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第11話③ 勘頼りの調査


==カーティス=シュワーク・空き地==


 説明を受けて到着した空き地だが、一見これといった不審な点は見られなかった。


「……外れか~? ただ単に人気のない場所だからなのかね?」

「そうだな。 だがむしろはっきりしたことがある」

「というと~?」


 失踪したその青年は几帳面な性格だったのだろう。端から順に大きめの野草を摘まれた形跡があった。


「だが、本当にその青年が本人の意思で失踪したんじゃないなら、摘まれた野草か連れ去るときに揉めた形跡があってもおかしくない。 だけど……」

「確かに、寧ろ不自然な位に普通だな~。 ただ単に自宅に戻る途中とかに攫われたんじゃないのか?」

「それは難しいと思うんだよ。 この空き地の位置は死角だけど、その途中の道は見張りが立っている位置だろ?」


 村長から失踪者が出てから見張りを強化していると聞かされていた。位置的に空き地と青年の自宅の間には町の入口から続く大きな道が通っていた。その道中で気づかれずに人攫いをするのは現実的ではない。


「って考えると、どういう事なんだよ~」

「失踪した人たちがまだ町中に居る可能性が高いって話しだっただろ? もしかするとこの近くにその人達が居るんじゃないかってな……」

「それはそうかもしれんが~……、連れ去った方法は何だよ?」


 要領を得ない会話に少し苛立ちをあらわにするグリッド。


「……あくまで仮定の話なんだが。 この一件、ダルクノース教が絡んでるんじゃないかって考える」

「!? そいつは……確かに時期を考えるとあり得なくはないな~……。 とすると、手段は幻術のドロップか?」


 その答えに俺は頷く。


「そう考えると辻褄が合うんだよ。 青年が空き地の端に来た時点まで待機してから掻っ攫うことができる。 お誂え向きに野草が摘まれた形跡は端っこで止まってるしな」

「だが、それならそれでなんで集められた人間らがこの近くに居るって考えたんだ~?」

「それはだな……幻術のドロップは見た目を誤魔化せても音はごまかせない。 他人を攫いながら別の人間の近くを通るなんてのは、よっぽどの実力者じゃなきゃ無理だ」


 町中の各地に複数人で配置された見張りが、今まで失踪したことはないらしい。


「その予想が正しいならそうかもしれんな~。 けど、オイラはここの住民が自らの意思で抜け出した可能性も捨ててないぞ?」

「……具体的な理由はないけど、俺の勘でそんな気がするんだよ……」

「勘かよ~……」


 呆れる様子のグリッドに苦い表情で返す。そんなやり取りをしていると、じっと空き地をみていたサフィッドが何かに気が付いたらしく、俺達を呼ぶ。


「……これ見て」


 近づいてみると、何故か中間で結び目で縛られた野草が落ちていた。青年の手によって積極的に摘まれていたと思われる種類の物と一致している。


「なんだこれ~?」

「摘まれた野草が落ちていないのは、攫った奴が痕跡を残さない様に回収したからだと思っていた。 けど、咄嗟に抵抗してこれを目印になる様に空き地に投げ込んでいたとしたら……?」


 なにもない路上に落とすと回収されるかもしれないが、空き地の草が生い茂る場所であれば誰かが気付くかもしれないと考えたのだろう。


「グリッド、地図を出してくれ」

「へ? あ~、わかった」


 広げられた地図には見張りが立っている位置に印が付けられている。それに近づかないでこの空き地から移動できる位置をペン囲う。


「サフィッド、この野草がどの位置から投げ込まれたかわかるか?」

「……風で飛ばされてる可能性もある」

「それでも頼む」


 少し考える仕草をした後、サフィッドはある一方向を指さした。


「……この野草が投げられた時点と向きが変わってないならこの方向」

「助かる」


 その指さされた方向を地図に書き込む。すると、その方角にある囲った範囲に建物が数件しかないことに気が付く。


「……これじゃないか?」

「そんな……適当な決め打ちで進めるのか~?」


 またもや呆れた様子のグリッドを無視するように立ち上がって、その建物へと向かうことにした。


 ……


「失礼するぞ」

「どうしたんだ――ちょっと! いきなりなんだい!?」


 挨拶もそこそこに、無理やり屋内へと侵入する。雑多な印象こそ感じるが、勘で違うだろうと早々に判断する。


「……悪い、邪魔したな」


 強引な家宅捜索が感づかれると後で面倒なので、謝罪も適当に済ませて次の建物へと向かう。


「失礼するぞ」

「なんだね君は――っと、勝手に入るんじゃない!」

「ここも違うな……。 すまん、間違えた」


 背後から怒声が聞こえるが、無視してその次の建物に向かう。


「おい、カーティス! 何して――」

「強引だが、これが手っ取り早い」

「んなこと言ってもな~」


 次の建物に到着すると、ドアノッカーをやかましい位に叩く。


「うるせぇ! 何だてめぇは!?」

「失礼するぞ」

「バッ……止めろ!!」


 怒鳴る男をすり抜けて建物内を見渡す。普通の建物に見えるが、少し違和感のある家具を見つけてその傍に近寄る。


「……」

「ざけんじゃねぇぞ、餓鬼ぃ!!!」

「サフィッド、これどう思う?」

「……え? ……あ、ここ引きずった形跡がある」

「でかした」

「――てめぇら、無視してんじゃねぇぞ!!!」


 怒りが限界に達したのだろう。男が懐から短剣を抜き出してそのまま襲い掛かってきた。


「……殺意が駄々洩れで、隠す気がないのか?」


 ディートして生成した盾で短剣を防ぐと、そのまま顔面に盾を叩きつけた。


「ごふっ……」

「俺はこいつを抑えるから、二人でその家具を動かしてみてくれ」

「へ? ああ……」

「……わかった」


 お誂え向きに近くに落ちていた縄で両腕を胴体ごと巻き付けると、猿ぐつわをかまして地面に転がした。


「……念のためもう一発ぶちかましとくか」


 この男が失踪に関係していると決まったわけではないが、それでも襲い掛かられた事実は存在するので縦の側面で再度頭に思い切り叩きつけた。


「…………」

「これで本当に無実だったら謝っとくわ」


 この男を放置してグリッド達の元へと向かう。二人掛かりで動かされた家具の下には、地下へと繋がる梯子が隠されていた。


「(また地下か……)」

「どうした~?」

「いや、なんでもない……」


 ベージルでの出来事に引き続き、地下への入り口を見つけたので思わずぼやいてしまう。


「カーティスの勘で無理やり見つけたこの地下道だが、実際怪しいな~……」

「俺の勘も悪かないだろ?」

「……怪しい」


 強引さは否定しないが、兎に角見つけたこの地下へと足を踏み入れることにした。


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