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ドリームドロップ ~魔法のようなドロップと呼ばれる道具がある異世界に転移してしまった剣の少女が、現地の最強勇者と交流します~  作者: ヒロナガユイハ
断章 わたしの友人が失踪したと思ったらとてもヤバい奴になってしまったんだがどうすればいい?
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長い時間を掛けてようやく友人を捉えた件について part4


==瑞紀(みずき)=雨天の節・三週目=エルリーン・南中央道==


 聖剣ブレイサードとやらを手にしたカティは、わたしと杏耶莉(あやり)の前に躍り出る。


「こいつは勇者にしか扱う事の出来ない武器だ。 その代わりに、性能は他のそれを大きく上回る」


 そう説明したカティは、瞬く間にそれを一振りの剣へと変化させる。


(!? すげぇ迫力だ……!)


 眠っている状態から変化した聖剣は光り輝き、凄まじい力と存在感を放っている。本能的にあれには敵わない。それを実際に戦わずして感じさせられる。


「……」

「行くぞ――!」


 そう言って、カティと杏耶莉(あやり)の戦いが再開された。


「はっ!」


 杏耶莉(あやり)も危険を感じたのか、それまで出し惜しみでもしていた遠くを斬る攻撃を連続してカティに放つ。だが、それらの攻撃は聖剣を構えただけで無力化されていた。


「え、何で!?」

「万有の力だからな。 その程度の攻撃は容易く防げる」


 そう言ったカティは、剣を振って衝撃波を放つ。それを杏耶莉(あやり)は影霧を纏わせた足による高速移動で回避する。

 早々に遠距離戦は不利と判断した杏耶莉(あやり)は、カティへと猛スピードで距離を詰める。そして、目にも止まらぬ速度の連撃をカティに向けるも、ブレで動きが見えないレベルの回避によって悠々と避けられていた。


「さっきまでとはまるで違う……」


 わたしは圧倒的なカティの力を確認して、一度宿理(しゅくり)の元へと引き下がった。


「あれが、聖剣ですか」

「すごいちからなの……」

「そうだな。 出来れば使いたくなかったとも言っていたが……」

「……あれだけのちからなの。 もしかすると、なにかだいしょーがひつよーだったりするかもなの」

「だな……」


 普通に考えれば、発動にはなんらかの条件だったり代償があるのだろう。そうでなければ出し惜しみした理由が見つからない。


「……凄い、というのは理解できますが、私では目で追うのが追いつきません」

「わたしも殆ど追えてねぇよ……」


 杏耶莉(あやり)も全力ではなかったのだろう。カティの動きに合わせて先程の数倍の速度で立ち回っている。だが、それをさらに上回る形でカティが凌いているのだけは何とか判別できた。もはやアニメの世界張りの戦闘が繰り広げられている。


「何で私の全力の動きに付いて来れるの!?」

「万能の力、望んだ事を望み通りに実現する力。 それが、この聖剣本来の能力だからだ」

「何それ……。 うっ、もう影霧の残量が……!」


 カティ達のそんな会話が聞こえて来る。やはり、影霧がアイツの力の源であり、それをセーブしながら戦っていたらしい。恐らく、あの幼女を遠距離から殺らなかったのもそれが理由だろう。


「くっ――!」


 杏耶莉(あやり)は悔しそうに一度下がると、先程と同じく自傷して影霧の補充を試みる。


「――それを待ってた!」


 高らかに宣言したカティが、聖剣を構える。すると、その形は帯状に変化して杏耶莉(あやり)をグルグル巻きで拘束した。

 そして簀巻きにされ、身動きの取れなくなった杏耶莉(あやり)は、地面に転がされる。


「なっ……!?」

「聖剣、なんて名前だが……初代が剣として使ったってだけで、実際はあらゆる武器や道具に変化させられる実体のない武器だ。 それに、俺の得意分野は糸なんかだったりってのもある」

「……」

「アヤリには決定的な弱点が存在する。 確かにその剣と遠隔斬撃、そして無尽蔵に補充できる能力は強力だろうな。 けどそれは、腕が自由に動かせる場合にしか使えない。 こうやって縛っちまえば無力化できるんだ」

「……わたしがステアクリスタルをふーじてるからできてるのもあるの。 かんしゃするの!」


 やっと停止した二人の元に、戦いを見ていた三人で歩み寄っていた。


「……杏耶莉(あやり)、もうこんな事止めようぜ」

「ふざけないで! これは私のすべき事! 世界の意思! なんで邪魔するの!?」

「アヤリ……」


 変化した聖剣をそのままに、油断せずカティが口を開く。


「あのさっき君が斬った女の子、確かにあの子は悪いことをした。 それは間違いないと思う」

「なら――」

「けど、な。 アヤリは知らないだろうから教えると、あの酒場で多少働いたのち、盗んでた店を謝って回ったんだ」

「初犯、じゃなかった?」

「そうらしい」


 コイツの犯罪者を見分ける能力とやらでは、そこまで判別できないのだろう。


「あの子の母親、床に臥せて長かったみたいだからな。 その間、どうしても食べるのもが得られずにだ。 けどそれは許されたんだよ」

「――許された? 罪は罪、罰を受けるべきでしょ!?」

「後払いになっちまったとはいえ、代金は支払って謝罪した。 最初は難色を示す店主も居たらしいが、その代わりに継続的に仕入れをするから許してくれって話で方が付いたんだ」

「仕入れ?」

「あぁ、露店で軽い飯を振る舞ってたんだ。 それに使う食材だな。 お人好しなランケットの奴らでそれなりに繁盛もしてたんだ。 でもそれを、お前が今日壊した」

「……」

「確かにアヤリが消した奴の中には、どうしようもない奴も居ただろう。 けど、それの処遇を決めるは、裁くのはお前じゃなくて当人達なんじゃないのか?」

「でも――」

「罪を償う機会を与える。 そんな当たり前をアヤリは許してくれないのか?」

「……不完全な制度に、法に、私は期待できない。 全て解決できないならそれらを消し去る。 それは間違ってるの? 私が得た影霧の力は、それらを葬る能力があった。 これこそ私のすべき事だから」

「アヤリ……」

「この阿保!」


 わたしはその言葉を聞いて、コイツに近寄ってから頭に思い切りチョップをかました。


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