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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第七章 ガイン自由都市

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第125話 農業の保護

 街壁(がいへき)建設(けんせつ)のための増税(ぞうぜい)が決定されてから、しばらくが経過した(ころ)

 私は、次の領地の運営(うんえい)会議(かいぎ)の場で、新たな提案(ていあん)を行っていた。

「私は、農業に補助(ほじょ)(きん)を出して作物の増産(ぞうさん)を行い、それを食料の備蓄(びちく)に回すことを議題(ぎだい)として提案(ていあん)します」

 それを聞いたエストが、真っ先に反対意見を()べ始める。

「しかし、それでは、おじい様が常々(つねづね)主張(しゅちょう)しておられる競争(きょうそう)原理(げんり)に反する事態(じたい)になりはしませんか?」

「もちろん、反しますよ」

「では、分かった上でやらねばならない理由(りゆう)があるということですね?」

 私は一つ(うなず)きを返し、肯定(こうてい)した上でその理由(りゆう)(かた)る。

「この都市は急激(きゅうげき)に大きくなりすぎました。そのため、食料の増産(ぞうさん)が間に合わず、食料(しょくりょう)自給率(じきゅうりつ)は年々下がる一方です」

 ここで、官僚(かんりょう)の一人が手を上げ、反対意見を()べる。

「ですが、(ほか)ならぬ初代様の提案(ていあん)で、入街(にゅうがい)(ぜい)導入(どうにゅう)廃案(はいあん)にしたのです。今まで通り、(ほか)の領地から輸入(ゆにゅう)すればいいのではありませんか?」

平時(へいじ)であれば、それで(かま)わないと思います。ですが、考えてみてください。貴族たちと戦争になったとき、この領地の食料を(ほか)の領地からの輸入(ゆにゅう)(たよ)っていれば、ガイン自由都市は兵糧(ひょうろう)()めにあう危険性(きけんせい)があります」

 私はゆっくりと周囲を見渡(みわた)す。

 その危険性(きけんせい)に初めて気づいたものも多かったようで、みんな真剣(しんけん)に考えてくれ始めたようだ。

食料(しょくりょう)備蓄(びちく)だけを拡大(かくだい)するのでは、問題があるのでしょうか?」

 私は大きく(うなず)いて肯定(こうてい)し、その理由(りゆう)(かた)る。

「ある程度の短期(たんき)決戦(けっせん)(のぞ)めるのであれば、それでもいいでしょう。ですが、最初からそれしか想定(そうてい)していなければ、いざ長期戦(ちょうきせん)になったときに戦えません。せめて、(ほか)の領地を占領下(せんりょうか)に加え、食料が確保(かくほ)できるようになるまでの長期戦(ちょうきせん)ができるだけの(そな)えをしておかなくてはなりません」

 ここで、レオンさんが現実的(げんじつてき)な意見を()べ始める。

「ですが、初代様。いきなり食料(しょくりょう)自給率(じきゅうりつ)を百パーセントにするのは、不可能ではありませんか?」

「もちろん、その通りです。ですが、なにも百パーセントにする必要(ひつよう)はありません。(ほか)の領地の穀倉(こくそう)地帯(ちたい)なり、備蓄(びちく)食料(しょくりょう)なりが奪取(だっしゅ)できるまでの継戦(けいせん)能力(のうりょく)確保(かくほ)できれば、それでいいのです」

 ここで、これまでの会議の行方(ゆくえ)を聞いていた領主のエストが口を開き、決定(けってい)(くだ)す。

必要性(ひつようせい)理解(りかい)しました。ですが、今すぐには予算(よさん)()りません。ですので、来年度の増税(ぞうぜい)に合わせて、補助(ほじょ)(きん)食料(しょくりょう)備蓄(びちく)予算(よさん)(ねん)(しゅつ)することとします」

 こうして、きたるべき戦いへの(そな)えが、一歩ずつではあるが着実(ちゃくじつ)(おこな)われていった。


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