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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第八章 学校教育の推進

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第151話 五代目領主カズシゲ

 それから、しばらくの時が流れ()った(ころ)

 クリスさんがいつまでもこの都市に滞在(たいざい)を続けると、島の生活に支障(ししょう)が出るであろうという判断(はんだん)の元、毎日楽しそうな彼女をなんとか説得(せっとく)して島まで送り届けることにした。

 最初はかなりの難色(なんしょく)(しめ)していたクリスさんだったが、私が一緒(いっしょ)に旅をして島の里まで送り届けることを条件に、どうにか了承(りょうしょう)してもらえた。

 ちなみに、クリスさんの説明(せつめい)によると、今現在の島での儀式(ぎしき)は先祖返りがいない時代の慣例(かんれい)(のっと)り、最長老が代行しているらしい。

 私はクリスさんにある程度(ていど)まとまった金額の入った財布(さいふ)(かわ)(ぶくろ)を渡していて、帰りの道中で実際(じっさい)に使ってもらい、お金の(あつか)い方を(まな)んでもらうことにした。

 なんと、私の領地に来るまでの間は、野宿(のじゅく)しながらだったそうだ。

 クリスさんほどの美女が一人で野宿(のじゅく)していて、よく盗賊(とうぞく)などの不埒(ふらち)ものに(おそ)われなかったものだと、私はひどく(おそ)ろしくなってしまった。

 そのため、乗合(のりあい)馬車(ばしゃ)の利用方法や、宿屋(やどや)宿泊(しゅくはく)方法(ほうほう)なども合わせて説明を加え、私に会いたくなったら遠慮(えんりょ)なくこのお金を使ってくるようにと、(かさ)ねてお願いしていた。

 そのようにしながら旅は順調(じゅんちょう)に進んでいき、やがて島の里に到着(とうちゃく)した。

 私はすぐにでも引き返すつもりだったのだが、里のみんなに引き()められたため、数日だけ滞在(たいざい)することを決めた。

 そして、帰還の日。

 クリスさんはとても(さみ)しそうな顔をしていたのだが、渡したお金を使っていつでも遊びに来てくださいと伝えると、とたんに笑顔(えがお)になって送り出してくれた。

 それからは、私が島の里を訪問(ほうもん)するのではなく、ふらりとやって来たクリスさんを私が出迎(でむか)え、しばらくしてから島の里へ送り届けるというパターンが定着していった。

 今度は一人となってガイン自由都市までの旅を続け、領主館まで(もど)ってくると、シゲルとカズシゲの親子が待ち(かま)えていた。

 なんでも、領主の交代(こうたい)をするつもりであったのだが、初代である私の目の前で領主の引継(ひきつ)ぎを行うのが、いつの間にか一族の慣例(かんれい)として定着(ていちゃく)していたのだそうだ。

 その引継(ひきつ)ぎの場で、かつてのエルクが伝えた懐かしい言葉を、シゲルが再び次代のカズシゲへと伝えていく。

「いいかい、カズシゲ。ふんぞり返っているだけの貴族たちの言葉には、耳を()さなくても(かま)わないけれども、税金(ぜいきん)(おさ)めてくれる領民たちの声には、よく耳を(かたむ)けるようにしなさい」

 その言葉に対し、カズシゲは大きく(うなず)きを返し、了承(りょうしょう)する。

「はい、お父様」

「そして、何か(こま)ったことがあれば、大おじい様に相談(そうだん)するようにしなさい」

「お父様、それも一族の家訓(かくん)ですか?」

 そんなカズシゲの質問(しつもん)に対し、シゲルは笑顔(えがお)になって(うなず)き、肯定(こうてい)する。

「もちろんだよ。これは、お前のひいおじい様が、おじい様に領主を引き()ぐ時からずっと語り()がれている内容だよ」

「そうなのですか? 大おじい様」

 私は苦笑気味(くしょうぎみ)になりながら肯定(こうてい)する。

「そうですね……。二代目領主のエルクから、三代目領主のエストへと引き()ぐ時に、そう言われました」

 そうすると、カズシゲは笑顔(えがお)になって(うなず)き、抱負(ほうふ)(かた)る。

「では、私も一族の伝統に(のっと)り、大おじい様を(たよ)りにしますね。そして、私の代でも、この平民の首都をさらに発展(はってん)させていきたいと思います」

 このようにして、引継(ひきつ)ぎを終えたシゲルは隠居(いんきょ)生活(せいかつ)を始め、カズシゲが五代目の領主として就任(しゅうにん)した。


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