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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第七章 ガイン自由都市

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第113話 特許庁設立準備

 エストと今後の準備について相談してから、数日が経過した(ころ)

 私は、この領地独自の条例(じょうれい)として、特許庁(とっきょちょう)の設立のための準備を始めていた。

 今のままではコピーしたもの勝ちであるため、新しい発見や研究内容が秘匿(ひとく)されるばかりでなく、研究自体にあまり熱心ではない状況(じょうきょう)危惧(きぐ)したためだ。

 いつまでも私一人が新技術を開発し続けているようでは、これ以上の発展(はってん)は望めないと思い始めていた。

 ものはついでとばかりに著作権(ちょさくけん)の考え方も周知(しゅうち)することにして、新しい作家や音楽家などの権利の保護も()いて回ることにした。

 ただ、これらの権利は、これまでの考え方とは異質(いしつ)なものになるため、すぐには受け入れられないだろうということは容易(ようい)に想像ができた。

 そのことを考慮(こうりょ)に入れ、公立学校の授業で特許権(とっきょけん)著作権(ちょさくけん)の考え方を教え始めていて、数年単位で周知(しゅうち)していくことにした。

 特別(とくべつ)臨時(りんじ)講師(こうし)という職を利用し、特別授業の時間を利用して、()り返しこれらの権利の重要性を私も直接(ちょくせつ)()いていた。

「先生、自由にコピーできなくなれば、領内の経済が停滞(ていたい)するのではありませんか?」

 その特別授業の時に、一人の男子生徒が熱心に質問してきた。

「それは逆になりますね。自由にコピーできる状況(じょうきょう)放置(ほうち)していては、研究が行われなくなり、新しい技術が生まれなくなります」

「それはなぜですか?」

 少しでも新しい知識を身に着けようとするその姿勢(しせい)に、私は(たの)もしさを感じ取り、同時に(ほか)の生徒にも分かりやすくなるようにと、なるべくかみ(くだ)いて丁寧(ていねい)に説明を加える。

「研究というものは、長い時間と多額(たがく)費用(ひよう)が必要になるものです。ですので、自由にコピーができてしまう環境(かんきょう)ですと、新しく研究開発するよりも、誰かが発見した新技術をコピーする方がはるかに安上がりになってしまいます」

 生徒たちが(うなず)いているのが見えたため、私はさらに説明を続ける。

「コピーした方が楽だとなってしまうと、誰も無理してまでは研究しなくなるでしょう? また、偶然(ぐうぜん)に何かを発見したとしても、コピーされるのを恐れてそれを秘匿(ひとく)するようになってしまいます。このような状況(じょうきょう)では、新技術を研究したり普及(ふきゅう)させたりするのは不可能になります」

 教室の中をざっと見まわしてみると、みんな熱心に聞き入ってくれているようだ。私はこの授業に(たし)かな手ごたえを感じ、ここで特許(とっきょ)有効性(ゆうこうせい)についての説明を加える。

「ですので、せめて研究開発の費用(ひよう)の元がとれるぐらいには発見者の権利を保障(ほしょう)し、そのために、『特許(とっきょ)』として登録(とうろく)してもらうようにします」

 私がここまで説明すると、先ほどとは別の男子生徒が(いきお)いよく手を()げてきた。私は彼を指し示し、質問を許可する。

「先生、トッキョとして登録(とうろく)すると、なぜお金が研究者に回るようになるのですか?」

 それはとてもいい質問に感じられたため、私は大きく(うなず)き、微笑(ほほえ)みながら説明を加える。

「トッキョ登録(とうろく)された技術を使う場合は、売上の一定割合の金額を登録者(とうろくしゃ)支払(しはら)うように義務付(ぎむづ)けるからです。また、勝手にコピーした場合の取り()まりも、この新設するトッキョ庁の管轄(かんかつ)になりますね」

 このようにしてこれらの権利の意義(いぎ)を広く教えていき、トッキョ庁の職員として(あら)たに(やと)った官僚(かんりょう)たちの教育も行いながら、私は日々を(いそが)しく()ごしていた。


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