エレベーターで…。
あのね?
これから言うことは誰にも内緒だよ?
どうしてだって?
これ、話しちゃダメなやつだから……。
何か起こったら怖いじゃん。だからね?
僕は仲のいい友人にこっそりと都市伝説を話して聞かせた。
それは…某ビルのエレベーターに何かが取り憑いてるって話。「それホント?」と聞かれたから「ホントホント、マジだって。だって僕の知り合いが不思議な体験したって言ってたし…。」「ふ〜ん、で、どんなの?」
言われてもなかなか喋ることはできなかった。
でも友人はそんなことお構いなし。
困ったものです。
仕方なく話す事にしました。
それは……。
喋る方はそれほどではなかったが、聞かされた方はなんとも言えない顔をしていた。そりゃそうだ。怖いのだから。けどそれを言ってしまうのは僕を喜ばせるだけとわかっている為か黙って下を向いている。
しばらく様子を見ていたのだが、突然そいつは笑いだした。ありえない。なんで笑える?怖くないのか?
「馬鹿馬鹿しい。そんなのが怖いって?そいつ何?単にビビりじゃん。」
「ば、お前怖くないのか?」
「ったりめーじゃん!何がそんなに怖いっていうんだ?おかしいんじゃねーのか?」
「あのな〜、じゃあお前体験してくるか?その霊が出る場所知ってるからよ。」
「え〜、めんどくせー。」
「なになに?やっぱり怖いってか?」
「んなわけあるか!行ってヤローじゃん!!」
「じゃあ気が変わる前に今から行くか?」「お、おう。」
と言いつつも友人は少しビビっていた。
まぁ、ほんとに霊なんているわけないとは思ってはいるが、もし見たら?ホントにいたら?どうなってしまうのかが予想もできない。
それでも現場までついてきた事には勇気があると言ってあげよう。でも本当の恐怖はこれから。
今いる場所が1階だから屋上まで乗っていかないといけない。しかも、出るエレベーターは3つある中の1つ。1番奥の場所だ。僕は近寄らないよ?怖いから。
友人が1人で乗っていかないと……でも待てよ?1人で行かせたらほんとに体験したか分からないじゃないか。出るのは階の途中から屋上までの間なのだ。
僕はため息をつくしか無かった。
だってそうだろ?
1人じゃあ何かあった場合も何も出来ない可能性が高い。
せめてもう1人いれば……なら僕か?僕しかいないじゃん。
ガックリと項垂れて僕も友人の後について行った。
友人は空元気してるのか顔がひきつっているようだ。
「僕も行くからさ。行くんだろ?」
「お、おう。行くぞ。」そう言って友人はエレベーターのボタンを押した。上に行くマークだけが飛び出ていた。
暫くしてドアが開いた。中の作りはごくごく普通のエレベーターのようだ。ただちょっとだけ古いかなぁ〜と思うくらい。電球も四隅にあった。
暗くない。いいぞ。
2人は中に入ると僕は手にしていたビデオカメラを起動して中を写し始めた。1階から2階、3階と上がっていくがまだ何も変化は無い。
すると友人はほら見た事かという顔をしていたのだが、5階を過ぎたあたりからエレベーター内の空気が冷たくなってきた気がして、僕も友人も身構えた。
でも何も無い……。そう思っていたのに…何?今の…。
4面のうち1面はガラス張りだから何かが映れば分かる。
その何かが写ったのだ。
びっくりするのと怖いので頭の中ぐちゃぐちゃになった。
友人も僕のすぐ後ろに隠れるようにたっている。
なんて事。
ガラス張りには何かが写ったのだろう。それが何なのかは僕には分からなかった。でも友人には見えたようで怯え方がすごい。
「な、何なんだよ?アレは!まさか、お前知ってたのか?」
「?何を?」
「惚けるな!アレが見えないはずがないだろ!よく似せて作ったもんだ。でどこは何処だ?誰からの情報だ?」
「何言ってんだよ!僕が知るわけないだろ?」
友人は完全に怯えていた。
「ったくなんで知ってる?なにか細工でもしてあるのか?」
怖いのに見ようとしているのはさすがだ。
でももうすぐ屋上に着くんだ。
ドアが開いたらどうなる?
僕も正直何も考えてなかった。
だって僕にはそれが見えてなかったから……。
そもそもここは何か隠してることがあると映るらしい。想像も出来ないけど。
友人は喚き出した。
顔が真っ青だ。
「何なんだよ?!おま、お前は!来るな!来るな……!」この場から逃げたいけどいかんせんエレベーター内。途中はノンストップの為屋上まで行くしかないのだ。
友人の精神状態がやばい。
どうしたら?
その時チーんと音がしてドアが昼く音がした。
友人はその場で倒れた。
僕は……倒れることは無かったが、その時の記憶は無い。
その後、僕は救急車を呼んでいたらしい。
友人とはそれっきりだ。
屋上で見たものはなんだったのか?今になっては分からない。