領地の事を知ろう②農園の問題点
バーバラさんの農園は本当に広かった。
そして、たくさんの人が働いていた。
野菜、果物、麦、米など作物のほとんどをこの農園でまかなっていて、この領地の方達、たくさんの人がこの農園で働かせてもらっているという。
広い敷地を歩いていると、子供も働いていた。
しかも楽しそうに。
大きなかごを持っている小さな男の子はそのかごを持って一生懸命お母さんのあとを追っていた。
楽しそうな笑顔にみんながちゃんと生活できてる証拠だと思った。
でも、まだ確認してない場所もあるから全てが潤ってるとは考えにくい。
この地域周辺はちゃんと見てくれてそして助けてくれる人がいるから出来ること。
他の場所にもそういう人がいてくれるといいんだけど…。
バーバラさんにもお会いした。
40代後半くらいのご夫婦だった。
もっと60歳くらいの人をイメージしてたからびっくりした。
「ここは両親から受け継ぎました。両親はベリオス公爵寮の西にある地で農園をはじめてます。あそこはまだまだ手入れが行き届いてないと言って。」
「本当は主人、両親に自分たちが行くと言ったんですがまだまだ半人前のお前たちが新しい土地での開拓など難しい。まずはこの地域の農園を拡大し、この地域のみんなを助け、そして公爵様へ恩返ししてくれ。と言われたようです。」
「恩返し?」
「両親は一度事業に失敗したんです。遠い地で…。私がまだ幼い頃ですが。それで流れ着いたのがこの地でした。飲まず食わずでほとんど死にかけていた私達を前公爵様が救っていただき、ここで農園をはじめてくれないかとおっしゃってくださいました。農園なんてやったことのない両親は失敗続きでしたがそのたびに公爵様が支えてくれて、ようやく色んな作物を育てられるようになり、農園も大きくなっていったんですがそれも公爵様の尽力のおかげでした。そして公爵様は両親にお願いをしたのです。」
「お願い?」
「この地の貧しい人達を雇ってやってほしい。そして新しく農園や何かはじめたいと言うものがいれば助けてやってほしいと。」
「そうだったんですね。」
「なので私達もいつか両親のように他の地で困っている人たちを助けに行きたいと思って後継者を育ててます。」
そう言うと二人は優しい眼差しで一人の青年を見ていた。
トマトの収穫をしている青年。
「息子です。ちょうど20歳になります。」
「後継者も育て上げられていて、本当に素晴らしいです。」
「この地の人たちは多かれ少なかれ公爵様に恩があります。なので公爵様の為にこの領地を潤したいし、困ってる人には手を差しのべたいと思ってると思います。」
「素敵ですね。」
「私もお手伝いできるようなことありますか?」
私の言葉に驚いた顔をするけど二人は笑顔で
「お時間あるなら是非。」
そう言ってくれた。
収穫した物を傷がないか選別作業をさせてくれた。
傷がないものを袋や箱にいれて出荷準備をし、傷があったものについてはみんなでわけれるだけ分けてあとは処分したり肥料にしたりするという。
「処分もったいないですね。傷があってもこんなに美味しいのに。」
「教会にも寄付はしてるのですがなにせ生物なのでそんなに日持ちもできないのでやはり処分するものはでてきてしまうんですよね。私達もせっかくだからなんとかしたいとは思うんですけど。」
「うーん。加工できればいいんだけどな…。傷がついて処分する予定のもの少しもらってもよろしいですか?」
「もちろんです。」
「ちょっと考えてみます。色々お忙しい中、教えていただいてありがとうございました。」
「いえ。早速気にかけていただきありがとうございました。」
ニコニコ笑ってるバーバラさんご夫婦と皆さん。
え…。
コークスは頭を抱えている。
完全にバレバレだった。
姪っ子のふりとかして逆に恥ずかしい…。
バレてしまったものは仕方ないので、苦笑いをしていると
「処分予定だったものについては公爵様のお屋敷にお届けしておきます。」
そう言ってくれた。
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
と頭を下げるとみんなまた慌てて私の頭をあげさせた。
公爵夫人って偉そうにしてなきゃいけないなかな…。
お願いするときは頭を下げるのが普通だと思うんだけどな…。
商売の基本だし。
そしてまたコークスに
「奥様、あまり頭を下げすぎないでください。」
と注意を受けた。
もー。って思ったけど苦笑いしながら
「気をつけます。」
って、言ったんだ。