突然現れた公爵様
「ごめんなさい。遅くなっちゃって。せっかく作っていただいてるのに。」
私はいの一番に調理場に行き、公爵家の料理人たちに謝った。
「連絡はきておりますし、それに旦那様や奥様のお帰りを待って下ごしらえをしたものをお出しするので大丈夫です。」
そう言ってくれるのは料理長のマルクス。
コック帽子が似合うダンディなおじさま。
「あ、公爵様は別宅にいるので公爵様の食事は…。」
「連絡うけておりますので心配しないでください。それより奥様のご準備整い次第、お出ししますね。」
「ありがとう。急いで支度するわね。イリスお願いね。」
「奥様、かしこまりました。」
「じゃ、楽しみにしてるわね。」
私は急いで部屋に戻り、軽く湯浴みをして、ディナー用のドレスに着替えた。
「イリス、ありがとう。助かったわ。」
「奥様、今度はゆっくりとマッサージもさせてくださいませね。」
「わかったわ。ありがとう。」
イリスは私が伯爵家から連れてきたメイドの一人だ。
私が小さな頃からお姉様的存在のメイドで私の背中の痣も知っている。
「また一段とバラの痣が大きくなってましたね。」
「そう…。」
「でも、お綺麗ですよ?そんなに気にされなくても…。」
私は首を振って
「イリスは小さな頃から見てるからそう思うのよ。」
「そんな事は…。」
「それよりイリス。ディナーの後、私用事があるから先に休んで。」
「そう言われて私が素直に休むとお思いですか?」
「でも、色々疲れてるでしょ?伯爵家とはかっても違うだろうし、それに昨日だって私についてあまり寝てないでしょ?あなたに倒れられたら私が困るのよ。」
「それはこちらのセリフです。奥様に倒れられたら私が困ります。なので監視させていただきます。」
「もー。」
「それよりも広間に行きましょう。奥様をお待ちしてると思いますよ。」
「あ、そうね。せっかく作ってくれたディナーだものね。」
私はイリスに促されて食事をする広間へと行ったんだ。
「こんな広いテーブルなのに一人で食事するなんて…。」
通された広間は本当に広いし、大きなテーブルにひとつだけスプーン、ナイフ、フォークが設置されている。
私はコークスの方を見て
「コークス。まだ食事とってないわよね?」
「もちろんでございます。」
「イリスは?」
「とっておりません。」
そこにいるみんなに次々と聞いていく。
「みんなで食べない?」
みんなぎょっとした顔をする。
「この広間は公爵家の方が食事をする場です。使用人は別の部屋で食事をしますので。」
「じゃ、私がそこで食事をするのは?」
「なりません。」
間髪入れずコークスがそう言う。
「一人で食事するなんて味気ない。」
「奥様はお食事の後にやることがあるのではないのですか?」
「そうでした。」
「では、今は食事に集中したほうが良いのではないでしょうか?」
「確かに。冷めてしまうし、いただくわ。」
そうしてスープを口にした瞬間。
わぁ。
人参の甘みが感じられるポタージュだった。
「美味しい。素材の味を最大限活かしてる。」
あっという間にスープを飲むとその後のサラダ、魚料理、肉料理、パンにデザートまでぺろっと食べてしまった。
「美味しかった。ごちそうさまでした。」
ん?
なんか廊下が慌ただしい。
そう思いつつ最後の紅茶を飲んでいると
開けられたドアから顔を出したのは昨日結婚した公爵様だった。




