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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第七章 ガイン自由都市

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第112話 半自治領

 この(ころ)になると、発展したガインの都市の様子(ようす)を見た貴族たちからの反発が、かなり強まってきていた。

 とある貴族にいたっては、傭兵を動員(どういん)し始め、挙兵(きょへい)するそぶりを見せるものも(あらわ)れていた。

 そんな情勢(じょうせい)の中、私は領主のエストに、この件についての相談(そうだん)を持ち()けられていた。

「おじい様、万が一、このまま挙兵されてしまった場合、今の戦力で守り切れるでしょうか?」

 私は微笑(ほほえ)みながら、大きく(うなず)いて肯定(こうてい)する。

「もちろんです。挙兵(きょへい)できたとしても、その主力は平民の傭兵たちになります。私のところにも、彼らが命令に(さか)らえず、しぶしぶ(したが)っているという様子(ようす)が報告されています。そのような軍隊の士気が高いはずがありません」

 それでもエストは少し不安な様子(ようす)で、質問を(かさ)ねる。

「それは分かっていますが、やはり、数が脅威(きょうい)です。いずれは常時(じょうじ)雇用(こよう)している傭兵たちを拡充(かくじゅう)する必要があるのでしょうが、今すぐには間に合いませんよね?」

 私は笑顔(えがお)を深め、心配は無用だと伝える。

「確かに、それは今後の課題(かだい)ですね。ですが、もし今すぐに挙兵(きょへい)されたとしても、こちらには私がいます。必ず()(はら)って見せましょう」

 エストは目をぱちくりとさせて、私の自信満々(じしんまんまん)様子(ようす)根拠(こんきょ)(たず)ねる。

「それは(たの)もしいのですが、おじい様には、何か、必勝の作戦があるのですか?」

 私は再び大きく(うなず)いて肯定(こうてい)し、その根拠(こんきょ)について(かた)る。

「ええ。いざという時は、私が単騎(たんき)で後ろから近づいていき、指揮官(しきかん)のいるあたりに遠距離から『いんふぇるの』をぶち()みます。護衛(ごえい)の騎士たちごと、指揮官(しきかん)を焼き(はら)って見せましょう」

 その返答を聞いたエストは、顔を引きつらせながら指摘(してき)した。

「お、おじい様……。そんなことをしてしまえば、おじい様は、再び……」

「ええ。私は再び、『(みみ)(なが)悪魔(あくま)』と(おそ)れられるでしょうね。ですが、この都市は、(すで)にここの領民たちだけのものではありません。この国の全ての平民たちの希望(きぼう)だと聞いています。ここを(ほろ)ぼされることを考えれば、私が背負(せお)悪名(あくみょう)など、気にするほどのことではありません」

 エストとはそんなやりとりをしていたのだが、結局、実際に挙兵(きょへい)する貴族は(あらわ)れなかった。

 動員(どういん)されそうになった傭兵たちの中には、それに嫌気(いやけ)がさしてしまい、ガインの都市の傭兵団に鞍替(くらが)えするものが多数(たすう)(あらわ)れたからである。

 そのために予定していた兵数を(そろ)えることができなかったようで、挙兵(きょへい)断念(だんねん)していた模様(もよう)だ。

 それはありがたいのだが、一気に増えたガインの都市の傭兵たちの中には、職にあぶれるものも(あらわ)れ始めていた。

 軍備の拡充(かくじゅう)急務(きゅうむ)だと考えていたエストはこれを好機(こうき)としてとらえ、常時(じょうじ)雇用(こよう)している傭兵たちの組織(そしき)改編(かいへん)し、彼らを「ガイン警備隊(けいびたい)」として編成(へんせい)しなおした。

 これは、名前こそ警備隊(けいびたい)であったのだが、誰が見ても、実質的(じっしつてき)には常備軍(じょうびぐん)であることが(あき)らかだった。

 そのため、ガインの都市は、しだいに王国の統治(とうち)(およ)ばない半自治領(はんじちりょう)として認識(にんしき)されるようになっていくのである。


 これはずっと先の話になる。

 平民たちが立ち上がり、貴族たちの支配からの解放を(さけ)んで反乱が勃発(ぼっぱつ)したその時には、ここで組織(そしき)されたガイン警備隊(けいびたい)後継(こうけい)組織(そしき)が、反乱軍の主力として活躍(かつやく)するようになるのである。


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