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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第七章 ガイン自由都市

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第119話 献上拒否

 デンタクの一般販売が始まって、しばらくが経過した(ころ)

 ガインの都市の領主館の前に、見たこともないほどの立派(りっぱ)な馬車が止まっていた。馬車から降りてきた男性は国王の使者を名乗り、応接室の上座(かみざ)で待っていた。

 ちなみに、この国にも上座(かみざ)の考え方はある。入り口から遠いほど(えら)い人が座る席という認識(にんしき)のようだ。

 執務室(しつむしつ)で仕事をしていたエストと私は呼び出されてその前にたどり着くと、いきなり(ひざまず)くように言われ、なんだかよく分からないうちに国王様のありがたいお話とやらを聞かされることになった。

「国王様はデンタクの魔道具にとても興味(きょうみ)(しめ)された。大変(たいへん)名誉(めいよ)なことなので、すぐにデンタクを献上(けんじょう)するように」

 それを聞いたエストは、(ひざまず)いて(うつむ)いたまま私の方へと視線を向け、語り()けてきた。

「おじい様。私が領主として許可しますので、デンタクの開発者として、そして、この領地の初代として、使者様に言ってやってください」

 私は一つ(うなず)き、顔を上げて使者を見つめながら返答する。

「そのような理不尽(りふじん)な命令は、断固(だんこ)として拒否(きょひ)します」

「なっ……」

 使者は顔を真っ赤に()めて、ワナワナと(ふる)えている。

 私はそれに追い打ちをかけるように、すくっと立ち上がり、目線を合わせてそのまま話を続ける。

「五年前に他の貴族家たちがこの都市に向かって挙兵(きょへい)しようとしたとき、王族は何をしてくれましたか? 仲裁(ちゅうさい)も何もしてくれませんでしたよね? 肝心(かんじん)なときに全く助けてくれない王族なのに、こんなときだけ都合(つごう)よく(したが)うように命令されても(こま)ります。いまさら、ふざけているのですか?」

 使者は、私とエストを交互に(にら)みつけながら確認を取る。

「本気なのか? それとも、国王様の命令を拒否(きょひ)するとどうなるのか、平民上がりにはやはり理解できないのか?」

 私は使者の目を真っすぐに見つめたまま、さらに続きを語る。それが使者の怒りを増幅(ぞうふく)させる結果になることを承知(しょうち)の上で。

「別に売らないと言っているわけではありません。欲しいのでしたら、普通(ふつう)予約(よやく)を取って順番を守って買ってください」

「ふざけるな!! 国王様への献上品(けんじょうひん)と平民の予約(よやく)を、同列に(あつか)うと言うのか!!」

 私は大きく(うなず)きを返し、肯定(こうてい)する。

「ええ、そうです。あなたもおっしゃっていましたが、我が家は平民上がりですので、平民の味方(みかた)です。貴族だからとか王族だからといって、特別(とくべつ)(あつか)いはしません」

 しばらく口をパクパクとさせていた使者だったが、再び我々を(にら)みつけて、最後の言葉を(はな)った。

「……。後悔(こうかい)することになるぞ」

 そのような()台詞(ぜりふ)()いた後、のしのしと、元来た馬車へと(もど)っていった。

 その姿を見送ったエストは、私を見て、ニヤリと笑いかけてきた。

「さすがは私のおじい様です。スカッとしましたよ」

「ですが、これから戦争になるでしょう。急いで準備を整えなければなりませんね」

「でも、状況的(じょうきょうてき)には、五年前とさほど変わりませんよね」

 私もニヤリと笑って応じる。

「そうです。それに、五年前と(ちが)ってこちらは準備が(ととの)っています。これから挙兵(きょへい)するにしてもある程度(ていど)の時間がかかるでしょうから、さらに入念(にゅうねん)な前準備もできます。必ず()(はら)ってみせましょう」

 そして、私たちはこの会話の内容などを全て領民たちに公開し、貴族たちが報復(ほうふく)のために挙兵(きょへい)するのは確実であることも(あわ)せて説明した。

 その後、ガイン警備隊への入隊希望者を募り、食料や医薬品などの備蓄(びちく)も始めた。

 この話を聞いた平民たちは、貴族からの報復(ほうふく)(おそ)れるのではなく、国王が相手でも一歩も引かずに平民の味方をすると宣言(せんげん)したガイン家に喝采(かっさい)()びせてくれて、領地が一丸(いちがん)となって戦争準備を始めたのであった。


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