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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第七章 ガイン自由都市

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第130話 えあがん

 シゲルが新領主に就任(しゅうにん)してから、一年ほどが経過した(ころ)

 ガイン自由都市軍の兵士たちはカント将軍による苛烈(かれつ)な訓練に()()き、かなり精強(せいきょう)な軍団に変貌(へんぼう)()げていた。

 私は、そんな彼らをさらに強くできないかと、思案(しあん)を続けるようになっていた。

 そうやってしばらく考え続けた結果、思い切って(じゅう)を開発することを決意(けつい)した。

 私は無意識(むいしき)のうちに、前世の知識(ちしき)を武器に転用(てんよう)することを()けていたように思う。しかし、あちらから仕掛(しか)けてきた以上、遠慮(えんりょ)手加減(てかげん)一切(いっさい)無用(むよう)だろう。

 最初に手を()けたのは、石弾(せきだん)という、石の(つぶて)発射(はっしゃ)する魔法を用いた魔道具開発である。

 そのまま使えるとは最初から考えていなかったが、作ってみると、やはり、弾速(だんそく)(おそ)すぎて使い物にならなかった。

(やはり、魔道具形式の魔力制(まりょくせい)御力(ぎょりょく)では、このあたりが限界(げんかい)ですか……)

 そのように考えた私は、魔力(まりょく)制御力(せいぎょりょく)(たよ)らない方式を考え始めた。

(一番いいのは、火薬(かやく)を開発してしまって、(なまり)(だま)発射(はっしゃ)する本物の(じゅう)を開発することです。しかし、それだと技術的に()えなくてはならないハードルが高すぎますね)

 しばらく(なや)んだが、前世のおもちゃの(じゅう)を思い出したとき、突破(とっぱ)(こう)が見えた。

 それは、以下のような手順(てじゅん)弾丸(だんがん)発射(はっしゃ)する方法だ。

 第一(だいいち)段階(だんかい)として、風魔法を発動させ、銃身(じゅうしん)後部(こうぶ)圧縮(あっしゅく)空気(くうき)生成(せいせい)する。

 第二(だいに)段階(だんかい)として、圧縮(あっしゅく)空気(くうき)の前方に石弾(せきだん)の魔法で弾丸(だんがん)形成(けいせい)する。この時、弾丸(だんがん)は前世の銃弾(じゅうだん)の形にしておく。研究は必要だろうが、この程度(ていど)であれば、魔道具形式の魔力制(まりょくせい)御力(ぎょりょく)でも問題なく作れると判断(はんだん)している。

 第三(だいさん)段階(だんかい)として、圧縮(あっしゅく)空気(くうき)(かい)(ほう)し、弾丸(だんがん)発射(はっしゃ)する。

 つまりは強力なエアガンである。

 この方式であれば構造(こうぞう)単純化(たんじゅんか)できるため、工作(こうさく)難易度(なんいど)はそれほど高くないと思われる。

 しかし、命中(めいちゅう)精度(せいど)を上げるために、銃身(じゅうしん)内部(ないぶ)にライフリングと呼ばれる渦巻(うずま)き状の(みぞ)を作るところだけはこだわることにした。

 こうすることによって弾丸(だんがん)が進行方向に対して垂直(すいちょく)高速(こうそく)回転(かいてん)するようになり、直進性(ちょくしんせい)()すのである。

 これは、ジャイロ効果(こうか)()ばれる原理(げんり)である。

 ゆっくり回っているコマが不安定(ふあんてい)なのに対し、高速(こうそく)回転(かいてん)しているコマが安定(あんてい)して直立(ちょくりつ)するのと同じ原理(げんり)になる。

 勘違(かんちが)いしている人が多いのだが、回転させるのは弾道(だんどう)を安定させるためであって、威力(いりょく)を高めるためではない。

 もしかするとそちら方向の意味もあるのかもしれないが、いずれにせよ、副次的(ふくじてき)なものだろう。

「ただ、この新兵器(しんへいき)技術(ぎじゅつ)は、絶対に(ほか)の貴族たちに(わた)すわけにはいきませんね。ここは、私一人で開発(かいはつ)製造(せいぞう)する必要があるでしょう」

 思わず(ひと)(ごと)(こぼ)れてしまうほど、思考に没頭(ぼっとう)していたようだ。

 それから試行(しこう)錯誤(さくご)をしばらく続け、ガイン自由都市軍に配備(はいび)が始まったのは、それから一年ほどがたった(ころ)だった。

 完成した「えあがん」は、拳銃(けんじゅう)ほどには小型化(こがたか)できなかったが、少し重いアサルトライフルぐらいには(おさ)まった。

 火薬(かやく)(もち)いていないため、発砲(はっぽう)()炸裂音(さくれつおん)はせず、シュッという発射音(はっしゃおん)がするだけになっている。

 発射(はっしゃ)()反動(はんどう)も思ったよりは少なくなっていて、かなり(あつか)いやすい(じゅう)になっていた。

 そして、魔道具形式であるため、引き(がね)を引いている間はループ文で()(かえ)発砲(はっぽう)するフルオート機能にも対応している。

 また、石弾(せきだん)の魔法で弾丸(だんがん)形成(けいせい)しているため、前世の(じゅう)のように(たま)補充(ほじゅう)する必要がなくなっており、魔石の魔力が続く限り連射(れんしゃ)可能(かのう)になっていた。

 さらに、ご禁制(きんせい)の私の魔石を全てのえあがんに搭載(とうさい)することによって、かなり長い間、連射(れんしゃ)可能(かのう)にもなっていた。

 ただ、石の弾丸(だんがん)であるため、(なまり)弾丸(だんがん)ほどの貫通力(かんつうりょく)はなくなっていた。そこは、長時間の連射(れんしゃ)可能(かのう)特性(とくせい)を生かし、弾幕(だんまく)でカバーすればいいだろうと判断(はんだん)している。

「これは、また、ものすごい武器を作られましたな……」

 カント将軍が、(うな)りながらこの新兵器(しんへいき)試射(ししゃ)様子(ようす)(なが)めていた。

 そんな彼に対し、私は注意点(ちゅういてん)確認(かくにん)しておく。

「しかし、だからこそ、この武器が貴族たちの手に(わた)ってしまうとこちらの被害(ひがい)甚大(じんだい)になってしまいます。打ち合わせ通り、えあがんの管理(かんり)はくれぐれも厳重(げんじゅう)にお願いしますね」

 そうやって、訓練(くんれん)の前と後でえあがんの個数を(かぞ)えるなどの管理(かんり)徹底(てってい)がなされた。

 その理由(りゆう)を兵士一人一人にきちんと説明(せつめい)していたため、彼らも真面目(まじめ)に守ってくれているようだ。

(これで、時が来れば、いつでも貴族軍を蹴散(けち)らせますね)

 私は、ガイン自由都市軍がさらに精強(せいきょう)になったことを確信(かくしん)していた。

 そして、(きた)るべき日が少しでも早まるようにと、平民の学力レベルをさらに上げる方法を考えるようになっていった。


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