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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第七章 ガイン自由都市

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第126話 ガイン自由都市軍

 それから、季節が一巡(いちじゅん)した(ころ)

 組織(そしき)再編(さいへん)(せい)を行っていたガイン警備隊は、新設(しんせつ)された軍隊として生まれ変わっていた。正式な常備軍(じょうびぐん)となったガイン警備隊は、名称(めいしょう)を「ガイン自由都市軍」と(あらた)めた。

 今日は、その設立(せつりつ)記念(きねん)式典(しきてん)が開かれている。私は演説(えんぜつ)(たの)まれていたため、壇上(だんじょう)の席に(すわ)って順番を待っている。

 やがて式典(しきてん)粛々(しゅくしゅく)と進んでいき、私は静かに演説(えんぜつ)を始めた。

「みなさんはこの国で初の、平民だけで組織(そしき)された正式な軍隊となりました。この瞬間(しゅんかん)に立ち会えたことを、私は(ほこ)りに思います」

 私はここで一呼吸(ひとこきゅう)を置いて、その意味について(かた)りかける。

「あなたたちは、平民にやっと(あた)えられた(きば)です。(だれ)からの、とは、あえて言いませんが、理不尽(りふじん)対抗(たいこう)できる武器です。そして同時に、理不尽(りふじん)から守るための(たて)でもあります」

 そして私は少し声量(せいりょう)を高め、演説(えんぜつ)を続ける。

「あなたたちは、決して負けることは(ゆる)されません! もし、あなたたちが(たお)されたその時には、この都市が、そこに住む家族が、恋人が、友人が、理不尽(りふじん)にさらされることになってしまうでしょう!」

 さらに声量(せいりょう)を高め、(なか)絶叫(ぜっきょう)するようにしながらオーバーアクション気味(ぎみ)身振(みぶ)手振(てぶ)りを加え、演説(えんぜつ)を続ける。

「ですから! あなたたちは! この国で最強の!! 精鋭(せいえい)にならなくてはなりません!! あらゆる理不尽(りふじん)退(しりぞ)け!! あらゆる理不尽(りふじん)から守る!! 最強の軍に!! ならねばならないのです!!」

 私はここで呼吸(こきゅう)(ととの)え、最後に小さく付け加えて、この演説(えんぜつ)()めくくる。

「……。いつか、(きた)るべき日のために」

 そして、私は次の演説者(えんぜつしゃ)に席を(ゆず)った。

 その人はガイン自由都市軍の初代(しょだい)将軍(しょうぐん)で、カントという人物であった。

 彼も(しず)かに演説(えんぜつ)を開始した。

諸君(しょくん)。私は、多くは語らない。ただ、少しだけ想像(そうぞう)して欲しい。(きた)るべき日に、ガイン自由都市軍の一員(いちいん)として、活躍(かつやく)する自分の姿(すがた)を」

 カント将軍もまた、少し声量(せいりょう)を高めて続きを(かた)る。

「しかし、そのためには、我々は最強の軍にならなくてはならない! おそらくその訓練(くんれん)は、想像(そうぞう)(ぜっ)する(きび)しさになるだろう。だが、私は全く心配していない。諸君(しょくん)らの目を見れば分かる。胸に熱いものがこみあげてきているのだろう? 私も同じだ!」

 そして彼は、その野太(のぶと)い声を()り上げて(かた)りかける。

「その熱さを決して忘れるな!! そして、今、私は諸君(しょくん)らに許可(きょか)を出す! (こぶし)()き上げ、大声(おおごえ)を出す許可(きょか)を!!」

 カント将軍(しょうぐん)(みぎ)(こぶし)(てん)(たか)()き上げ、絶叫(ぜっきょう)しながら演説(えんぜつ)()めくくった。

(きた)るべき日のために!! オオオオォォォォォ!!」

 彼の雄叫(おたけ)びに続けとばかりに、(いっ)兵卒(ぺいそつ)にいたるまで全員が(みぎ)(こぶし)()き上げ、雄叫(おたけ)びを上げる。

「「「オオオオォォォォォ!!」」」

 その大気(たいき)(ふる)わせる絶叫(ぜっきょう)が、天に(とど)けとばかりに何度も()き上げられる(こぶし)が、私の(むね)をも熱くする。

「オオオオォォォォォ!!」

 気づけば私も、雄叫(おたけ)びを上げていた。


 さあ、雌伏(しふく)の時の始まりだ。


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