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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~  作者: 熊八
第六章 初代様

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第102話 地引網漁と歓待の宴

 それからしばらくして、中央に集まっていた島の里のみんなに、祭司長のクリスさんが直々(じきじき)に私の紹介(しょうかい)を始めてくれた。

「こちらが森の同胞(どうほう)の祭司様です。遠路(えんろ)はるばる、我らの里までお()しいただきました」

 島の里のみんなは、私の里と同様(どうよう)にとても温厚(おんこう)様子(ようす)で、温かく私を歓迎(かんげい)してくれた。夜になると、私を歓待(かんたい)するための(うたげ)まで開いてくれるらしい。

 ただ、まだ昼前であったため、少し時間があった。

 そこで、この里の生活の様子(ようす)を見て回りたいと(もう)し出てみると、クリスさんが(みずか)ら案内してくれることになった。

 最初に見に行ったのは(りょう)様子(ようす)である。私の里には海や川がないため、どのように(りょう)をしているのかとても興味(きょうみ)があったためだ。

 クリスさんと雑談(ざつだん)を楽しみながらゆっくりと歩き、やがて海辺(うみべ)にたどり着くと、小舟で(あみ)沖合(おきあい)に投げている様子(ようす)が見て取れた。

 どうやら、ああやって(あみ)を張って行き、陸地から引き上げる地引網(じびきあみ)(りょう)のようだった。

 私は早速(さっそく)(となり)でとても楽しそうにしているクリスさんに質問を投げかけてみる。

「あの漁法(ぎょほう)は何というのですか?」

「あれは地引網(じびきあみ)(りょう)と申します」

 この世界での、地引網(じびきあみ)(りょう)にあたる単語を私は知った。

 それから、お昼ご飯として出してもらった焼き魚と魚貝類(ぎょかいるい)のスープは、塩と海藻(かいそう)とハーブで味付けがなされており、出汁(だし)が良く出ていてとても美味(おい)しかった。

 私も何か夜の(うたげ)の食材を提供(ていきょう)したいなと思い、適当な鳥でもいないかと、空をきょろきょろと見渡(みわた)していた。

 そんな私の様子(ようす)を目にとめたクリスさんが、少し首を(かし)げながら質問をしてきた。

「ヒデオ様、いったい、何を探しておいでなのです?」

「鳥でも狩れないかと思いまして」

「それでは、なぜ、地面ではなく空を見上げておられるのですか?」

 私がどうやって説明しようかと、軽く(あご)に手を当てて考えている時、視界の(はし)に白い四羽のチル鳥が空を飛んでいるのをとらえた。

 行動して見せた方が早いなと考えを(めぐ)らせ、そのまま魔法を発動する。

多重(たじゅう)風刃(ふうじん)

 チル鳥たちはまだかなり遠方であったが、目に見える範囲であれば、必ず命中させられるという自信がある。

 私は右手を上下左右に()りながら四つのかまいたちを操作していき、全て首に命中させた。

 魔力操作をするのに手の動きは必要ないのだが、こうするとより正確に制御(せいぎょ)が行えるような気がして、遠方の目標を(ねら)う時の(くせ)になっていた。

 その様子(ようす)(となり)で見ていたクリスさんは、目を見開いてとても(おどろ)いた顔になって感想を()べる。

「まさか、あのような距離(きょり)の鳥の首に、正確に全て命中させることができるだなんて……。森の同胞(どうほう)の魔法の(うで)(すご)いのですね」

 私は軽く頭を()りながら正解を()げる。

「いえ……。私の里でも、これは私にしかできない(わざ)になっていますね」

 そう返答すると、クリスさんは顔をこちらに向け、尊敬(そんけい)眼差(まなざ)しになって質問を重ねてきた。

「まあ……。では、ヒデオ様はどのようにして、その(うで)を身に()けられたのですか?」

 そのように言われると少し()れてしまう。

 私は(ほほ)をポリポリと指でかきながら、正直(しょうじき)に説明する。

「私は小さい(ころ)から魔法がことのほか好きだったので、ひたすら魔力(まりょく)制御(せいぎょ)訓練(くんれん)()り返していましたら、いつの間にかできるようになっていました」

 そんな会話を楽しみながらチル鳥の落下地点まで歩いていき、里でいつもしていたように、水魔法を応用した()()きと解体を()ませた。

「これで、私も今夜の(うたげ)貢献(こうけん)できましたかね?」

 私がクリスさんにそのように質問すると、彼女は、ウンウンと(うなず)きながら同意してくれた。

「もちろんです。このようなご馳走(ちそう)を、一度に四羽も食べられる機会はまずございませんから」

 そんな雑談(ざつだん)を楽しみながらゆっくりと歩いて島を(めぐ)り、里に帰ってから調理を担当しているご婦人方に鳥肉を渡すと、とても(よろこ)んでくれた。

 それからしばらくして始まった(うたげ)の席で、こう言ってチル鳥の香草焼きをまるまる一羽分渡された。

「これは、森の祭司様と祭司長様で食べてください」

 残りの肉はどうやって食べるのかと思い、(たず)ねてみると、子供たちに分け(あた)えるようだった。

「それでは、子供たちの一人分が少ないでしょう。私はかまいませんので、子供たちに分けてあげてください」

 私がそう(もう)し出ると、笑顔(えがお)で頭を()って辞退(じたい)された。

「いえいえ……。森の祭司様が直々(じきじき)に狩ってこられたお肉ですから。お客人(きゃくじん)に、これ以上のお手数はおかけできませんよ」

 チル鳥の肉を分けられた子供たちの様子(ようす)をこっそりと観察(かんさつ)してみると、仲良く分け合って食べていた。

「やはり、この里のみんなも私の里と同様(どうよう)で、とても仲が良くて素晴(すば)らしいですね」

 私がそのように感想を()べると、クリスさんは顔をこちらに向け、質問してきた。

「では、森の同胞(どうほう)も、やはり仲がいいのですね」

 私は大きく(うなず)きを返し、返答する。

「ええ……。私の里でも、めったに(あらそ)いごとは起こりません。大声で(しか)られたのも、子供の時の一度きりでしたね」

 私が過去を思い出しながらそう()げると、クリスさんは少し目を見開き、右手で口を(おお)って(おどろ)いた様子(ようす)になって質問してきた。

「まあ……。何をしてそのように(しか)られたのですか?」

 私は少し気恥(きは)ずかしくなってしまい、(ほほ)を右手の人差し指でポリポリとかきながら説明した。

「初めて魔力の使い方を教わった時に、(うれ)しすぎて魔力を使いすぎてしまいまして……。連日のように気絶(きぜつ)()り返していたのです」

 私がそう()げると、クリスさんは急に(おこ)った顔になり、私を(しか)りつけ始めた。

「そのようなことをすれば、(しか)られて当然です!」

 その剣幕(けんまく)(おどろ)いていると、クリスさんは両手の(こぶし)(にぎ)りしめ、力説(りきせつ)を始めた。

「もし、その時に心臓が止まってしまっていたら、このような素敵(すてき)な出会いもなかったのですから。ヒデオ様、約束してください。もう二度と、気絶(きぜつ)するまで魔力は使わないと」

 私は大きく(うなず)きを返し、その意見に同意を(しめ)す。

「クリスさんの(おっしゃ)る通りですね……。私が(おろ)かでした。約束します。ですから、この素敵(すてき)な出会いを提供(ていきょう)してくださった、ご(えん)の神様でもある風の神様に感謝して、少し飲みましょう」

 私のこの返答を聞いたクリスさんは、とても(うれ)しそうに何度も(うなず)いていて、しばらくは、二人でチビリ、チビリとお酒を楽しんだ。

 この里には、火魔法と光魔法も(つた)わっているようだ。

 火種の魔法で火を()けた(かまど)で調理を行い、光球(こうきゅう)の魔法で(あた)りを()らしながら(うたげ)は進んでいった。

「この里には、火魔法と光魔法も(つた)わっているのですね」

 私のそんな感想に対し、クリスさんは少しだけ首を(かし)げながら質問してきた。

「森の同胞(どうほう)の里には(つた)わっていないのですか?」

 私はそれに一つ(うなず)きを返し、私なりの理由について説明を加える。

「ええ……。おそらく火魔法は、森で大きな火を(あつか)うのは危険ですから、少しずつ(すた)れていったのでしょう。光魔法が(つた)わっていないのは、ちょっと理由が分かりませんが」

 そうやってクリスさんとの会話を楽しみ、やがて始まった島の里でのお祝いの(おど)りを鑑賞(かんしょう)していると、(うたげ)は終わりを告げた。

 その後、今は()()になっているという小屋(こや)を紹介されて、私は(うたげ)に十分に満足しながらそこに宿泊(しゅくはく)してこの日を終えた。


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