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14th Stage

 収録スタジオでは、本番前のリハーサルが入念に行われている。ひな壇席では、青田と黄島が他のゲスト出演者とともに座りながらスタッフからの指示を受けていた。


 見守りゲスト席にいる俺のほうでも、ひな壇席の芸人たちがどういう配置なのかじっと眺めている。


「ふむふむ、前段に4人で後段に3人ということだな」 


 そうするうちに、MCの原崎とおるが司会席のほうへやってきた。司会席と見守りゲスト席の間には、ソーシャルディスタンスを保つために小道具が置かれている。


 リハーサルの間、俺たち出演者もスタッフもマスクを着用したままで臨んでいる。そして、ひな壇席には感染防止のためのアクリル板が全ての席の両側に設置されている。


 スタジオ内の人数も細かく制限されており、以前のような賑やかな雰囲気を知っている身からすれば寂しいものを感じてしまう。


 この様相に、ニューノーマルが長期化するのではと危惧しているのは俺だけではないはずだ。ウィルス対策の厳格なガイドラインにより、俺たちがマスクを外すことができるのは本番収録中のみとなっている。


 俺がひな壇席で目にしたのは、ユーモアを交えながらサンニンビンゴの3人と談笑する田野の姿だ。凸凹雑技団のリーダーで関西出身とあって、お笑いのツボは何かというのをつかむ術を持っている。


 番組の本番が始まると、芸人の本領を発揮するべくMCの原崎に向かって自転車の魅力を面白く伝えようとしている。原崎も、芸人たちの自転車うんちくに耳を傾けながら面白そうに興味を持っているようだ。


 自転車の経験は、自転車初心者の俺たちから、ロードレースに出場するほどの実力を持つ田野に至るまで様々だ。けれども、自転車を推し活としてこよなく愛する点では共通している。


「原野さん、なんならいっしょにサイクリングしましょうか?」

「いつになるかは分からないけど、誘われたらぜひ」


 青田は、原野のハートを射止めようと番組内でサイクリングに誘おうとしている。俺は、何とか自分を売り込もうとする青田の姿勢に感服している。


 シンゴーキとして3人揃って出演する以外にも、メンバーが個々の立場で活動することが増えるようになってきた。コント師として培ったことで、パーソナリティやDJ、俳優など多方面で実力を発揮できるようになったことも大きい。


「長市さん、自転車好きが高じて各地のロードレースに参加しているけど」

「たくさんの声援を受けることで大きなアドレナリンを生み出しますね。ウィルス禍なので、今はオンライン上のバーチャルレースを室内に導入して……」


 推し活とは、好きなものを様々な形で応援することを指していると言えよう。単なる趣味の域のみならず、田野のように本気で自転車レースに挑むという強者もいるほどだ。


 自転車へのこだわりやうんちくなどでひな壇席が盛り上がる中、その場で黙り込んだまま発言を行っていない芸人がいる。


「シノマ、長市さんの隣だから緊張しているのかな」


 自転車コレクターなら、それなりの魅力を面白おかしく言ってもいいはずだ。それならばと、俺のほうからシノマに話を切り出すことにした。

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