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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第七章 ガイン自由都市

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第131話 上納金

 えあがんの配備(はいび)が始まって、少しばかりの時が()()った(ころ)

 実弾(じつだん)射撃(しゃげき)訓練(くんれん)視察(しさつ)(おとず)れていたシゲルが、目を(かがや)かせながら私に話しかけてきた。

「さすがは、ひいおじい様ですね。これで、我が軍は、宣言(せんげん)通りに最強になったのではありませんか?」

 私は大きく(うなず)きを返し、肯定(こうてい)する。

「ええ。私もそう思います」

 ここで、シゲルはある意外な提案(ていあん)を始めた。

「そうなってくると、いっそのこと、王国に(おさ)めている上納金(じょうのうきん)()めてしまいませんか?」

 上納金(じょうのうきん)というのは、各貴族家が集めた税金(ぜいきん)の中から一定(いってい)割合(わりあい)国庫(こっこ)(おさ)める制度のことである。

 私は少し首を(かし)げ、それに否定的(ひていてき)な意見を()べる。

「しかし、それをやってしまうと、王国と全面(ぜんめん)戦争(せんそう)になってしまいますよ?」

「でも、ひいおじい様は、()けるとは思っていないのですよね?」

 私はそれに(うなず)きを返し、それからその意味することを(かた)る。

「もちろん、()けはしないでしょう。ですが、その場合、シゲルが(あたら)しい王様になってしまいますよ? あなたが王様になりたいのでしたら、私は全力でサポートしますが」

 私がそう(ねん)を押すと、シゲルはふるふると首を()って前言を撤回(てっかい)する。

「とんでもない! 私はできることなら、領主の地位も優秀(ゆうしゅう)な平民に()わって欲しいぐらいなのに、王様なんて面倒(めんどう)な立場はごめんこうむりますね」

 私はそれに微笑(ほほえ)みを返し、同意する。

「私も、国王の一族の初代なんて地位はごめんこうむりますから、シゲルの気持ちは良く分かります」

 そうやって、私たちは苦笑(くしょう)しあった。

「では、上納金(じょうのうきん)はこれまで通り、王国に(おさ)めますね」

 シゲルはそうやって現状(げんじょう)維持(いじ)を決定すると、私にある質問をしてきた。

「でも、ひいおじい様は、この状況(じょうきょう)がずっと続くとは考えていないのでしょう?」

「ええ、もちろん」

「それは、どのくらいで変わりますか?」

「早くて、後二百年といったところでしょうか」

 その年月の長さに、シゲルはとても(おどろ)いた表情(ひょうじょう)を見せる。

「ひいおじい様には、とても遠大(えんだい)計画(けいかく)があるのですね……。できれば、その計画(けいかく)の一部でも聞かせてもらえませんか?」

 その質問を受け、私は(あご)に手を当ててしばらく考えを(めぐ)らせ、野望(やぼう)の一部を(かた)ることを決意した。

「私は、この国を、平民たちが自分自身で(おさ)めていく国にしたいのです」

 私のその返答を聞いたシゲルは、目を見開(みひら)いて(おどろ)いた様子(ようす)で確認を取る。

「そのようなことが可能なのですか?」

 私はそれに大きく(うなず)きを返し、肯定(こうてい)する。

「ええ。ただ、そのためには、もっと平民の学力(がくりょく)を上げる必要があります。シゲルは協力してくれますか?」

 私がそう言うと、シゲルは大きく(うなず)いて賛同(さんどう)してくれる。

「もちろんです。そうなってくれれば、私の子孫たちも領主という重荷(おもに)から解放(かいほう)されますからね」

 そうやって、領主の了解(りょうかい)()た私は、さらに高度な学問(がくもん)を教えるための学校の建設(けんせつ)計画(けいかく)を、前倒(まえだお)しで推進(すいしん)するのであった。


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