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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第六章 初代様

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第108話 豆乳美人

 これは、島の里のみんなにトウフ作りを順番に教えていた(ころ)の話になる。

 クリスさんは、いつものように私と共にみんなの作業を見て回っていた。彼女の中では、これはデートになるらしい。

 そうやってトウフ作りを教えていると、クリスさんがあるものを見ながら質問をしてきた。

「ヒデオ様、このトウニュウというものは、もしかして飲めるのですか?」

 私は大きく(うなず)いて肯定(こうてい)する。

「ええ……。味は(この)みもありますが、私は美味(おい)しいと思っています」

 そして、ついでとばかりに、豆乳(とうにゅう)(まめ)知識(ちしき)も教えることにした。

「トウニュウには、ダイズ『イソフラボン』という物質が多く含まれていまして、美肌(びはだ)効果(こうか)がありますから、私の故郷だと、若い女性で(この)んで飲んでいる人が多かったようですね」

 私のそんなちょっとした蘊蓄(うんちく)を聞いたクリスさんは、若干(じゃっかん)目を(かがや)かせながらウンウンと(うなず)き、とある宣言をした。

「それはいいことを聞きました。私も飲みますね」

 その発言に対し、私は思わず少し顔を(しか)めながら否定してしまう。

「いえ……。できれば、クリスさんにだけは、あまり飲んで欲しくないですね……」

 クリスさんは目をぱちくりとさせ、少し(おどろ)いた顔をしながら説明を求めてきた。

「それはなぜですか?」

「これ以上、クリスさんが美人になってしまいますと、私は、その……」

 私は女性に対して何を口走ろうとしているのか、ここでやっと気づき、思わず(ほほ)()めて(うつむ)いてしまい、言い(よど)む。

 そんな私に対し、クリスさんは下から(のぞ)き込むようにしてじっと目を見つめて来て、続きを口にするように無言のプレッシャーをかけ続けてくる。

「わ、私は、その、ク、クリスさんに、結婚を申し込む前に、お、お、押し倒してしまいかねないと、危惧(きぐ)しているのです……」

 顔が滅茶苦茶(めちゃくちゃ)に熱い。間違(まちが)いなく、真っ赤になってしまっているだろう。

 そんな私の様子(ようす)をじっと見つめていたクリスさんは、何度も大きく(うなず)きを()り返し、力強く宣言した。

「それはとてもいいことを聞きました。これからは、私、毎日トウニュウを飲み続けますね」

「え?」

 私のお願いとは正反対になっている結論(けつろん)(おどろ)いて顔を上げると、彼女は鼻を(ふく)らませ、右手で(にぎ)(こぶし)を作りながら、ふんすーっと、鼻息も荒く説明してくれる。

既成(きせい)事実(じじつ)さえ作ってしまえば私の勝ちです。そして、この里でずっと幸せに()らしましょう」

 クリスさんのあまりにもアグレッシブなその発言に、このままでは本当に既成(きせい)事実(じじつ)を作ってしまいかねないなと、心の警戒(けいかい)レベルを一気に数段階上げることにした。

 私はできるだけ紳士(しんし)であろうと、心に固く(ちか)った日だった。


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