倒れた彼女〜ルーカスside
彼女に聞きたいことがあり、部屋を訪ねて、彼女付きのメイドがドアを開けた瞬間、彼女が床に倒れていくのが見えた。
ドサっという音とともに。
「ソフィア!?」
思わずそう呼んで彼女のそばに駆けつけていた。
そして彼女を抱き上げると真っ青な顔で唇が紫になっている。
彼女の手には鉱石と短剣がしっかりと握られている。
とにかく彼女をベッドに寝かせる。
「公爵様。奥様は大量の魔力を消費して倒れられたのです。」
そう言うのは彼女が伯爵家から連れてきたメイドのイリスだった。
「大量の魔力…。」
「昔から無理をしすぎるのです…。暫く寝かせておけば目は覚めると思います。魔剣は他の方法を探したほうがよろしいかと思います。奥様が倒れてしまうくらいの魔力を消費するのですから…。奥様は普通の事だと思ってらっしゃることは私達にとっては普通ではないのです。ただ、これはきっと公爵様の為に魔力を付与されたようですよ。」
彼女の手からそっと短剣を外し、私へと渡す。
「奥様の想いがこめられておりますので肌見離さずお持ちください。公爵様を守ってくれます。」
そして彼女のもう片方の手でしっかりと握られている鉱石を取り出すと彼女の枕元へとおいた。
受け取った短剣は薄っすらと赤いオーラが見える気がする。
そしてなにより温かかった。
彼女を抱き上げた時にふわっと鼻をくすぐるような甘い香り。
短剣からも同じように甘い香りがはなたれている気がした。
「無理をさせてすまなかった。ありがとう。」
私は彼女の頭を軽く撫でると彼女の部屋を出たんだ。
やるべきことはたくさんあるから。
コークスの息子のテイトが纏めてくれた資料を読み、今後領地の川周辺の補修工事の計画を纏める。
あとは優秀な調理人達が今試行錯誤して、作物を少しでも長く楽しむための瓶詰め料理を考えてくれるだろう。
そちらはコークスに任せてある。
何かあれば言ってくるはずだから。
あんな風に慌てたのはいつ以来だろう?
ソフィアと思わず名前を呼んでしまった。
顔合わせの日も結婚式の日も名前は呼ばなかったのに。
今後も呼ぶ気はなかったのだが思わず呼んでいた。
なぜだろう。
もやもやざわざわするようなこの気持ちは。
やるべきことはたくさんあるからしっかりしなければ。
私は短剣を握りしめると再び自分の執務室へと向かったんだ。




