表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第八章 学校教育の推進

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

144/159

第144話 れんず

 エストを笑顔(えがお)見送(みおく)ることに成功してから、一年ほどが経過(けいか)した(ころ)

 ようやく、ガイン自由都市を(かこ)街壁(がいへき)が完成していた。

 レオンさんが建設(けんせつ)提案(ていあん)してから実に二十一年の歳月を必要とした、一大プロジェクトが完了した。

 発案者(はつあんしゃ)のレオンさんは(すで)に五十九歳になっており、その完成を見届(みとど)けたタイミングで職を()し、隠居(いんきょ)生活(せいかつ)を始めた。

 また、この(ころ)になると、カズシゲも二十三歳になっており、ミリアさんという女性を(つま)として(めと)った。

 ミリアさんは少しおとなしい感じの女性で、活動的(かつどうてき)なカズシゲととてもお似合(にあ)いの知的な女性だ。

 ただ、このことで妹のリズが()ねてしまい、しばらくはお(よめ)さんに焼きもちを焼いてしまっていた。

 お兄ちゃん子のリズには悪いが、リズも(すで)二十歳(はたち)になっているため、そろそろ、お婿(むこ)さんを探して欲しいと思っている。

 そして、この(ころ)になると、ダイガクで教えている内容(ないよう)が非常に高度であると(うわさ)が広まっていた。

「ガイン公立ダイガクでは、お貴族様でも知らないような内容(ないよう)を教えてくれるらしいぞ?」

 そのような評判(ひょうばん)になっていた。

 貴族たちは、そんな馬鹿(ばか)なと、一笑(いっしょう)()していたが、それが事実であることを知っている私は、肯定(こうてい)否定(ひてい)もせず、ただ曖昧(あいまい)微笑(ほほえ)んで誤魔化(ごまか)していた。

 私は学長としていろいろと(いそが)しく(はたら)いており、そんな最中(さなか)、レンズの研究者を(さが)してみようと思い立った。

 物理学部で屈折(くっせつ)法則(ほうそく)は教えているため、レンズについての基礎(きそ)知識(ちしき)(すで)にある。これを利用すれば、顕微鏡(けんびきょう)が作れるのではないかと思いついたのだ。

 もし、顕微鏡(けんびきょう)が作れたとすると、病原(びょうげん)(きん)も見えるようになるため、効果的(こうかてき)な薬の開発も容易(ようい)になるのではないかと考えられる。

 ただ、レンズの焦点(しょうてん)距離(きょり)などは曲率(きょくりつ)半径(はんけい)()ばれるものから求められるのだが、残念(ざんねん)ながら、その細かい公式を(わす)れてしまっている。

 よって、試行(しこう)錯誤(さくご)が必要になってくると考えられるため、専門の研究者を募集(ぼしゅう)して研究してもらうことにした。

 このような経緯(けいい)採用(さいよう)した研究者は、ルルさんという小人族(こびとぞく)の女性だった。

 外見は十歳を少し上回る程度(ていど)にしか見えないが、立派(りっぱ)な成人女性である。黒髪(くろかみ)をショートにした、少しボーイッシュな素敵(すてき)な女性である。

 彼女を採用(さいよう)したのは、実家(じっか)がガラス細工(ざいく)工房(こうぼう)経営(けいえい)しており、ガラス加工の技術を最初から持っており、手先が器用(きよう)だったためである。

 ルルさんが、独特(どくとく)語尾(ごび)を使って質問(しつもん)してくる。

「学長先生、まずは何から始めるッスか?」

「とりあえず、私が自作した研磨機(けんまき)改良(かいりょう)からですかね」

 モーターの魔道具を使い、酸化(さんか)(てつ)研磨剤(けんまざい)に使って自作した、簡単(かんたん)研磨機(けんまき)の改良からお願いする。

 現代の地球では、酸化(さんか)セリウムという物質が研磨剤(けんまざい)として(おも)に利用されているのだが、私はそれを鉱物(こうぶつ)状態(じょうたい)で見分けることができない。

 そのため、大昔(おおむかし)から利用されていた酸化(さんか)(てつ)(もち)いたものを用意していた。

「私にとって、ガラス細工(ざいく)(せん)門外(もんがい)になりますので、この研磨機(けんまき)適当(てきとう)に作ってしまったものになります。これの形状(けいじょう)回転(かいてん)速度(そくど)など、思いついた改良点(かいりょうてん)を教えてください」

 ルルさんはフンフンと、(うなず)きながら聞いてくれている。私は続けて、改良(かいりょう)の注意点を()べる。

形状(けいじょう)は扱いやすいように好きに変更(へんこう)してもらって(かま)いませんが、回転(かいてん)速度(そくど)など、魔法式の変更(へんこう)が必要な部分については、私に相談(そうだん)してくださいね」

了解(りょうかい)ッス」

 そうやって、顕微鏡(けんびきょう)の研究を(まか)せた。

 また、小さなものを拡大(かくだい)して見せるという意味において、望遠鏡(ぼうえんきょう)も同じ原理(げんり)になってくるため、その開発も同時に依頼(いらい)しておいた。


 これは少し先の話になる。

 ルルさんは、私の期待(きたい)(こた)え、十年がかりでケンビキョウとボウエンキョウの開発を成功させた。

 ケンビキョウを使えば、肉眼(にくがん)では見えなかった後期古代魔法文明時代の魔道具の魔法式が見えるかもしれないと気づいた貴族がいたようで、王族が欲しがっているという(うわさ)が広まっていた。

 しかし、私やガイン自由都市の住民たちは、完全に無視(むし)を決め込んでいた。

 (ふたた)戦火(せんか)(まじ)えることになるかもと考える人もいたが、ガイン自由都市軍の精強(せいきょう)さが(すで)に平民たちの間で広く知られるようになっていたため、心配するものは(だれ)もいなかった。

 戦争がしたかったらいつでもどうぞ、というスタンスで、みんな待ち(かま)えていた。

 結局(けっきょく)のところ、戦争は()こらず、どうやらガイン自由都市の販売店(はんばいてん)から、平民を使って購入(こうにゅう)したらしいという(うわさ)が広まっていくのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ