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21st Stage

 翌日、俺たちシンゴーキはCeroTube番組『シンゴーキのスリーショット』の9月分収録のために配信専用スタジオへやってきた。収録当日は7月24日だが、他の仕事との絡みからスケジュールに余裕を持たせようとこの日に行われることになった。


 いつものように、感染防止ガイドラインに従ってスタジオの出入口はドアが開いたままとなっている。俺たち3人も手指の消毒を行うと、マスクを着用したままでアクリル板の仕切りが入った位置へ座った。


 収録の本番を前に、俺たちは配信番組のカメラ撮影を行う峰渕の指示に受けながらフリートークのネタを3人で確認し合っている。


 そんな時、ドアが開いているところから誰かが一瞬で通り過ぎるのが俺の目に入ってきた。


「あの男、一体誰なんだ」

「こっちのほうを見たような気が……」


 廊下を進むその姿は、何度も顔を合わせたあの男とほぼそっくりだ。バラエティー番組の収録時の服装のままで歩いたら、本人とイコールだということを相手に知らせる材料となってしまうだろう。


 けれども、こんなことにうつつを抜かす訳にはいかない。まずは、俺たちの冠番組を収録することが最優先事項だ。


「スタジオ内の換気で出入口のドアが開けっぱなしになっているけど」

「人が廊下を通る姿がここからでも見えてしまうわけだし」

「換気といえば、窓のほうも少し開いていますね。車の走る音がどうしても気になってしまいそうで」


 1本目の収録は、ドアや窓が開いたままで行っているが故の状況を3人がそれぞれの立場でトークを行っている。数カ月前までだったら、こうしたハプニングなど全く気がつかなかったことだろうし……。


「シンゴーキチャンネルでもいずれやりたいね。窓を開けて集音マイクで音を拾ったらというタイトルで」

「自宅だけでなく、ここでも音を拾ってみたいなあ。スリーショットとのコラボ企画ができるかどうかは分からないけど」


 最初の収録は無事に終わらせることができると、その後も3人による爆笑トークの撮って出し収録は順調に進んでいった。


 事前収録を済ませた後、俺たちはマスクを着けると峰渕に挨拶をしてからスタジオから出ることにした。廊下では、別室で待機していた放送作家の坂塚の姿が目に入った。


 坂塚は、自分と顔を合わせた俺たちにある一言を伝えようとマスク越しに口を開いた。


「別室で座って待っている間、感染対策でドアが開いたままで廊下が丸見えになっていてなあ」

「ドアが開けっぱなしになっているのは、収録が行われたスタジオでも同じだけど」


 スタジオに一度に入室できるのは4人までと制限されているため、ウィルス禍になってからは坂塚が別室で待機することが多くなっている。


「それでさあ、廊下のほうを歩いていた男は外見と服装からしてシノマキヌオにしか見えないわけで……」

「シノマって、スタジオで何か収録でもするのかな?」

「いや、シノマは他のチャンネルに出演しているけど、自分でCeroTubeチャンネルを持っていると聞いたことはないな」


 俺たちが廊下で話していると、男性用トイレのほうからマスク姿の男がこっちのほうを覗いている。その様子に気づいた俺は、男が潜んでいるトイレの中へすぐさま足を踏み入れることにした。

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