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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第七章 ガイン自由都市

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第121話 平民の首都

 貴族連合軍との戦いが終わり、ガインの都市へと凱旋(がいせん)した私たちは、住民たちからの拍手(はくしゅ)喝采(かっさい)()びながら駐屯地(ちゅうとんち)へと帰還(きかん)していた。

 私は投降者(とうこうしゃ)に宿屋を無料開放すると約束(やくそく)していた。

 だが、貴族連合軍に所属(しょぞく)していた傭兵の全員が投降(とうこう)していたため、とてもではないが宿屋の数が()りなくなっていた。

 そこで、急遽(きゅうきょ)、全ての学校を臨時(りんじ)休校(きゅうこう)とし、それらの施設(しせつ)も無料開放していたのだが、それでも数が()りず、住民から希望者を(つの)り、補助金を出して民家(みんか)宿泊(しゅくはく)させてもらっていた。

 それからしばらくは戦勝記念の(うたげ)()り行われたのだが、一日や二日では、その熱狂(ねっきょう)(おさ)まらなかった。

 そして、五日ほどが経過してようやく戦勝(せんしょう)気分(きぶん)()けてきた(ころ)、エストと私と官僚(かんりょう)たちは戦争の後処理に頭を(かか)えることになる。

 投降者(とうこうしゃ)たちに今後の身の()り方を聞き取り調査してみると、ほぼ全員が移住を希望していたためである。

「どうせ故郷に帰っても、お貴族様から報復(ほうふく)されるのがオチなんで」

 そう口にして、この都市での生活を希望していた。

 しかし、この人数をガイン警備隊で雇用(こよう)するのは、どう考えても無理なのは明白(めいはく)であった。だからと言って他の傭兵団に移籍(いせき)しようにも、やはり、人数が多すぎた。

 そこで、受刑者用(じゅけいしゃよう)職業(しょくぎょう)訓練所(くんれんじょ)一時(いちじ)閉鎖(へいさ)し、そこの講師(こうし)や学校の先生たち、さらには職人を急遽(きゅうきょ)募集(ぼしゅう)して、各地に臨時(りんじ)職業(しょくぎょう)訓練所(くんれんじょ)開設(かいせつ)した。

 学校(がっこう)施設(しせつ)だけではとても場所が()りなかったため、空き倉庫なども広く活用し、交代制(こうたいせい)で授業を()り行うことでなんとか回していた。

 私は宿屋の約束(やくそく)が守れなかったことを()い、また、希望とは違う職種へと職業を斡旋(あっせん)することを(もう)(わけ)なく思い、移住希望者たちの宿泊(しゅくはく)施設(しせつ)を一つ一つ回り、謝罪(しゃざい)をしていた。

 しかし、私は誰からも非難(ひなん)されなかった。誰もが人数が多すぎることを承知(しょうち)していたためである。

 それよりもむしろ、「ガイン家の初代様」が自分たちに頭を下げて回っていることを高く評価(ひょうか)してくれて、恐縮(きょうしゅく)されてしまうことも多かった。

 そのようにして、ガインの都市の(あら)たな住人となった人々は、日々、新しい職業への訓練(くんれん)邁進(まいしん)してくれている。

 そんな彼らは、(ほか)のどの土地とも(こと)なり、平民が自由を謳歌(おうか)できるこの地の様子(ようす)にとても(おどろ)いていた。

 (うわさ)としては聞いていたようなのだが、この都市では官僚(かんりょう)ですらも平民であり、お貴族様は、領主とその家族しかいない事実に衝撃(しょうげき)を受けたらしい。

 また、この(ころ)になると、この都市の領民たちの収入も徐々(じょじょ)に増加していて、可処分(かしょぶん)所得(しょとく)が増えたことにより、読書などの娯楽(ごらく)にお金を使えるようになっていた。

 それに加えてチョサクケンなどの考え方も少しずつ広まってきたようで、権利(けんり)保護(ほご)された作家や音楽家といった芸術家も活躍(かつやく)の場を広げており、後に平民文化と呼ばれる(あたら)しい文化が花開き始めていた。

 それらの様子(ようす)を見た移住者の中の誰かが、この都市のことを「ガイン自由都市」と呼び始め、その(あら)たな名称(めいしょう)(またた)く間に国中の平民たちに広まっていった。

 そのため、王国の平民たちの間では、以下のようなことが広く言われるようになっていった。

(おう)()はお貴族様の首都(しゅと)。ガイン自由都市は平民の首都(しゅと)

 これらの言葉は平民たちの心を鷲掴(わしづか)みにしたようで、誰が最初に口にしたかで、しばらく言い(あらそ)いが行われるようになっていた。


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