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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第八章 学校教育の推進

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第154話 あすふぁると

 セネブ村から帰還(きかん)した私はそのままダイガクへと直行し、学生たちに手伝(てつだ)ってもらいながら原油(げんゆ)研究棟(けんきゅうとう)まで運び入れた。

 それから、連絡(れんらく)を回して手の()いているキョウジュたちに集まってもらい、研究者を(つの)るための説明を始めた。

「この原油(げんゆ)は、様々なものに応用できる宝箱(たからばこ)です」

 私は頭の中で応用(おうよう)範囲(はんい)を思い()かべ、何が彼らに最も受け入れられやすいだろうかと考えを進めていく。

「例えば、丈夫(じょうぶ)透明(とうめい)な上に割れない容器(ようき)が作れるようになります。また、これを使えば、物理学部で教えている『コンデンサ』などの『電気』部品を動かすための『電力』を、大規模(だいきぼ)に作れるようになります」

 そのように説明を加えていきながら手ごたえを確認していると、数人の研究者が興味(きょうみ)をひかれ始めたようだ。

「ただ、私がすぐにでも始めたいのは『アスファルト』の研究です。これができますと、(たい)らで頑丈(がんじょう)な道が比較的(ひかくてき)安価(あんか)建設(けんせつ)可能(かのう)になります。そうすると、物流(ぶつりゅう)の速度が飛躍的(ひやくてき)に上昇しますので、この都市がさらに発展(はってん)します」

 その後、名乗(なの)りを上げてくれた数人の研究者に、あすふぁるとを作るための基礎的(きそてき)内容(ないよう)を説明してゆく。

 あすふぁるとを作るためには、まずは数種類の油を分離(ぶんり)しなくてはならない。これの一般的な方法には、蒸留(じょうりゅう)の一種である分留(ぶんりゅう)と呼ばれる方法が使われる。

 (くわ)しい温度までは(おぼ)えていないが、温度の低い方から順番にガソリン、灯油(とうゆ)軽油(けいゆ)(ちゅう)(しゅつ)され、残ったものが重油(じゅうゆ)として船舶(せんぱく)を動かすための燃料(ねんりょう)などになり、そこからあすふぁるとが作れるはずである。

 また、この分留(ぶんりゅう)に必要になってくる温度計としては、現在、(すで)にある水銀(すいぎん)温度計(おんどけい)が使えるはずだ。

 今の圧力(あつりょく)が加えられていない水銀(すいぎん)温度計(おんどけい)でも、確か三百五十度くらいまでは計測(けいそく)できたはずだと記憶(きおく)しているので、なんとか軽油(けいゆ)分留(ぶんりゅう)まではできるのではないかと考えている。

 私は(わす)れてしまっていたのだが、正確な分留(ぶんりゅう)の温度は以下のようになる。

 三十度から百八十度でガソリン。

 百七十度から二百五十度で灯油(とうゆ)

 二百四十度から三百五十度で軽油(けいゆ)である。

 これに対し、圧力(あつりょく)の加えられていない水銀(すいぎん)温度計(おんどけい)計測(けいそく)できる範囲(はんい)は、マイナス三十度から三百六十度である。

 つまり、ギリギリではあるが分留(ぶんりゅう)が可能である。

 これらのうち、ガソリンは揮発性(きはつせい)が高く発火(はっか)しやすいため、しばらくは使い道がないと考えられる。

 ガソリンエンジンが作れたらベストだが、今後の課題(かだい)として保留(ほりゅう)とすることにした。

 灯油(とうゆ)については、ランプ用の油としても使えるし、いずれは石油ストーブも作ってみたい。

 また、現在は室温計(しつおんけい)としてしか使われていないアルコール温度計に使えば、もっと広い範囲(はんい)でも計測(けいそく)できるようになるため、水銀(すいぎん)温度計(おんどけい)よりも安全な温度計として普及(ふきゅう)させることもできるだろう。

 軽油(けいゆ)の使い道も要研究(ようけんきゅう)である。いずれはディーゼルエンジンを作ってみたいと考えているが、これも今後の課題(かだい)だろう。

 あすふぁるとの作成のための基礎(きそ)研究(けんきゅう)をダイガクの研究者たちに任せ、私は実際(じっさい)建設(けんせつ)する時に必要になってくる大型のローラーの魔道具などの研究を開始した。

 今後の大きな発展(はってん)期待(きたい)できる研究(けんきゅう)内容(ないよう)に私の(むね)高鳴(たかな)り続け、寂寥感(せきりょうかん)を感じる(ひま)がないほどに私は研究に没頭(ぼっとう)していった。


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