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へたれ侯爵は幼なじみのあの娘と恋したい【番外編 1】 ~王太子からのプロポーズ?~  作者: 工藤 でん


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1-1

連載となってますが、三話で完結です。

番外編ですが、本編を読んでなくても楽しめます。


本編ストーリーと関係ないと気が緩んだら、極甘仕様になっていました。

甘党の方、お茶でも飲みながらお読みください。

~ 人物紹介 ~


ローレイ・ヴァン・カリキス

通称、レイ。子爵令嬢。十七歳。

激ニブの男装女子である。黒髪黒目の絶壁女子である。当小説の主人公。

養子縁組で子爵令嬢になったが、生粋の庶民である。子爵とは名ばかりで貧乏でもある。

王国に稀な召喚士の能力を持つ。王国陸軍勤務。

アルとは幼なじみであり、婚約者でもある。


アルフォンソ・オード・ローフィール

通称、アル。侯爵。二十歳。

黒髪にブルーグレイの目をした、きらきらの美貌の持ち主。実際にきらきらが出てしまう困った体質である。以前よりマシになったが根本的に、へたれ。

剣・魔法共に優秀。王国陸軍小隊長を勤める。

ずっとレイに恋し続けている。



※ ※ ※



パーティに参加する。


前にも言ったことあるね。

二回目ですよ。

わたし、パーティに参加するんですよ。

ちゃんと、お呼ばれしたんだよ?



今回は王太子殿下が留学先から完全帰国するための、お祝いパーティだ。お城で行われるパーティである。

以前お城で開かれたパーティの時は、わたしはまだ近衛兵だった。その時は近衛兵として警護任務に当たっていたが、今回は招待客として参加する。



そこで困ったのがドレスである。

前回参加したパーティは、アルの家督相続パーティだった。

近衛の正装で行ったら、すぐさまひん剥かれて、ドレスを無理矢理着せられたっていう、苦い記憶がある。

ちゃんとドレスで参加しないとダメらしい。


ドレス作る金がねえな。この前仕送り送ったばっかだし。

ここは丁寧にお断りの返事でもしたためた方がいいかなー……などと思っていてのだが。



「ドレスがない? 作ればいいじゃん」


アルが無駄にきらきらを発しながら、サラッと言った。

アルんちである。バカでかい屋敷の一室である。



わたしはアルの家、ローフィール家の、領地経営のアドバイザーにされていた。

婚約したのをキッカケに、ローフィール家の事を知っておいた方がいい、という執事さんからの申し出があったのだ。わたしは、わたしの家、カリキス家が洪水被害により傾きかけたのを、復興させた経緯があったため、なんとなく領地経営のことは知っている。ちょっと口を出したら、なんだかアドバイザーにされてしまっていた。


うちみたいなちっさい領地とアルんちみたいなでっかい領地じゃ、経営の仕方違うだろうと思っていた。

しかし、蓋を開けてみれば、意外と無駄の多いことしてる部分もあったりする。金持ちはおおらかだよね!

わたしは小姑のごとく無駄をつつきまくって、ローフィール家の執事、トーマスさんに嫌な目でみられていた。貧乏人はね、無駄なとこにお金落としてる余裕ないのだよ!


アルは領地経営はまだ勉強中みたいで、わたしとトーマスさんのやり取りを真面目な顔して聞いている。時々、頭の硬いトーマスさんをぶん殴ろうとする、わたしを止めたりもしている。



今は頭の硬いトーマスさんの入れてくれた、おいしいお茶で休憩中だ。トーマスさん、お茶いれるのは上手じゃん。



「あのな、アル。ドレスって高いんだよ。陸軍からもらってる給料の、半分以上するんだよ」

「既製品ならそんなものか。オートクチュールならもっとするだろうね」

「バッ、バカか! 何言ってんのっ?

オートクチュールなんて、そんなもんハナから眼中ないわっ!」

「でも、ドレスは必要だろ。作ればいいじゃん」

「ああ! リアル金持ちと会話が全然噛み合わない!」

「だからさ、ローフィール家(うち)の金で作ればいいだろ」


さらりとすごいこと言ってのける金持ちが、すぐ隣にいた。

ブルーグレイの綺麗な目が、わたしを見つめていた。

傍らにいる執事に視線を動かす。


「それぐらい出せるよな、トーマス」

「余裕でございます。

お嬢様の指摘された経営の無駄を算出しただけでも、三着以上仕立てられますが」

「いらねえ! 三着もドレスいらねえ!」

「というか、真面目な話」


アルがわたしに向き合った。

少し伸びてきた黒髪が、さらりと揺れた。


「レイが侯爵家に入ったら、パーティに参加する頻度はかなり増えるよ。呼ばれることもあるし、開催する必要もある」

「げえっ」

「侯爵家の威信を見せつける必要も出てくるし、毎回同じドレスって訳にはいかなくなる。いい機会だから三着くらい作っちゃえば?」



わたしはじとっとアルを見る。

アルの正装はどうせ軍服だろ。仕立てる必要ないもんな。面倒なことしなくていいんじゃん。

てか、わたしも軍服でいい。

どちらかというと、軍服がいい。


「よし、アル。ドレスを仕立てるのは君にしよう」

「はっ?」

「綺麗な顔してっから、大丈夫!

きっと似合う。よかったな。

そしてわたしは軍服にする」

「何、気持ち悪いこと言ってんだよ!」

「いいじゃん、めんどくせえ。

どーせ、わたしみたいな地味顔絶壁、何着せたって変わらないんだから」

「女装して街を歩けば、男の目集めまくってるレイが、地味顔なわけないだろっ」

「知らんがな。そんなもん集めた覚えはない」

「本当にニブいな、レイは!」


わたしたちがぎゃあぎゃあ言い合っていると、トーマスさんが一人の女性を連れてやって来た。

黒縁のメガネをかけたメイド服の女性。

……わたし、この人知ってる。

メイド長さんだ!

そんで、すげえ強い人だ!


アルが明らかにほっとした顔をしているのが、腹立つ。


「メイド長」

「はい、旦那様」

「レイのドレスを仕立てる。最低三着、金に糸目はつけるな」

「はい」

「最高の仕上がりを期待する」

「かしこまりました」


メイド長さんは、くいっと黒縁メガネを上げた。

目がきらきら輝いている。


「得意分野ですわ」


……やーん、やっぱりこの人怖~い。





アルがひっついてくる。

アルんちの馬車で王宮まで移動中だ。

パーティ当日までに、ドレスはなんとか間に合った。

わたしはメイド長さんと喧々諤々の戦いを経て、このドレスを着ている。



「コルセットは、いやだ!」

「お嬢様は細身でいらっしゃるので、そこは妥協しましょう。ですが! 胸は盛ります、盛らせていただきます!」

「寄せたって上げたって盛ったって、どうせ周りにうずもれるだけなんだからさー。

見たことある? 淑女って、胸にメロン二つくっつけてんだぞ」

「では、胸はそこそこの盛りで。背中を広く取りましょう。華奢でしなやかなラインを見せつけましょう」

「……エロくね? 普通にエロいよね?」

「ドレスはエロくてなんぼですわ、お嬢様」

「ねえ、貴族様たちは何を競ってそういうことになってんの?」

「裾はたっぷりと取りましょう。切り替えを入れてもいいですわね」

「その辺は、分かんないから任せるー」

「ダイヤと真珠を散りばめましょう。お嬢様の清楚さを引き立てるために……」

「そのまま質屋に駆け込んでいいっすか?」

「清楚なお嬢様はそんなこといたしません!」


……てな感じて、ドレスの概要が決まっていった。



今日着ているのは、光沢のあるオフホワイトの生地に、ダイヤや真珠を縫いつけたものだ。絶壁を誤魔化すために胸の露出はないが、肩は露わで背中は大きく開いている。

黒い髪はアップにして、ダイヤがふんだんに使われたティアラが飾られた。さらにダイヤと真珠のイヤリング。


……わたしは総額、いくらなんだろう。たぶん、知らない方がいい。知っちゃったら、一歩も身動き取れなくなりそうだ。いや、質屋があったら駆け込むかも。

なんにせよ、怖え。



着替えて出てきたわたしを見て、アルは天井を見上げた。そしてメイド長とがっちりと握手を交わしていた。

……涙ぐむほどのことではないだろうが。



そして、現在に至る。

アルがやたらにひっついてくる。

なんか、ずーっとわたしを見ている。

なんだよ、わたし珍獣かよ。おかしな愛玩動物かよ。

ちらっとアルを見ると、凄まじいきらきらを発しながらにこーっと笑ってくる。おお、久々にきらきらが目に染みる。



「……アル、近くない?」

「うん。近くで見たいし」

「いや、触ってない?」

「だって、レイが可愛くて」

「触る理由になってねえな」

「レイ、いつもこういう格好してて」

「お断りだ」

「つれなくたって、今日はいい。だって可愛い」

「そもそも、会話が成り立ってなくないか?」



アルがわたしに顔を近づけてきた。

キスしようとしたみたいだが、メイド長・その他のみなさんが念入りに作り上げた化粧に気づいたようだ。化粧のついてないわたしの耳にキスをした。

ちゅっ、という音が大きく聞こえた。こそばゆいっての。

アルの甘い声が耳に流れてくる。


「……俺、夢見てんのかな。レイがすごく女に見える」

「逆に、どーゆー目で普段見てるんだ?」

「これが俺のものだなんて、信じていいんだろうか。

もし今、それを保証してくれる神がいたなら、俺は全財産を教会へ寄付する」

「今のアルなら、へっぽこ詐欺師のいいカモになりそうだな!」

「レイ……好き」


……知ってる。分かってるから、耳元ちゅーちゅーするのは、もうやめて欲しい。

アルの顔をぐいぐい押しやって空間を作った。アルの顔が溶けてだらしない。これが社交界を賑やかしている貴公子の顔ですかね!


「アル、その顔仕舞えよ。その顔のまま馬車降りたら、即座に変態の烙印押されるぞ」

「レイが可愛いから仕方ないんだ」

「変態のエスコートで入場とか、お断りだぞ!」

「じゃあ、もう一回キスさせて」


じゃあってなんだ! 本当に今日は会話が成り立たんな!

アルはわたしの耳に長いキスをして、ようやく離してくれた。

……つか、最後、舐めたな。

本当に変態だ、この男。




変態は、馬車から降りた途端に、きりりとしたきらきらを振りまきながら、貴公子のフリを完璧にこなしていた。

パーティ会場の女性陣の、音にならない「きゃあん」という気配がした。


わたしは、アルは変態で詐欺師だと思った。


久々にレイとアルに会いたくなって、書いちゃいました。やっぱこいつら、おもしれぇ。

そしたら、思ったより長くなってしまった……。


あと二回、毎日投稿します!

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