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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第七章 ガイン自由都市

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第111話 合金の研究

 それからの私は、無理を言ってガインの都市のとある鍛冶屋(かじや)弟子入(でしい)りさせてもらっていた。

 あの金色の粉を()()んだ、合金の研究をするためである。

 あの粉そのものは一般公開できないとしても、魔力を通しやすい合金が完成すれば、かなり安価(あんか)に魔道具が提供(ていきょう)できるようになるはずだ。

 ルツ親方の研究では、糸を使った配線は魔力伝導率が極端(きょくたん)に悪かった。

 かなり後になって思いついたのだが、これは、有機物(ゆうきぶつ)無機物(むきぶつ)(ちが)いではないだろうかと仮説(かせつ)を立てた。

 魔石に魔力を()めるほど(てい)抗力(こうりょく)が増える。

 これと同様(どうよう)に、植物(しょくぶつ)由来(ゆらい)の糸では、それに(ふく)まれている植物自身の魔力によって抵抗力(ていこうりょく)が高まってしまい、魔力がほとんど流れないのではないかという仮説(かせつ)だ。

 であるのならば、金属などの無機物(むきぶつ)を使って合金を作れば、魔力伝導率の良い配線ができるはずだと考えを進めた。

 弟子入(でしい)りをお願いした鍛冶屋の親方はラゴンさんという人で、かなり体格のいいゴリマッチョである。

「親方、無理を言ってすいません。ただ、鋳造(ちゅうぞう)鍛造(たんぞう)の方法は教えていただかなくても大丈夫(だいじょうぶ)です。合金を作るための冶金(やきん)技術だけ、伝授(でんじゅ)してはもらえませんか?」

 私がそのようにお願いしてみると、ラゴンさんは両掌(りょうてのひら)を前に出し、ブンブンと頭を()りながら()げた。

「親方はよしてくださいよ。初代様にそんなに(かしこ)まられると、こっちが恐縮(きょうしゅく)してしまいまさぁ」

「しかし、無理を言って教えを()うのですから……」

 ラゴンさんは右の(てのひら)で私の主張を(さえぎ)って、自説を()べる。

「初代様、この都市に住む住民であれば、誰しもがあなた様のお世話(せわ)になっているなんてこたぁ、身に()みて理解していますぜ? そんなお人が俺のチンケな工房に、わざわざ足を運んで勉強なさろうとしてまさぁ。それだけでもかなり名誉(めいよ)なことなのに、この上、敬称(けいしょう)で呼ばれたりしたら、(ほか)の住民からの嫉妬(しっと)(こわ)いんでさぁ」

 そのように言って、ラゴンさんは(こころよ)冶金(やきん)技術を伝授(でんじゅ)してくれた。

 私はそれの謝礼(しゃれい)として、いくばくかの礼金を(わた)そうとしたのだが、これも固辞(こじ)されてしまった。

「初代様、あなた様が俺なんかの技術を使ってなさろうとしていることが何なのか、俺にはさっぱり分かりません。ですが、あなた様のやることであるのならば、俺たち平民のためになることなのでしょう?」

 私はそれに大きく(うなず)きを返し、肯定(こうてい)する。

「ええ、もちろんそのつもりです。この研究が実を(むす)べば、魔道具がもっと安く提供(ていきょう)できるようになるはずなのです」

「でしたら、なおさら(かね)は受け取れませんぜ? 平民のために使うことだけ、約束してくださいな」

 そうやってラゴンさんと約束を()わし、私は合金の研究を開始した。

 まずは手始めにと行ったのは、私専用の小さな冶金(やきん)工房を作ったことだ。配線に使う程度(ていど)であればそこまでの規模は必要ないので、これで十分だと判断したためである。

 それから研究を開始してすぐに判明(はんめい)したのは、やはり、有機物(ゆうきぶつ)()()むと魔力伝導率が極端(きょくたん)に下がることだった。

 しかし、それであるならば、魔石やそれから作られるあの粉も有機物(ゆうきぶつ)分類(ぶんるい)されるはずである。

 だが、おそらくは、()(せき)由来(ゆらい)のものだけは、ある種の例外なのだろうと結論付(けつろんづ)けた。

 そうやって、()()む金属の種類を変更してみたり、量を変更してみたりしながら研究を続け、最も魔力伝導率の良い配合(はいごう)を探し始めた。


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