都市をもっともっと発展(はってん)させましょう! 目指(めざ)せ『摩天楼(まてんろう)』! 目指(めざ)せ『コンクリートジャングル』! なんとも(ゆめ)が広がる研究ではないですか!!」

 私のあまりにもなテンションの上がり具合(ぐあい)に、周囲(しゅうい)の人たちは、ザワザワと落ち着きがなくなり始めていた。

「マテンロウ? じゃんぐる? (だれ)意味(いみ)を知っているか?」

 そんな会話(かいわ)がヒソヒソと()わされていたのだが、興奮(こうふん)しきってしまった私には、もはや聞こえてはいなかった。


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