わたしの友人が想像以上にヤバい奴だった件について part3
==瑞紀=風天の節・十五週目=エルリーン城・緊急会議室==
大人数集まっていた貴族連中を解散させ、杏耶莉に関係する奴だけ残って会話を続けていた。
「……先の戦場での功績。 あれを以てして爵位を上げる予定であったのだが……真に残念だ」
「ですが、あの戦いにてアヤリ様の感情に影響があったのであれば、別世界の者である彼女に協力を要請した我が国にも非はあるのかもしれませんわ」
第一王子とチェルティーナでそんな話をしている。そんな内容に、わたしは率直に意見を吐き出す。
「確かに前こっちに残されてた期間だったり、こことの行き来が出来る様になったりで、ちょっとずつアイツの心境に変化、みたいなもんは感じてたんだ。 けど、それはどっちかと言うと良い方向に舵を切ってたと思ってたんだがな……」
環境によって人の考え方は変化する。そうした刺激で少しでもアレを忘れらればと思っていたのだが、考えが甘かったらしい。
「俺も変化みたいなのは感じてた。 一番最初に会った頃より積極的? ……になってた気がする。 特に一番最初に会った頃は気を張ってて余裕がないって印象だったんだけど、少ししてから感情を積極的に表に出す事が増えてた。 ……単に顔見知りになったから心を開いてたと思ってたんだがな……」
「そうでしたか? 私の場合、それ程印象が変わっているとも思えませんわ」
「いや、最初も最初の話だよ。 そうだな……丁度ベージルの影霧が発生したあれの前後で感情の動きに差異がある気がしたんだ」
カティとチェルティーナがそんな言い合いをしていると、マローザが「ベージルかー。 あの時は大変だったなー」などと呑気に耽けっている。
「それまでは……焦り、そうだ焦りだな。 それをどことなく感じてたんだが、そのうち『何とかなる』って言動に変わってったんだけど……気のせいなのかもな」
「……うむ、カーティス殿の印象には同意だ。 我が出会ったのは事件の勃発したあの社交界と、その次は行き来が実現した後の会合だが、まるで別人であった」
第一王子がそう話すのに、わたしの視点でも中学でここに来る前と後では明るくなった印象があった。諸々を知った後にはこっちで吹っ切れたのかと思っていたが、どうやらそのベージルとかいう何かが影響しているらしい。
「そのベージルってのはよくわからんが、影霧がってのは関係してそうだな」
「うむ、もしやあの一件で影霧へと触れたのかもしれん」
「殿下、それは難しいかと」
第一王子の言葉に、メルヴァータが否定を入れる。
「あくまでアヤリ君――失礼、アヤリ男爵殿には後方での治療に当たってもらっていました。 接触を避けていましたので、あの場で他の騎士に犠牲が出ていない以上、治療中にて彼女が影霧へと感染した可能性は低いかと。 絶対ではありませんが……」
「少なくとも、あの暴走してた奴との戦いでアヤリが影霧に感染したって事はないだろうな。 迫りくる影霧の触手を切断した直後に風の支援で霧散してたからな。 アヤリより感染してそうな奴が全員無事だったんだ。 多分大丈夫だろ」
「……で、あるか」
アイツの豹変についての原因を話し合うも、そこまでで会話が止まってしまう。
「……仮にそれが切っ掛けだったとしても、遅かれ早かれアイツは爆発してたのかもしれねーよ。 それを一番近くに居て止められなかったんだ、わたしは……」
後悔先に立たずという言葉があるが、実際に回避できなかった事態に直面すると酷く落ち込む。
「……遅かれ早かれ、ですか。 それはやはり春宮さんの過去に秘密が――あ、すみません……」
疑問を呈する途中で宿理が謝罪する。恐らくいつぞやの約束を反故にしてしまった事に対してだろう。
「こうなっちまったら、もうアイツの秘密を守るのも無理だと思ってる。 だから構わん――いや、寧ろこの場の奴には聞いといてもらった方がいいかもしれねぇな」
「アヤリの過去か……」
わたしのそんな発言に、カティが反応する。なんだかんだそれなりの距離で接してた奴なら気が付くし、気になるものなんだろう。
「……時間は大丈夫か? 少し長くなるからな」
「うむ、気にせずとも良い。 原因の一旦となっている我等は知るべき事象だろう」
「右に同じですわ。 アヤリ様の気持ちを知ってから、それを止めたいですわね」
「お願いします」
「……頼む」
そんな感じで大体全員の了承を得たわたしは、ゆっくりとアイツとの出来事について話すことにした。




