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駒井が仕事帰りのことだ。
ふと反対車線の歩道に、自分の娘が歩いているのが目に入った。
――こんな時間に、なんでこんなところを歩いているんだ。
そう思ってよく見ると、若い男と一緒に歩いているのが見えた。
――えっ?
そのまま二人して路地に入る。
駒井は慌てて二人を追いかけようとしたが、信号待ちで駒井の車の前後に車がいる状況だ。
動けない。
そのうちに信号が変わり、車が動き出す。
駒井は先で強引にUターンすると、そのまま二人が消えた路地に入った。
しかし二人の姿はどこにもない。
携帯にかけると、誰も出なかった。
――どうするか?
どうしようもない。
しばらく娘を探した後、駒井は家に帰り、娘を待つことにした。
妻は、娘はコンビニに買い物に行ったと言う。
そのまま待つ。
しかし娘はいつまでたっても返ってこなかった。
深夜、駒井は警察に連絡を入れた。
駒井の娘が見つかったのは三日後のことだった。
それも死体で。
娘が入った路地の奥で、普段人が立ち入らないようなところだ。
かくれんぼをしていた子供が見つけたと言う。
まだ中学生の一人娘が殺された。
駒井と妻の怒りと悲しみは、いかほどのものか。
駒井はその後の人生の全てを、娘を殺した男を見つけることに使うと決めた。
もちろん警察にも娘と一緒にいた男のことは言った。
似顔絵も書かれたが、犯人と断定する決め手がなく、指名手配犯とかにはならなかった。
そんな中、駒井は妻ともども男の似顔絵をあちらこちらに配り、電柱や頼み込んだ店先などにも張ったりもしたが、なんの情報も得られなかった。
娘が死んで数か月たったある日、会社帰りの駒井は驚いた。
なんと娘と一緒にいた男が前から歩いてくるではないか。
これまで何の情報も得られなかった男と、突然遭遇するなんて。
駒井は車をUターンさせ、静かに男の後を追った。
男は人通りの少ない路地に入った。