性欲が無さそうな女を催眠アプリで性奴隷にしたら、ただ謙遜が凄い奴隷になってしまった。
「おいババア! この前買った【性癖が見える眼鏡】壊れてたぞ!! 『いないいないばあ』って出て来たから、やってみたら真顔で警察呼ばれたわ!! 金返せゴラァ!! もしくは今流行りの催眠アプリをよこさんかい!!」
「わ、分かった分かった……分かったから暴力だけはいかい」
怪しげな露店を開く婆様にクレームを入れると、素直に催眠アプリを作る事を約束した。何でも言ってみるモンだな。
「と、言うか既にあるんじゃい。ココに……」
「あるんかい!!」
婆様はそっとリモコンと髪飾りを取り出した。察しの良い俺はすぐに分かった。
「その髪飾りを女に着ければ、良いなり奴隷に出来るんだな!? ん、こっちのリモコンはなんだ!?」
「これはウチのテレビののリモコンじゃいな」
「紛らわしいモン出すなや!!」
「暴力だけはいかん暴力だけはいかん……」
婆様から髪飾りを引ったくると、ジッと手に取り見つめた。見た目は普通の髪飾りっぽいけどな……まさかパチモンじゃあねぇだろな?
「アプリはこのスマホに入っておる。好きにおし」
「おーし、でかしたババァ! 後でキスしてやるよ!」
「要らぬ」
「後で接吻してやるよ!」
「断る」
「口づけてやるよ!」
「遠慮する」
「……」
「暴力だけはいかん暴力だけはいかん!」
「あばよ!」
──翌日、俺は投稿すると真っ先に生徒会室へと向かった。朝早くから生徒会長様の神崎千鶴が書類に目を通していた。
「よう」
「……五月原くんですか。おはようございます」
「ケッ! 相変わらずすかした野郎だ」
「女性に野郎は使いません」
「ケッ!」
機械みたいに仕事をこなすだけの、人間味も無い生徒会長様の言うことなんかに貸せる耳はありゃしねーっての!
まあいい。性欲も無さそうな無愛想女生徒会長様を、今から性欲に忠実な性奴隷にして、俺の部屋で一生ヒイヒイ言わしてやるから覚悟するんだな……!!
「生徒会長様よぉ」
「……忙しいので要件は手短に願います」
「いつも迷惑ばかりかけてるから、これやるよ」
「……要りません」
「似合うと思って買ったのによぉ……高かったんだぜぇ? 一度で良いから今着けてみてくれよぉ」
「勉学に不要な装飾品の類いは、校則で禁止されております。生徒手帳38Pの生徒の服装についての項目には、その様に記載されております。そもそも五月原くんは生徒手帳をお持ちでしょうか?」
「んあ? あるわけねーだろ」
「生徒手帳は常に持ち歩くよう、それも生徒手帳に記載されております」
「いちいちうるせーな。それよりも着けてくれよ、それ」
「……少しだけですよ」
「おう」
生徒会長様が、髪飾りをそっと着けた。案外似合っているから余計に腹が立つ。
後ろ手で催眠アプリを起動させ、髪飾りを通じて脳へ直接催眠波を流し込んだ。
「……五月原、くん?」
「──ほっ!」
思わず声が出た。あのお堅い生徒会長様が、とろんとした目付きでだらしなく口を開けて俺のことを呼んだのだ。ざまあ見ろヴァーカ! お前は一生俺専用の性奴隷だ!!
「おう、生徒会長様よぉ」
「私のことは千鶴とおよび下さいませご主人様」
「──ほっ!」
またもや変な声が出てしまった。
普通の人ならば夢でも見ているのでは錯覚するところだが、俺様は違う! これは現実で目の前に居る間抜け面の生徒会長様は俺の奴隷なのだ……!!
「千鶴、服を脱げ」
「私の貧相な体を見られたのでは、ご主人様の気を悪くなされます」
性奴隷に仕立てても相変わらず謙虚な野郎だ。だがそれももうじき終わりだ。時間を掛けてゆっくりと性欲モンスターに変えてやるから待ってろよ!!に
「いいから脱げ」
「私の貧相な体よりも、今人気ナンバーワンなグラビアアイドル、水原ここな氏を見ては如何でしょうか? Amazonesのレビューも☆4.8の大好評。大変シコいと絶賛されております」
生徒会室のパソコンでAmazonesを開くと、指をさして購入ボタンを押そうとした。慌てて止めるが既に発注しやがった後だった。
「女の子が『シコい』って言うなぁ!! 女の子が『シコい』って言うなぁ……」
「抜き応えが良い、と申しておきます」
「より酷いっつーの!! あと写真集はキャンセルしておけ!!」
「好みではありませんでしたか?」
「ああそうだよ!!」
「それは勉強不足ですみません……」
しょぼんと肩を落とす千鶴。普段は強気の生徒会長様がしょぼくれている様は、中々に中々だな。
「よし、脱げ」
「ご主人様のお目汚しになります故、どうかぽっちゃり系グラビアアイドルの小林さやか氏の写真集で御勘弁願えますか? Amazonesのレビューで☆4.7と大好評。シコランティスはここにあったと大絶賛されております」
「女の子が『シコランティス』とか言うなぁ!! 女の子が『シコランティス』とか言うなぁ……」
「何故先程から二回言うのですか?」
「いや、意味は無い」
ポチられた写真集を全てキャンセル。購入履歴とオススメが写真集ばかりで埋め尽くされてゆく。思春期かよ!
「分かった。脱ぐのがダメなら裸エプロンだ」
「何故ご主人様はわたくしの様な貧相をお求めに……あ」
「なんだよ。ご主人様の言うことが聞けないのかよ」
ま、まさか催眠アプリが解けたとかねぇだろな!?
「写真集が到着するまで待てないのですね?」
「…………あ、ああ」
「しかし万が一私の体を見て失明でもなられてしまったなら困ります。ならば友人の加地ともね氏に、ご主人様に裸体を御披露願えないかと掛け合って参りましょう」
「待て待て待て!!」
「御安心下さいませ。ともね氏はクラスの男子レビュー☆4.5と大好評。シコちゃんの名で親しまれております」
「女の子が『シコちゃん』とか言うなぁ!! 女の子が『シコちゃん』とか言うなぁ……」
奴隷のクセに言うことを聞かない千鶴に、段々と苛立ちが募る。仕方ない、悪い奴隷にはお仕置きが必要だな。
「千鶴……後ろを向け」
「構いませんが、後2~3分で他の役員が登校します」
「…………ちぇ」
仕方なしに、昼休みまで待つことに。
「昼休み屋上な。弁当持って来いよ」
「分かりましたご主人様。もう前を向いても宜しいですか?」
「ああ」
──昼休み、千鶴は約束通り弁当を持って屋上へ現れた。
「千鶴、あーんだ」
千鶴の手作り弁当は、どれを取っても美味そうだった。ちと量が少ないが、な。
「なりませぬご主人様。これは今朝方わたくしが素手で調理した物です。衛生的に一抹の不安が残ります故、キチンと衛生管理された食事を摂取なされる事をおすすめします」
「……いいから、な?」
「万が一食中毒になった際には、わたくしは屋上から身投げをしなければなりません」
「…………分かった分かった、なら膝枕を要求する」
弁当を諦め、寝ることにする。腹は減るが寝続ければ良しとしよう。
千鶴の膝目掛けて体を倒すと、地面に頭をぶつけてしまった。千鶴が素早く避けていたのだ。
「なりませぬご主人様。わたくしの様な貧相な膝枕は、使い勝手が悪う御座います。是非とも同じクラスの矢内さくら氏の膝をお使い下さいませ。クラスの男子レビュー☆2.4と低めの評価ですが、目をつむればやってやれない事は無い。膝枕には最適そう、と大絶賛されております」
「女の子が『目をつむればやれる』とか言うなぁ!! 女の子が『目をつむればやれる』とか言うなぁ……」
「では他に候補が御座いましたらご指名を」
「俺は千鶴が良いんだ!!」
聞き分けのない千鶴の肩をグッと掴み、目を見つめる。だが千鶴はすぐに目をそらしてしまった。
「いけませんご主人様……やはり食中毒かと」
「なんも食ってねぇよ!!」
千鶴の顎を掴み、無理矢理俺の方を向けた。目だけが最後の抵抗を見せている。
「俺のシコランティスはお前だ!! お前はシコい!! シコちゃんペだ!!」
「ペ?」
「ああもう……!! いいか千鶴! 一度しか言わないぞ!? 俺はお前が好きなんだ!! だから俺はお前以外の女とはどうこうする気は無い!! だから俺と致せ!!」
息を切らし、全てを放ち切った。千鶴は真顔で生徒手帳を開きだした。
「? あ……」
地面に髪飾りが落ちていた。いつから落ちていたかは知らんが、確実に嫌な予感がする。
「生徒規定により、校内における迷惑行為については、謹慎、停学、退学等の処分を科す……とありますが?」
「…………い」
「胃?」
「いない いない」
「……」
「ばぁ!」
「もしもし警察ですか?」
俺は停学一ヶ月となった。